第五話

 「先生、もうしょうがないんだから」


 なんとエスリーンは生徒に貴族としての茶法を伝授されることとなった。


 「で、これ贈り物。先生のおかげなんだよ。温室で出来たものなんだし」


 (へえ、花だ!)


 「パキラだよ。花言葉は『勝利』だ」


 胸にパキラを刺すアイザック。


 「で、期末テストどうするの?」


 「は? 普通にペーパーでしょ」


 「違うよ。総合期末テスト」


 (総合期末テスト、だと?)


 『マジックラブ』にそんなものはない。


 「魔導の伝授も大事だけど……貴族だからクラス単位で総合魔導合戦やるんだよね。先生込みで。双鷲級だけ氷魔先生は出さずにザック先生が代わりに出るんだけどね。貴族って戦争になったら高確率で指揮官になるんでね」


 (なんだと? これのどこが「乙女ゲーム」だ?)


 「腕輪に付けた魔導石の魔力を全部奪われたら負け。今年から個人単位じゃなくて集団戦になるんだって。なにせ、他国の生徒も来てるからねえ」


 (ってことは中間にあったイベントが集団戦に変化してしまった!!)


 本来自分の魔力確認のワンシーンがそんなものに化けようとは。本来は試験官にすばらしいとかまだまだとか言われるだけなのだ。ステータスがオープンにされる。それどころかそのあとはデートシーンのはずなのだ。


 「単位としたら留年だからさ、しっかりしてほしいんだよね。はい、落とし物」


 落としたしおりじゃん!!


 「ありがとう」


 「先生、どうしたんだい?」


 「ちょっと……」


 慌てていった先は校長室。そして聖女室となる聖女エリー様の部屋。


 「どうぞ」


 エスリーンはめったにこの部屋には来ない。ヒキコモリ令嬢がここに来るというのは相当の覚悟なのだ。


 「エリー様、お話ししたいことが」


 「あら、ちょうどよかった。私もなの」


 「総合期末テストを新たに導入します」


 「どうしてそれを私に言わないんですか!」


 「うふっ! 思いついちゃった!」


 (なんだと?)

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