回復魔法を使えないダメ回復役は、攻撃役が天職だったようで。
雲乃 裾芽
第1話 平和、それは騒音
「はぁ......たまには休みたいのになんで
いつも私のこと誘うのかなぁ......
騒音にすら感じられる外からの呼び声に、愚痴のように呟き身支度を始める。
わたし、アイラル・ルリカはこの魔物の
はびこる世界で
この世界では、魔障石と呼ばれる物質からほぼ無限に魔物が湧いてくる。
魔障石が存在する、危険なエリア。
それを人々はダンジョンと呼び、
冒険者たちが探索、魔物の討伐をしている。
そして、わたしもその冒険者の一人として日々ダンジョン攻略をしている......のだが。
『おーい早くしろー! ギルドの開始時間に間に合わないだろー!』
「はいはい、急ぎますよー......
髪のお手入れ大変なんだから、
そんな急かさなくてもいいのに。
ロングって中々大変なのよねぇ。」
『おーい! 聞こえてるかー!』
「............チッ」
もう少し声を抑えてくれないかな。
うるさいよ?
そう口から出そうになる毒を止め、
さっさと身支度を済ませ、
「ようやく来たか、遅いぞ?」
「あんたが早く来すぎなだけだっての。」
こいつはレチデロ・マギ。
頼れる
三、四年も共にダンジョン攻略をしていた
からか、やたらと馴れ馴れしく
なってしまった。正直ウザったいな。
あとは無駄に声が大きい。
無駄に、声が、大きい。大きすぎる。
私がそれで何回迷惑したと思っているんだ。
「おーい、生きてるかー?」
「生きてるわよ、失礼な。」
「ハハッ、ならよかった。じゃ行こうぜ。」
やっぱりこいつ一回殴ろうかな。
それはともかく、ギルドは昔魔物に
対抗すべく、冒険者たちによって
創られた組織だ。
今ではレベルの見合っていない冒険者が
無謀に高難度のダンジョンに
突っ込まないよう個別で対応して冒険者を
送る、という私でも出来そうな
仕事になっている。
「さてと、ギルドに着いたんだけども。」
『おい押すなよ!』
『お前が押してきただろうが!』
『ダンジョン攻略の受付なんて
レベルじゃねーぞ!』
『み、皆さん落ち着いてくださーい!』
あーあ、ダメそう。
目の前には今にも殴り合いの
大乱闘が起こりそうなくらいに
溢れかえる冒険者たち。
今にも3.2.1のカウントが、GOの合図が
聞こえてきそうなくらいだ。
少しでもギルドに着くのが遅くなるとこうなるのは当然にして必然。逃れようがない。
受付の人もこんな量の冒険者を
よく捌いてるよね。
やっぱり私には無理かも。
それにしても
もう少し広くしたり出来ないの?
どうせお金ケチってるだろうから
それくらい出来るお金、あるでしょう?
「ブツブツブツブツブツ......」
「......近くでなんか食べとくか?」
その言葉にハッと我に返り
マギの方を向く。
気付けば私のお腹からは悲鳴が。
そういえば無駄に大きい声で起こされた
から、朝ごはん何も食べてないや......
「食べる。」
「おう、ならなんか買うか。」
ギルドの人だかりがなくなるまで、
私たちはしばしの朝ごはんと洒落こんだ。
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