第六話

 話にならなかった。圧倒的に双鷲級の勝利であった。いったい。彼らの強さはどこから。


 青獅子級・金鉾級は敗戦という屈辱を味わった。特にエスリーンは魔法弓の使い手だがなんと周りを炎で燃やされた挙句に腕輪に埋め込まれた魔石の魔力を奪われたのだ。


 ――あろうことかゾフィーに


 エスリーンはあまりのショックに地下学級に逃げ込んだ。授業開始はまだ先なのに。そんな教室に先客がいた。


 「エスリーン、お疲れ様」


 マリアンヌだ。


 「酷い傷。今……治してあげる」


 そういって治癒魔法を唱える。


 「ありがとう……」


 「その言葉はむしろ私の方。だって本当は私が出る義務があったんだし。あっ、これ毒魔法じゃないの」


 そういって薬草をかんだあとにマリアンヌはエスリーンの腕に刺さった毒を吸い出した。


 「なんか照れるわ」


 マリアンヌも照れていた。とっさに話を変える。


 「水晶玉だけでなく動物からいろんなこと聴いたわ」


 「えっ!?」


 「おいで」


 そういうと雀がマリアンヌの肩に乗った。


 「この子がいろいろと教えてくれたの」


 そう言うとマリアンヌの肩から離れる雀。


 「すごい、動物としゃべれるの!?」


 「うん、人間は信用できないから動物と会話する魔術を必死で身に着けたわ」


 (似たような境遇なのね)


 「あまりにも何度も傷を受けると私のようアザが体に残るけど……」


 (うれしいわ)


 思わずエスリーンはマリアンヌの手を握ってしまった。でもマリアンヌは嫌がらない。


 「うれしい。私、私を本気で大事にしてくれる人に出会ったことない」


 「当たり前じゃない。だって友達だよ!?」


 「ありがとう。私うれしい」


 マリアンヌは泣いてしまった。


 「今度公園とかいろんなとこ行こ!」


 それを聞くとマリアンヌは「ええ」と快諾した。


 (あれ、デートイベントってこのゲームは消えたのかな?)


 エスリーンはどこか違和感を覚えた。


 「おう、お前ら早いな。反省会と行くか」


 ザックとエリックも転移魔法でやってきた。二人は慌てていつも通りのしぐさをした。


 「なんだ、なんかあったのか?」


 「「いいえ!」」


 「おっ、お前傷あるじゃん。保健室の先生のとこに行けよ」


 「はい……」


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