第4話 どーも、エルフです

前回のあらすじ


主人公 子鬼ゴブリンと遭遇 

それを撃退 エルフを救う



本文




森の中を歩くふたり、エルフとオッサン。外道に出て子鬼ゴブリンと戦闘し森にUターン。戦利品は、マジックバックとその中身。


「あの、その剣...血を落とさないのですか?」


「え、ああ。そうだね、これって水で落ちる?」


「はい、水で落ちると思います。あとは、布で拭えば錆びないかと...」



『水の精霊様、お力をお貸しください』



「え、え、なにそれ。なんか君の隣にいるんだけど」


「精霊様が見えるのですか!?貴方も精霊魔法が使えるかもしれません」


エルフが精霊に頼み、水を剣にかけてくれる。ついでに子鬼ゴブリンの顔面にぶつけた水筒も洗って中身を補充してくれる。精霊さんは手を振って消えていった。


「エルフのお姉さん、どーもありがとう。あの良ければもう一度、水の精霊様をよんでくれない?」


笑顔で頷くエルフ



『水の精霊様、お力をお貸しください』



「先程はありがとうございました。お礼になるか分かりませんがこの世界に一つしかない飲み物あげます(スポーツドリンク)」


転移する前に次の日休みだからドラックストアでそれなりに買い込んだんだよね。カバンっていうかでかいリュックだよ。あと手提げの中にも大量に入っている。


「水の精霊様がこの水は今まで飲んだことがないくらい美味しいとのこと、大変気にいったらしいです。水の大精霊様にものませてあげたいとのことなのですがまだありますか?」


「容器があればいくつか作れますよ」


「君も飲む?」


「え、いいんですか。水の精霊様が美味しいというからには美味なのですね...わあ、スッキリした味でそしてほんのり甘い水ですね。私も気に入りました」


「じゃあこの水筒の中に粉入れてシャフルして、はい完成。これを水の大精霊様にお渡ししてくれると嬉しい」


水の精霊は、ぺこぺこして飛んでいった。スポーツドリンクを作るために大量に購入しておいてよかった。


結構持参したきたものが多いな...マジックバックに詰め込むか、ほら。全部入ったよ。


「あの鉄格子もマジックバックに入るかな。マジックバックの中にマジックバック容量特大が入っていたからいけそうな気がする」


「ちょっと試してくる」


外道に出て鉄格子の牢をマジックバックに詰め込むと素直に収まった。重量も変わらない。魔法はすごいな。さて、退散退散。強かった子鬼ゴブリンの棍棒も一緒に仕舞って、エルフがいる場所に到着


「君、隠密行動できる?」


「これでも森の民でしたのでなんとかなると思います」


「この辺りは比較的安全かな?」


「外道からだいぶ離れておりますので、大丈夫かと...」


少し歩いて遮蔽物かある木の下に檻を出して、結構広いな。奴隷商人が持っていた緑の布をかぶせて、あ、もちろんクリーンしたよ。


「よし、即席住処の完成。ふたりでも余裕があるスペースだ。ラッキー。夕飯にしようか。このマジックバック結構入っているな。やるなー。では食事をしながら話そうか」


買い込んでおいた調味料などを使って、マジックバックの中に入っていた調理器具で野菜とビーフジャーキーを煮込み最後にコンソメの元を入れスープを作る。


「味は、うーん、もう少し塩を入れるか。ぱらぱらーっと。エルフさんこれ食べて。こっちの世界の野菜と前の世界の乾燥した肉に調味料を使ったスープだよ。普通に食べれると思うからどうぞ召し上がれ」


マジックバックにはそれなりに食器も入っている。容器にスープを注ぎエルフに渡す。


「飯を食べながらで良いから話をしようか。この調味料が入っている箱の文字を読める?そして今君が食べているコンソメスープの味はこの世界にあるかな?」


「い、いえ。その文字は読めません。それにこの味...とても品があって優しい味です。初めて食しました。コンソメ?とは何なのでしょうか?」


「このコンソメは、ちょっと待って。メモ帳に書いてある。えーと、肉や香味野菜、ハーブなどを長時間煮込んでブイヨン(出汁)を作り、塩などの調味料で味つけしたものを濾して完成させたものらしい。よく分からないけどスープを作る際にとても役に立つものだ。これも大量にあるからまだ作れる。」


「本当に貴方は違う世界から来たのですね。見たこともない文字、こんな簡単に上品なスープ作れてしまう調味料...この味を再現するのはこの世界ではとても大変だと思います」


「そうか、君、もっと食べな。おかわり自由だ。俺は腹いっぱいになると幸せを感じる。俺が目指す普通の生活はこんな些細なことで良いんだ...この世界がどんなに大変なのか知らないが、まずは生き抜くために力を蓄える」


「私もこれから自分の足で獲物狩って自給自足しなくてはなりません。もし貴方が良ければですが一緒に行動しませんか?私は、この世界の教養と魔法についてお伝えすることが出来ると思います」


「確かに情報は必要だな。金はあるけどいずれなくなるし...分かった。ここは協力し合いながら生き抜こう。もし俺の判断が間違っていたら、その時は頼む」


「ふふ、交渉成立ですね。これから、何卒よろしくお願いします」


「ああ、よろしく。俺は、生きていくためにこの森で力を蓄える。食料とかは街にいって買いたいと思うんだが、君が来た方角に街があるのかな?」


「街の名前までは知りませんが、あの男が立ち寄っていました。それなりに大きい街だと思います。ただ、私が一緒だと少し目立つかと...そのマジックバックに服とか入ってますか?」


どれどれ、なんかこのバッグの中ごちゃごちゃしてて分かりにくいけど、それに関して仕方ないのかな。


「なんで女性ものの服とか持ってんだよあの男。キモいな。あっ、このフードとか良いんじゃないの?武器とかもあるし...あの男、奴隷商人だったんだよな。なんでこんなに品揃えがいいんだ?」


「かなり大きい商会のものだったらしく、私も商品として捌く時に様々な商品も商品に卸す予定だったはずです」


なるほど、これはラッキーだな。ふふ。前の世界だったらこんな事なかったが、この世界なら色々融通が利くのかもしれない。


「そういえば、君の名前は?俺はケン、よろしく」


「私は...前の名前を捨てて新しい名前にしようと考えております。何かいい名前ありますか?」


「そうだねー、二文字が呼びやすくて助かるからユリとかどう?」


かなり適当に考えたんだけど、まあいいか。いやなら自分で考えるだろうし。


「ユリ...分かりました、私の名前はユリ。これからよろしくお願いします」


「あ、俺が異世界から来たことは内緒で頼むよ。厄介ごとに巻き込まれるのは嫌だからね。俺についてこの世界に来てからのことを話そうか」


昨日から今日までに経験し見てきたものをざっくり説明した。ユリさんの反応は、驚いてばかり。


「すまほ?というのは凄いですね。特に習得できるスキルに関しては長い年月をかけるのですけど...ケンさんは1日でそれだけのスキルを獲得しています。なにか特別な訓練をされたのですか?」


「死と隣り合わせの状況下で訓練したから、早く習得出来たのかもね。実際、昨日はワイバーンが上空にいたから常に警戒してたよ」


「環境によってスキルの習得が早まるという説が可能性高そうですね。私も足を引っ張らないよう努力します」


そろそろ日が落ちてきたし、昨日とは別の場所で野宿。交代で周囲の警戒をすれば睡眠をとることが出来る、先にユリさんに寝てもらおう。


「今日はここで野宿するんだけど、はい、アプルあげる。確か...マジックバックの中に女の服やら下着が入っているからそれに着替えて。洗濯するから。あ、下着は自分で洗ってね」


「あ、このアプル美味しいです。洗濯ですか?生活魔法で汚れは落ちますよ?」


「確かにクリーンで汚れは落ちても匂いまで完全に落ちるわけじゃないから。清潔に保つことが大事。このヒモに服やらズボンを通して鉄格子の牢の中で乾燥させる。ほら、さっさと着替える」


数分待っている間、マジックバックに入っていた洗剤なようなものと樽2つを準備する。一応、鑑定では洗剤の粉と出ていたから間違いないだろう。MPをガッツリ消費しながら魔法を唱え樽2つに水を注ぎ、片方に洗剤の粉を少し入れ手を樽の中に突っ込みかき混ぜる。泡立つのを確認していると、ユリさんが別の服に着替え終えてこちらに来た。


「お、お待たせしてしまい申し訳ありません。メイド服があったので着てみました、どうでしょうか?」


「よく似合ってると思うよ。メイド服ってポケットあるんだね」


「私も初めて着たので少しドキドキします。ふふふ」


「俺も着替えてくるからここで周囲の警戒をお願いね」


「ケンさんの服を用意したのでそれを着てください」


「ありがとう、助かるよ」


黒のジャケット、長袖の無地のシャツ、黒のズボン、下着を脱ぎ、用意された服を着る。綿を使用した下着、麻を使用した黒のズボンと白のTシャツに茶色のローブを着てユリさんのところに行く。先程準備した樽に洗濯ものを入れもみ洗い、ついでにユリさんのも洗う。


「結構、汚れているもんだなー。この水を流して新しく水を入れてもらってもいい?」


「わ、わかりました。頑張ります」


もうひとつの水の入った樽で洗濯を落とし、水をきる。服や下着をロープに引っ掛け水がある程度垂れてこないまで木と木を結んで乾燥させとく。


「よし、こんなもんか。色々大変だけど、達成感があるなこれ。あとは...この魔法の道具で周囲の警戒をしてもらうか」


馬車に取り付けられていた、半径横と縦5メートルに察知の結界を張る魔法の道具を起動させる。この道具については、檻を持ってくる際についでに拝借したもの。やり方をユリさんに教えてもらう。ユリさんには悪いが奴隷商人には感謝の気持ちでいっぱいだ。


「6時間ごと交代で周囲の警戒をしよう。先にゆっくりしてていいよ。この短剣は持ってて。いざという時に使えるようにね」


「もう少しお話ししませんか? 初めての野宿でまだ少し気が落ち着いてないので、お願いします」


「そうだね、俺も色々聞きたいことがあるしお茶飲みながら軽くお話しでもするかな」


なんとか今日も乗り切れそうだ。明日はどんなことが待ち受けているのやら。




後書き


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