仲良しが自殺したのですが、全く死んだ気を見せない。

神風三笠

DAY 1

22時、俺のLINEに一件の着信が来る。


「だれだ?」


差出人は神風優璃。中一で仲の良い女友達だ。



「ごめん。もう耐えられそうにないや」



彼女から送られてきたこの一文。何度か文章と電話をかけてみたが、既読さえもつかなかった。俺は少し安心した。彼女は前から病んでいた。気が緩めば自分の体に傷を付けかねない、なかなかの重症だった。経験者からして、リスカは止めるべきなのだろうが、俺は止めなかった。その病みは切るよりも痛いからだ。彼女にわかってくれる人がいて幸運だったのかもしれない。


彼女が死んで1日目、悲しい感情は持たなかったが、なにか大切な人を失った気がして、学校に行く気が失せた。行かないという選択肢は無いのだが。


重い足取りで自転車のペダルを踏む。教室に着くと、彼女の席には花が添えられていた。

そのせいか、クラスが少しざわめいていた。耳を傾けてみれば、全て彼女の事ばかり。


「おい東雲、神風死んだのか?」


まあ巻き込まれるだろうと予想がついていたが。


「らしいな。昨日俺のLINEに旨がきたよ」


「そうか…。死因とかは言ってたか?」


「お前がそれを知る必要はない」


「え〜、なんでだよ教えてく」


「お前ら席につけ〜。話があるぞー」


良いタイミングで担任が来てくれた。人の死因なんか縁起の良いものじゃないしな。


「皆、知っていると思うが、神風が亡くなった。今まで〜…」


先生の話に耳を傾けている暇はない。未だに彼女の席には神風が居るように見えてしまう。


ホームルームの後は、泣いている者もいたが、6限目にはいつもの日常が有った。


「はぁ…人の死とは簡単なものだな。なあ恬咲?」


放課後に俺が話しかけたのは親友の恬咲てんざき。神風と小学校が同じだ。よく恬咲神風俺で喋ったな。懐かしい思い出が脳裏に浮かぶ。


「神風の事か?まあ、しょうがない事なんじゃないか?」


「そうか…あんまり落ち込んでも彼奴に迷惑か」


「そうそう。俺たちはいつも通り生活すれば良いんだよ」


「…なんかスッキリしたよ。じゃ、俺氏帰る」


「貴様英語の再テは?」


「んんッ、気にしないでくれ」


「行くよな?」


「行きます」


※受かるのに一時間かかりました。

※↑これも日常


再テに受かって駐輪場までとぼとぼ歩く。


「お前また再テか?」


「黙れ神風」


仲良しが自殺したのですが全く死んだ気を見せない。



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