第7話 どーも、エルフと訓練です
前回のあらすじ
主人公 エルフに言い寄られる
本文
「弓の扱いが合っているか分からないけど少しやったことがあるから見てもらっても良い?」
射法八節 射法の一連動作
※全日本弓道連盟参照
・足踏み(あしぶみ)
足を開き、正しい姿勢を作る。矢束(やづか)を標準に、外八文字(約60度)に踏み開き、両方の親指の先を的の中心と一直線上になるように構える。
・胴造り(どうづくり)
弓を左膝に置き、右手は右の腰にとる。
シンプルに見えて、射の基本となる重要な動作です。重心を体の中心に置き、弦調べと箆調べ(つるしらべ、と、のしらべ)で弦の位置と矢の方向を調べ、息を整える。
*目は鼻頭に
*心気を丹田におさめる
*肩、腰横の線を足踏の線と平行に重ねる
*本弭を左の膝頭の上に置く
*膕(ひかがみ:膝の後ろ)を伸ばす
・弓構え(ゆがまえ)
右手を弦にかけ、左手(手の内)を整えてから的を見る。今回は、木に掘った穴が的。
第一のねらい
鼻筋にて的を二つに割り、右の目と的の中心に一線をひくねらいの線。
物見を定める
両眼は己の鼻筋を通し、的の中心を静かに映し、気息を統一して他に散らさず弓倒しに至る目でまばたきをしない。
弓懐(ゆみふところ)
左右の肘を軽く張り、大木を抱えた気持ち
・打起し(うちおこし)
弓構えの位置から、そのまま静かに両拳を同じ高さに持ちあげる。
注意事項として掬い挙げる気持ちにて両拳を軽く挙げること。高さは額(ひたい)の線よりやや上がよい。
肩にひびかないところ。気合を足心、腰、丹田におき、胸や肩に力を入れないこと。
・引分け(ひきわけ)
打起こした弓を、左右均等に引分ける。
・会(かい)
引分けが完成し、心身が1つになり、発射のタイミングが熟すのを待つ。 呼吸を詰めず、お腹の力が八分九分に満ちるのを待つこと。
・離れ(はなれ)
胸廓(きょうかく)を広く開いて、矢を放つ。
上下左右に力が十分伸び合い、気力が丹田(たんでん=お腹)に八分から九分満ちた時に、気合の発動で矢を放つこと。
・残心(残身)
(ざんしん)射の総決算。矢が離れた時の姿勢をしばらく保つ。
スマホのメモ帳に保存していた一連の流れを何度も行う。指が切れ、剣の素振りでも手が血だらけになるまで繰り返す。
「ケンさんの弓の扱いはとても理にかなっていますね。前の世界は弓を使う職があったのですか?」
「いや、職でもあったが主に運動の一環で行われていたと思う。弓道っていうだけど...こりゃ一日でものにできるほど甘くないな。もう、指に力が入らん」
「弓道ですか...実戦的ではないものの、とても美しい動作でした。その手、治癒しましょうか?」
「自分で治すから少し休憩したら剣の相手をしよう」
「えっ!? まだ訓練するのですか?休まれてはどうですか...」
「どんな状況でも対応するにはもっと自分を追い込まないといけない。右手が負傷した場合、敵は攻撃をやめるのか? 答えは簡単だ。待つのは死だ」
傷口を
いってぇーー!めちゃくちゃ沁みる。くそ。
手を開いて閉じる動作を何度か繰り返し状態を確認する。
「握力までは回復しないか...まあいいや。ユリさ...ん?」
俺の目の前にいるユリさんを見ると、硬ばった表情を崩し、とろけそうなほど甘い笑顔で手を頬に添えている。
「ふふふふふ、その目、その心、その姿勢、全部いい...ケンさんの血がとても美味しい...ふふふ」
弓についた血を拭った指をそのまま口に入れるユリさん。
「...。おい、戻ってこい。その血は汚いからやめなさい?」
「ふふふふ...ケンさんはとてもずるいお方ですね。こんなに私を魅了して止まない。それと、決してケンさんの血は汚くありません!」
「いやー、まあいいや。早く剣の訓練しようか」
「はい...。私はレイピアで対応させていただきますね。さぁ、死合いしましょ? 訓練ではなく、実戦形式で。今後、モンスターだけじゃなく人を殺すかもしれません。そのためには生か死の状況下で剣を交えたほうがいいです」
「死にたくないから抵抗させてもらうよ。実戦形式なら胸当てぐらいお互い装備しよう。事故で死ぬのは避けたい」
お互い皮で出来た胸当てを装備し、距離をとる。
「実戦形式と言ったな。なんでもありの真剣勝負、戦闘不能になったらやめる。それでいいな?」
「分かりました、胸が熱くなってきました...ではっ!」
ユリさんが言葉を発したのち間合いをつめにくる。
それに対し俺も彼女との距離を詰め、抜刀し横に剣を流す動作をする。右手に持っていた剣を離しレイピアの突きを避ける。ユリさんの目線が俺の心臓にあることから狙いを絞り身体を捻り突きを避けることが出来た。捻った反動を利用し宙に浮いている剣を左手で掴み腰の回転で剣を横薙ぎする。突きを回避され後ろに下がるユリさんは、横薙ぎされた剣を防ぐことが出来ず腹が裂ける。この攻防はほんの一瞬で起きたこと。
「さすがケンさん。まさかフェイントを入れてくるとは思いませんでした。そのまま踏み込んでいたら確実に深手を負って、戦闘不能になるところです」
「そりゃー、どうっもっ!!」
俺は返事と共に剣をユリさんに向かって投げる。さすがに剣を投げると思っていなかったユリさんはレイピアで剣を弾く。その隙が命取りだ。短剣を持って間合いを詰めた俺はユリさんの首筋に刃を当てる。
「はい、終わり。俺の勝ちだな」
「ま、負けました...。まさか剣を投げてくるとは思いつかなかったです」
ユリさんの首筋を浅く切ったことから血が流れる。
「早く傷を閉じた方が良い...」
「ケンさん、せっかくですから私の血を吸ってみますか?」
「直接吸うのはさすがにやめとくよ、早く治して。金属音が響いたせいか、何かがこちらに近づいてくる」
索敵スキルを発動し、音がする方へスマホを向け確認する。
「
数までしっかり把握出来てないがユリさんも俺も万全の状態ではない。とりあえずこの場から逃げる為に周りにある洗濯物や道具など回収し木の上の方の枝に飛び着地をする。
「ユリさん、傷の状態はどう?」
「動ける程度まで癒しました。あのモンスターたちはどうしますか?」
「俺たちのことを認識していない以上こちらにまだ分がある。近くまで来たらユリさんは弓で攻撃をお願いします。俺は、魔法をぶつけます」
役割の確認後、戦闘準備を整えモンスターがくるのを隠密スキルで気配を消して待つ。
「あら、
作戦変更、まさか矢で死ぬとは思わなかった。ヘッドショットだし...。
「すごいねユリさんは。じゃあ2人で残りのモンスターを剣で狩りますか」
木の枝から降り、
「外道の方へ向かいましょう。森の奥に行くよりかはまだ安全です」
外道に向かって隠密行動しながら移動し周囲にモンスターなどが潜んでいないか確認した後、その場に座り込む。
「はぁ、はぁ、はぁ。今日も生きている。身体能力向上スキルを使用せずなんとかなったな...。今日はここで野営かな」
「そうですね、私たち生きてます。ただ、もう身体が動きません。あとお腹減りました」
粉末状のポタージュを取り出し食べ始めるユリさんをみて俺も奴隷商人が持っていた乾燥した肉を食べる。
「ここに魔法の道具を置いておくから、先に休んでいいよ。洗濯物は俺が干しておくから」
「ありがとうございます」
クリーンを唱え汚れを落としユリさんはそのまま横になり寝てしまう。その様子を眺めつつ俺はスマホを取り出す。
鑑定結果:
◆名前 ユリ
◆種族 エルフ
◆性別 女
◆年齢 19
◆Lv 5→18
◆HP 100→360
◆MP 500→900
◆スキル
生活魔法 精霊魔法(水・風) 身体能力向上 隠密 索敵 弓使い NEW→治癒 細剣使い 自己治癒向上
鑑定結果:
◆名前 タダノ ケン
◆種族 人間
◆性別 男
◆年齢 31
◆Lv 15→18
◆HP 350→500
◆MP 205→355
◆スキル
生活魔法 身体能力向上 隠密 索敵 治癒 乱れ切り NEW→豪剣使い 死の舞踊 自己治癒向上
「死の舞踊ってなんだ?また意味のわからんスキルだな...。身体がめちゃくちゃ痛い、明日までに痛みが引いてくれると嬉しいよ」
明日はどんな一日になるのやら。
後書き
次回 交易都市
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