第129話 結解17(九竜サイド)
「おうおう、やっと来たか」
離れていても響く胴間声が聞こえる。遠目でも分かるほどに一昔前の裏社会の人間と思える姿をしている。誰の部下なのか想像がつかない。
第二支部の前で
「そこから動くなぁ‼」
さっきの声とは比にならないほどの声が空気を揺らす。雷鳴が轟いたと錯覚してしまうほどの迫力だ。
「今すぐゥーにィー‼投降しろォー‼」
大声の連打が飛んでくる。耳を塞ぎたくなるが、閉じるわけにはいかない。
「はてさて、さっさと終わらせたいところですが、面倒くさい状況ですね」
小さく溜息をつきながらもデスモニアは焦らず、前に出る。ブーツが石畳を踏む音が静寂の中に消える。
「投降するのはそちらではなくて?今なら捕虜として丁重に扱いますよ。勿論、最低限の食事と住居は保証します」
そう口にしながらも、デスモニアはハンドガンを抜いてロックを解除する。
「吸血鬼でも冗談は言えるらしいなぁ」
男が嫌らしく口角を上げるが、直後にデスモニアがトリガーを引いた。
銃口が火を噴き…、
この場にいた全員が呆気にとられた。
「どう…して…」
撃たれた
「貴様ァ…‼」とさっきまで大声を張り上げていた男の声が怒りに満ちる。対して張本人のデスモニアは淡々としている。
「何を怒っているんですか?普通の事でしょう?ドジを踏んだ愚者を始末するのは」
あっけらかんと言ってのけるデスモニアに、オレを含めた全員が絶句する。
言葉にできないというのは、これ以上の光景はないだろう。
「さて、余計なお荷物も居なくなったことですから、始めるとしましょうか」
デスモニアが再び銃口を上げ、トリガーを引く。炸裂音と共に
「君は彼女の身柄と傍にあるアタッシュケースを回収してください。よろしいですね?」
とはいえ、今のオレは丸腰だ。このまま突っ込んで行くことは自殺行為に等しい。
「ご心配なく」
戦の只中であるにも関わらず、彼女は振り向いてオレに「
「…ところで、何でアンタがこれを持っている?」
「彼女に託されました。狙われる可能性も十分にありましたからね」
必要事項を告げ終わったからかデスモニアは前を見る。
「今更ですが、人を殺した経験はありますか?」
フルフルとオレは首を横に振り、『あるわけないだろ』と怒りを滲ませた言葉を吐ぶつける。デスモニアは特に気にする素振りをすることもなく、
「では、私が活路を開くので仕留めそこないをお願いします」
とだけ言い残し、敵の只中に突撃した。
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