二鬼夜行
Slick
プロローグ
第1話
皆さんは『一つ目小僧』をご存じだろうか?
そう、その名の通り、目が一つしかない童の妖怪である。
かく言う私の『一つ目小僧』イメージ像とは、眉間のあたりにつぶらな瞳のある可愛らしい童だ。眉よりちょっと下、鼻の頂端のくぼみの辺りに輝く一つ目。世には様々な『一つ目小僧』のイメージ像があるが、目の位置だけは譲れない。そして私は、これが絶対的な正解だと信じている。
何故か?
私自身が、そうだったからだ。
こう言っては悪いが、先天的障害ではない。
私は生粋の妖怪『一つ目小僧』としてこの世に生を受けた。
□ □ □ □
昔はそんなだった私も、今や既に20代前半。とうの昔に現役引退をした身である。
まぁ言うなら、私は『小僧』を卒業してしまったという訳だぁ!
――若すぎる引退だったなァ、と我ながら思う。だが悲しいかな、私は賞味期限切れなのであった。もはや『小僧』でない『一つ目小僧』。そんないかなる方面からの需要も0%未満の男こそ、私なのであった。
かつて可愛らしかった一つ目の目つきは悪くなり、性格は捻くれ、私はただの陰気な一つ目青年となった。妖怪として持ち合わせるべき不気味さは消え、今やただの胡散臭い男である。既に妖怪としてのアイデンティティーなど遥か彼方、馬頭星雲の鼻面あたりまで消え去ってしまい、今更どれだけ祈っても幼かった日々は戻ってこない。
そして私は、日々を自宅の安アパートに籠り思索と瞑想をして過ごす気高き妖怪へと成長したのだ。
まぁ言い換えれば、ニートになったのである。
私については、これくらいにしておこうと思う。
無論、私の美点について語りだせば広辞苑が6冊くらいできるのはまず間違いないが、私は紳士なので慎ましい自己紹介で済ましておく。
まぁ真実とは、見方により変わるものである。
□ □ □ □
ここでもう一人、別な登場人物を紹介しておきたい。
わが最も愛すべき悪友であり、同時に唾棄すべき唯一の親友、
私と彼は同年代であり、また幼馴染でもある。
奴も妖怪であり、半人前の『
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