ログボしかとってないクソゲーに転移したので無双しようと思います
名無し@無名
第1話
▪️壊れる日常
『今日のログインボーナスは1000コインよ。明日は回復薬が貰えるわ!楽しみにーーーー
タンッ。
「さて……そろそろメンテ明けの時間か」
いつダウンロードしたか忘れるレベルのゲームを閉じると、俺は座り直してスマホを机に置いた。
時刻は15:58、否が応にもテンションが上がりそわそわと時計を何度も確認してしまう。
そう、何を隠そう俺が今ガチで力を入れている超人気アプリ『エタニティ・ラスト・テイルズ』の大型アップデートが終わりつつある。
このアプリは大手ゲーム会社が社運を賭けて制作した超ビッグタイトルである。どのテレビを見てもCMが流れ、駅前には大きなポスターも貼ってあるくらいだ。
今回の大型アップデートは特に注目を集めており、新キャラの実装、大型のギルド戦開放、新規サーバーの拡張と、リリース2年目を飾るに相応しいラインナップと言える。
それ故のボリュームの多さに、初の丸二日がかりのメンテナンス実装となった。
本来ならもっと早い段階で終わる筈だったが、メンテ明け→バグ対応のコンボにより結果的に延長を喰らうお約束付きだ。
この場合、お詫びアイテムを大量に貰えるので攻略サイト上でも「お詫び石はよ!」のワードが飛び交っていた。
そして俺はと言うと、今回実装キャラの内の一体である『激ヤバ女神ヴェルダンディ二世』を手に入れる為、バッチリ課金をして準備を整えていた。
10連ガチャ換算で合計150連。これだけ引けば一点狙いでも引く事は可能だろう。貯めたお年玉を全てはたいたのだ、もう後には引けない。
ーーさぁ、メンテが開ける。
「祭りの始まりだ!!」
歓喜の声と共にアプリを起動する。しかし次の瞬間、スマホの画面より溢れた光が突如として部屋を包み込んだ。
何だ? 何がどうなっている?
その光の眩しさに俺は薄目すら開ける事が出来ずに、無抵抗のまま佇むしかなかった。
◆
「…………うっ、ここは?」
見た事が無い風景。
おかしい、俺は確かに自分の部屋に居たはずだ。しかし今はどうだ? 広大な大地に広がる草原の上に座り込んでおり、手元には自分のスマホだけが握られていた。
「夢……じゃない。まさか……これってアニメとかで良く有るヤツじゃ!?」
俗に言う、『ゲームの世界に引き込まれる』系のアレである。
現に明らかに現実世界とは異なる場所にいるのだ。その証拠に空を見上げれば太陽が3つ有る。こんな現象はリアルで有る筈が無い。
「やばい……なんかテンション上がってキターー!!」
誰しも妄想しただろう。自分の好きなゲームの世界に転移して無双する姿を。
そして俺はついに叶えてしまったのだ。「エタニティ・ラスト・テイルズ」の世界に転移して、このゲーム内で無双出来るという密かな夢を!
『……あの、貴方が「
「えッ!?」
突然、誰かに話しかけられる。
振り向くと、俺の目線の高さに小さな女の子の姿があった。
身体はサッカーボール程の大きさで、背中には四枚の羽が生えている。それは正に『妖精』以外の何者でも無かった。
『ええと、津田さん?』
「は、はい! 津田です!!」
『よかった、私は貴方を待ってたんですよ? この世界を救う「救世主」として』
聞いた? ねぇ聞いた奥さん?
救世主だって、この俺が救世主。
憧れのエタニティ・ラスト・テイルズの世界に舞い降りて、更には救世主ときた。完璧じゃないか、この世界は僕を欲していたのだ。
『では津田さん、いきなりですが貴方には使命が与えられました。この世界の救世主として、この地に住む人々を救って貰えますか?』
「……ふっ、愚問だよ妖精ちゃん。この津田将生、命を賭して、このエタニティ・ラスト・テイルズの世界を救ってみせるよ」
『え、あ……違いますよ?』
「……ん?」
『いやだから、この舞台になってるゲームは「エタニティ・ラスト・テイルズ」では無くーーーー「ヘコヘコクエスト」です』
「ヘコ……え、なんて?」
『だから、ヘコヘコクエストです』
拝啓、お母さん。
どうやら俺は得体の知れないゲームの世界に放り込まれたようです。
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