第五話

 棺が修道院から出る。国葬だ。


 嘆き悲しむ領民。


 愛用の大型の弓も棺の中だ。遊牧民族にとって空は最高の自由だ。遺体は竜とともに燃やされる。骨は地下の墓所に埋葬される。あの地下学級の隣にある墓所に。あれは歴代の聖女と盟主の墓だった事を思い出した。


 そして緊急でそれは行われた。


 「これより新盟主エスリーンの就任式が行われる!!」


 そう、遺言に従いエスリーンは盟主になるのだ。


 金の鉾が掘られた金色と青色のマントを着る。なんかヴァースキになった気分だ。


 (二度目のゲームオーバーは許されないってことだよね……)


 ――『悪』じゃない。『悪役』令嬢になるんだ


 エスリーンは遺言通り決意を固めた。


 「リーエ」


 「はいっ!」


 彼女は十四歳になっていた。だいぶ大人びてきた。


 「もう一回北方王国に同盟の依頼をしてちょうだい。もちろん国庫にある多額のお金を渡すという条件よ。それだけじゃだめね。秘密研究の成果を渡すわ」


 「はいっ!」


 「それじゃ技術を悪用されて逆に我が国に攻め込まれます!」


 アイザックが猛烈に反対した。


 「それはない」


 「何で!」


 「正義を重んじるあの少年王はそのようなことはない。それと急いで作って欲しいものがあるの」


 「何だ」


 副校長が聞いた。


 「ドローンよ。そこに爆発魔法を仕込んだ石を積むの」


 「ドローンとは何だ?」


 「おもちゃよ。でも使いようによっては自爆装置ね」


 「自爆……」


 全員が沈黙した。


 「いい、戦場では『卑怯』は誉め言葉なのよ!」


 「城下町の住民は全員避難させます」


 「聖女様……」


 「あの鬼畜を止めるにはそれしかねえべ」


 ユーレクが珍しく意見を言った。

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