かっこう、たまに通りゃんせ
からいれたす。
かっこう、たまに通りゃんせ
絶対値七時。
彼の世界では鳥は朝の七時から夜の七時までしか鳴かない。
春だろうが夏だろうが冬だろうが、飽きることなく決まって同じ時間。
家の近くで鳴き声が聞こえ始めたら、荷物を持ちエレベーターを降りて、薄明かりの中を手探りで進んでいく。
仕事に向かうからだ。仕事時間は朝八時から夕方五時、三〇分かけてゆっくり歩く。ゆっくりゆっくり歩く。足元に気をつけながら、周囲に気を配りながら。
鳥が鳴かない夜は危険だから、なるべく早く帰宅できるこの仕事が気に入っている。
雨の日は世界がぼやけるので嫌いだ。できればお休みにしたい気持ちもある。幸い今日はいいお天気。紫外線がぴりっと皮膚を刺激する。
世界は決して彼には優しくはないけれども、じっくりと周囲を探れば、木々の匂いや人々のざわめき、街の喧騒が飛びこんでくる。そこは色づいている……だろう。最近の車は静かだからちょっと危ない。
鳥の鳴かない交差点も結構多い。その場合は周囲を探って勘で一歩を踏み出すしかない。危険だからといって引きこもらない精神を尊敬する。
白杖を手に歩く彼のストレスをそんなクロスロードの鳥は優しく癒やしてくれている。
※
かっこう、たまに通りゃんせ からいれたす。 @retasun
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