第22話 闇夜20(九竜サイド)
次に足を運んだのは同じ階層にある射撃場だった。
「戦いに必要な設備は全部屋内に収容されているんですか?」
「知られるわけにはいきませんからね。今は通信が充実してしまっているので何処から漏れるか分かりませんから」
歩きながら様子を見ていると手前がハンドガン、次列がアサルトライフル、最奥がスナイパーライフルの訓練場になっていた。防音設備が常備されているとはいえ真後ろを通ると火薬の破裂音が容赦なく鼓膜を刺激した。
「銃火器はこれだけですか?」
「いいえ。ここは射撃場の1つでもう1つは地下にありますよ。でも、基本的に使うであろう場所はここだけですから問題ありません」
最奥に差し掛かろうとしているところで
「珍しいですね。ここに来るなんて」
「案内ですよ」と
会話に興味がなくなったのか
普段と変わらない様子だったのはここまでだった。狙撃態勢に入るとゾッとするほどの集中力を帯びる。完全に別人で、魂が別の存在が乗っ取ったと言われても納得してしまいそうなほどの変貌ぶりだ。
トリガーを引くと1発目が中央に命中した。続けて撃った銃弾も外れることなく的に命中していた。しかも、最初に命中した中央の穴だけを貫いた。これを10発連続でやってのけた。
「満足?」片づけながら橙木は仏頂面で尋ねてきた。オレはあれほどの絶技をどのように賛辞すればいいのか分からなかった。
オレが何も言葉をかけられずにいると
「何も言わなかったのは気遣いですか?」
立ち尽くしていたところで
「何でもないです。ただ、何といえばよかったのか分からず」
「それで良かったですよ」
「誰か、何かの命を奪う力を褒められて素直に喜ぶ人間がいると思いますか?」
オレは頭を振った。
「中には戦うことを恐れる者、殺すことを恐れる者だっています。誰も彼もが躊躇いなく戦えるわけではないんです」
そう語る
まるで釣り合わない2つの温度差にオレは背筋が凍えた。
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