第2話

 銀河系の渦状腕の端っこにあるG2V恒星に属する惑星で知能を有する生命体が活動を始める遥か昔のこと、銀河系の中心部では既に高度な恒星間文明が花開いていた。いくつもの種族が進化を遂げたその世界では小さな問題はあるものの、概ね平和な時代を謳歌する。

 しかし、いかに高度な文明をもってしても生命体が老いて衰弱し活動を停止することができなかったように、巨大な恒星間政府もやがてその命数を使い果たし戦乱の時代を迎えた。やがて八つの国家が形成され覇を争うようになる。各国は統一政府時代の英知と記憶を治めたデバイスを巡って熾烈な抗争を繰り広げた。

 そのデバイスはある時を境に歴史の流れに姿を消す。それからというもの、そのデバイスの行方はようとして知れなかった。

 今までのところはね。理解できた?


 真っ白な空間で、おぼろげながら人の形をとる謎の人物から無駄に壮大な説明を聞かされていた私は当然の回答をする。

「さっぱり全然これっぽっちも分かりません。そんなことより、ここはどこ? そして、私は誰じゃなくて、どうなったの?」

「まあ、準知性化段階の生命体には難しかったか。簡単に言えば、我らは大切なものをこの星に探しに来たんだ」

「へえ。宇宙人ってわけだ。で、私に何か用? そういう難しい話はさ、国の偉い人に言ってほしいんだけど」

「いずれ必要になればね。それよりも先ほどのあなたの質問に答えなくては」

「早く家に帰ってシャワーを浴びたいんで、手短によろ」

「我らの手違いであなたは死んで、今、別次元にいる」

「そっかー、私死んじゃったか。なるほどねえ。そんな気がしてたんだ。前付き合ってたカレがそんなラノベ読んでたわ。それじゃ、あなたは神様で私を異世界転生とかさせてくれるわけ?」

「さっきの話を聞いていた?」

「あ、そっか、自称宇宙人だったわよね。え、私内臓とか抜かれてその辺にポイっとされちゃうわけ? ねえ、あなた達のせいで死んだのにそれひどくない?」

「別に原始的な生命体の内臓器官を必要とはしていないが……。いや、そうか、その手があったか」

「うそ。マジ? ちょっとやめてよ」

「うん、さすがに命を奪ってそのままというのは気の毒ではあるしな。どうかな、兄弟たちよ?」

「おーい。人の話を聞いている?」

 人型が強く発光した。

「よし。全会一致だな。さて、不幸な事故により我らの医療機器は十全の力を発揮できない。しかし、あなたの体を元通りにして、生命活動を再開できることはできそうだ」

「なんか難しくて分かりません」

「端的に言えば生き返らせることができるってことだよ」

「生き返れるんだ。ああ、良かった」

「体の中の器官がもともとボロボロだったようなので一番重要なものも治療しておこう」

「それはどうもありがとう」

「その代わりに、ちょっと頼みごとがあるんだけど?」

「オッケー、オッケー。ちゃちゃっと生き返らせちゃってよ」

「では契約成立ということだな」

 人型の発光が強くなりすべてを飲み込んだ。

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