ルール・オブ・ディスティニー

How_to_✕✕✕

プロローグ

冷たい雨が降っていた。

ポツリポツリと水滴が僕の頬にあたり、肌の表面に沿って地面へと落ちていく。

僕は天を見上げるように瓦礫のなか横たわっている。

この世界は崩壊したのか、それとも今までのままなのか?

僕は心の中で問いかけるけど誰も答えてくれる人もいなければ、答えを確かめるすべもない。

ただ一つわかっているのは彼女を止めることに失敗したという事実だけだった。

 僕の視界にはシトシトと降る雨と街を覆うように舞い上がる煤だけが見えていた。

舞い上がる煤はこの街にある建物が灰燼の焔に焼き尽くされた証拠でもある。

煤は街を覆い、まるで死の灰に覆われたディストピアの世界観を表したような景色になっていた。

街を覆う煤煙の中、巨大な陰がうごめいていた。

突然、聞くものの耳をつんざくような獣の咆哮が轟く。

あぁ、彼女が泣いていると僕は思いながら、その巨躯を見上げていた。

僕はどこか彼女に惹かれていた。

だがもう彼女は彼女ではなくなってしまっているのだろう。

あの予言は本当に正しかったと今になって確信した。

僕はどうして取り返しのつかないことをしてしまったのだろう。

 そう思いながら彼女の姿を見ていた。

僕の体はすべて力を使い果たしたのか、力が入らず言うことを聞いてくれない。

そこに冷たい雨が降る。

 ただ僕は黙って彼女の姿を見るしかない。

彼女は泣いているように空に向かい、咆哮をあげる。

彼女の声はもう誰にも届かない。

すべてが壊れ、彼女自身の肉体が崩壊するまで破壊し続けるだろう。

ふと横たわる僕のほうを彼女は見下ろす。

僕と彼女の目が合う。

すでに彼女の目は深い海のような闇に染まり、見るものをすべて凍てつかせるような姿をしていた。

彼女は僕を見て何も表情を変えることはない。もうあのときの笑顔を見せる彼女はどこにも、この世界には存在しない。

彼女は方向を変え、僕に背をむけ、煤煙の中、姿を消した。

今の僕には彼女を止める力と気力はない。

体が岩のように段々と重たくなっていく。

力は抜け、冷たい雨に打たれながら、僕はゆっくりと眠るように瞼を閉じた。


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