離別
第44話 離別1(九竜サイド)
第三支部までは各々で向かうルートが取られた。装備は葵が守りながら陸路で運ぶことになり、他のメンバーは時間にさえ間に合えば手段は特に問わないとのことだった。
「こうして2人きりになるのは久しぶりですね」
オレは現在進行形で
「そうですね。…あまりいい思い出ではありませんけど」
「朝ごはんは食べてきましたか?」
「軽くですが」
本来はしっかりと食べておきたいところだったが、家には基本的にすぐに調理して食べることの出来るものは非常食を除いて備蓄していない。作り置きは
「何か食べていきますか?」
時計をチェックする。集合時間は9時で今の時間は8時を少し回ったところだ。聞かされている話では第二支部と第三支部の間は高速道路を使っても2時間近くはかかる。既に圏内に入っているとはいえ事故や工事など予期せぬ事態が起きれば土地に詳しくないオレたちでは遅れる可能性がある。
「止めておきます。間に合わなかったら困ります」
「分かりました。では、このまま向かいますね」
気を使う必要もなくなったのか
♥
到着したときにはオレたち以外は全員揃っていた。
「遅かったですね」
開口一番に刺々しい言葉を投げかけてきたのは
紺色のシャツにベージュのスーツを合わせたカジュアル系の清楚な姿が絵になっている。仏頂面で台無しになっていなければ素直に賛辞の言葉を贈りたい。
対する昼間は普段と変わらないスーツ姿でいつ見ても内側の筋肉がスーツを破らないか心配になる。
「遅くはないですよ」
食って掛かる
「おはようございます」
「おはよう」
「朝から相変わらず元気ね~」
「1日の始めは元気にいきたいじゃないですか」
「新人君もおはよう」
「おはようございます」
挨拶が済むと
「じゃ、私は作業に戻るから」
「よろしく頼んだよ」
短いやり取りを終えると
「どうして博士がこちらに?」
「装備の搬入を頼んだんだよ。アタシがやっても良かったけど何かあったときにすぐ対応できる方がいいからね」
「話も結構ですけど早めに入っておきましょう。もうそろそろ時間になりますよ」
話をしていると
「待たせておくぐらいがちょうどいいと言いたいところだけど…」
「これ以上恨みを買うのは嫌ですよ」
「100が101になったところで気にする必要なんてないと思うけどね」
軽口を叩きながら葵は受付に向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます