豹変。

 

 モゾモゾっ



「ん……?」



 体の妙な違和感に気がつくと、思わず阿川の顔をジッと見た。奴は突如、人の着ているシャツを捲るとそこに左手を入れてきた。



「なっ、何やってるんだ…お前……?」



「何を…――」



 そう言って不意に尋ねるとシャツの中に入れてきた手を上に忍ばせてきた。


「っ…!?」


 奴はニコリと笑うと、俺の乳首をいきなり指先できゅっと摘んだ。


「あっ…!?」


「はぁはぁ、葛城さん……!」


「あっ、阿川……! 何を…――!?」


「葛城さんがあまりにも可愛いので、我慢できそうにもないです……!」


「な、何っ…!?」


 その言葉を耳にすると、俺はとっさに奴を突き飛ばそうとした。すると阿川がいきにり抱き締めてきた。


「ああ、可愛いい! 可愛いい――! 食べてしまいそうなくらい葛城さんが物凄く可愛いです…――!」


「阿川、何をする…!? はっ、離せっ!!」


 そう言って突き飛ばそうと力を入れても、奴の腕はびくともしなかった。まるで勘定な檻のようだった。もがけば、もがくほど、腕はきつく締まった。


「素直な葛城さんめちゃくちゃヤバい、萌えます! いつもはツンなのに急に可愛くなるなんて反則です!クーデレたまりません…――!」


 そう言って阿川はわけのわからないことを俺の近くで話すと、そのまま強引にベンチに押し倒してきた。一瞬何事かと唖然となった。そして次の瞬間、奴の唇が俺の唇に重なった。それはまさに自分にとって信じられないような瞬間だった――。


「んっ…あっ、阿川…!」


「はぁ…葛城さん…――」


「ンンッ…!」


 熱い吐息とあいつの舌が自分の口の中で絡み合う、そのゾクゾクするような快感に体が熱くなってきた。嫌なのに拒めない。下で感じるのはあいつの体の重みだった。抵抗出来ずに、そのままあいつのペースにのまれた。


「葛城さん……!」


「阿川っ…やめ…――!」


「ンッ……!」


 口を開くと直ぐにあいつは俺の口をキスで塞いだ。その繰り返しだ。


「やっ、やめろ…!!」


 そう言って慌てて突き飛ばした。


「っ…! 痛いじゃないですか? 唇を噛むなんて、葛城さん酷いな…――」


 阿川は俺の前で平然とした顔で言い返した。


「お前、なんの真似だ…!? こっ、こんな…――!」


「こんなって何のことですか?」


「阿川っ…!!」


 奴はあくまでもシラを切った。その態度が余計に、俺の気持ちを煽った。


「ああ、今のですか? そんなの決まってるじゃないですか。キスですよ、ウブじゃないんだからそんなの聞かなくてもわかってますよね――?」


 そう言って答える阿川には余裕の笑みさえ見えた。その態度に頭がカッとなると、俺は奴の胸ぐらを両手で掴んだ。


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