第一話
地下墳墓……前盟主ヴァースキの盟主が眠る墓。ヴァースキとは竜王の名から取ったものだ。ゆえに棺には竜の文様と連盟諸国の象徴である金の鉾が彫られている。
「貴方は悪しき者を正しき道に導くためにこの鎌を振るうことを誓いますか?」
「誓います」
ザックが誓うとまがまがしい漆黒の鎌を聖女から手渡される。
「貴方は弱きものを守るために死の使者になることを誓いますか?」
「誓います」
すると聖女は後ろにある宝箱を示した。
ザックが宝箱を開けるとそこには漆黒の鎧が入っていた。ザックが装着するとまるで漆黒の騎士のような風貌となった。
「貴方は盟主を守ることを誓いますか?」
「誓います」
すると死神を……骸骨を現した面頬を渡された。
面頬をつけると己の姿はまんま死神である。声もより黒いものに替わった。
「その力は戦場以外ここに封印することを誓いますか」
「誓う」
「あなたは今日からしばらくの間戦場では『アズラエル』と名乗るのです」
アズラエルは面頬を外す。
「聖女様、普段はここで遊園地に行ったり、釣りやったり、食堂で何気ない会話していいんだな?」
「むしろそうしてください。人の心を忘れないで」
「貴方は私以外のすべての者に素性を隠す事を誓いますか」
「誓います」
「では、ここにサインを」
テーブルが用意されていた。
サインを終え、聖女に渡す。
「ロロ帝国は力で少数民族を……恐怖の力で支配しています。何としても止めてください」
アズラエルは再び面頬をつけた。
「誓う」
「任務が終わったら今日渡されたすべてのものをここに戻してください」
「誓う」
「今の盟主は心が折れたら最悪気が狂うわ。それだけ心が繊細なの。だから引きこもってしまう。そうならないようにしてほしいの。エスリーンを特に守って」
「誓う」
まだザックは面頬を付け漆黒の鎧を着たままであった。ゆえにまだ名はアズラエルであった。
「ごめんなさい、あなたにこんな業を背負わせるなんて……」
聖女がザックに抱き着く。泣いている。
「絶対に守る」
「特別勤務手当も出しましょう。そのお金でいろんな事業も起こせるでしょう。絶対に後悔はさせません」
「……」
「必ず……戻ってくると誓いますか?」
「誓う」
「そう自分の命も大事にして。愛する者もいるのでしょ?」
「……」
アズラエルが浮かべたのはマリアンヌではなくエリックであった。
「その面頬は歴代の盟主の骨や歯から作られたもの」
――!!
「その骨に魔力を注ぐことで歴代の盟主のご加護も得られます。だから魔力も自動回復できます。面頬を通じて。つまりあなたは歴代の盟主の亡霊になったと思ってください。もちろんヴァースキの骨も付け加えたわ」
「この鎌、正義のために振るうことを誓う」
「お願いします」
ザックは泣いていた。しかし面頬には涙を流す機能はついていなかった。ゆえに彼は冷酷な死神、アズラエルの姿のままだった……。
聖女は呪文を唱え口笛を吹いた。
「これは……」
「『死馬』よ。今からこの馬を呼び寄せる呪文と黄泉に返す呪文を教えるわ」
「ありがたき幸せ」
死神は聖女に跪いた。
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