豹変。

 

「お前どういうつもりかと聞いているんだ! こっ、こんなっつ!!」


「葛城さん…――」


「おっ、俺は男だぞ…! 気でも触れたか……!?」


「フフッ。葛城さんのせいですよ?」


「何…?」


「せっかく人が今までずっと我慢してたのに、貴方が急に可愛くなるから、もう我慢なんか出来なくなったじゃないですか?」


「なっ、何だと……!?」


 意味深な言葉に頭の中が急に真っ白くなった。その言葉に動揺していると奴の表情が急に変わった。


「まだわからないんですか? ああ、それともわざと気づかないフリしてるんですか?」


「あ、阿川……?」


「俺はずっと貴方とこうしたかった。まだわからないなら、その体で教えてあげましょうか?」


 奴は怪しくニヤリと笑うと両手を伸ばして俺の着ているYシャツを思いっきり引き裂いてきた。その瞬間、ボタンが勢いよくブチブチと弾け飛んだ。


「なっ、何をする…――!?」


 突然の出来事を目の前に俺は焦って奴から逃げた。


「く、来るな……!」


「どうしてですか? 俺の封印を解いたのは貴方ですよ?」


 阿川はわけのわからないことを言うと、ぎらついた目で俺を見てきた。その目は欲情している目だった。その眼差しに体は再び火がついたように熱くなった。堪らずベンチから離れると、近くにあった無人の喫煙所に逃げ込んだ。その後を奴が追いかけてきた。


「そんな風に逃げないで下さいよ。葛城先輩が煽れば煽るほど、欲しくてたまらないじゃないですか?」


「なっ…――!?」


 阿川はそう言うと俺を壁際に追い詰めた。壁にドンと両手をつくとジッと見つめてきた。その強い視線にみつめられると体が急に熱くなったのを感じた――。




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