第302話 蠱毒14(エウリッピサイド)
「絶対にっ‼許さない‼」
今の今まで、この瞬間に至るまで胸の内に秘めていた本音をエウリッピは躊躇うことなく盛大にぶちまけた。肩で息を切らしながら絶叫する姿は普段の姿しか見ていない者からしてみれば驚愕を通り越した現象だろう。それはあくまでもエウリッピという存在を良く知っているという前提になる話ではあるが。
「気分は落ち着かれましたか?」
澄ました顔でガネーシャはエウリッピに問う。自分だけが覆しようのない現実を目の当たりにして八つ当たりをしている姿を突き付けられて沸騰していた脳が、細胞が急速に冷却されていく。深呼吸をするとエウリッピは顔を覆っていた髪を後ろに流す。
「とっても。ああ、愉しみで昇天しそうですよ」
「鉄は熱いうちに。参りましょう」
ガネーシャはエウリッピに一礼すると踵を返す。カツカツと音を鳴らす靴の音からは一切の躊躇いを感じさせることはない。
楽園は、まだ彼方。それでも、手の届く場所に存在している。
赤々と実る果実は早く手に取れと誘う。甘美な香りは芯に根を張る。
世界は、私。私たちだけの世界。
あの日だけが楽園。だから、だからこそ…。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます