15
お昼ご飯は伯母さんお手製のチャーハンだった。それを食べた後、ぼくらは午後のミッションを開始した。救助活動に必要なアイテムを揃える、という。ちょうど雨が上がったので、ぼくらは自転車で買物に出かけることにした。
工作に必要なものを買わなきゃならないから、と言って、小遣いをたんまりとゲットしたヤスは、ほくほく顔で言った。
「ようし。これで一通り必要なものは買えそうだぞ」
「ほんならお兄ちゃん、アイス
ニヤニヤしながら、シオリが自分の左の手のひらの上でボールペンを動かす。見ると、几帳面な字でこれから買うもののリストが書かれていた。その一番下に「アイスクリーム」という文字が新たに追加されたようだ。
ヤスコ伯母さんがよくこんな風に手にメモを書いていたが、いつの間にかシオリにもそのクセが受け継がれたらしい。
「なんでだよ! そんなのいつでも食えるだろ? つかさ、あんまりアイスばっか食ってるとお前、太るぞ」
「……!」シオリの両眼が真ん丸になった。「それはダメや……」
「なんでもいいからさ、早く行こうよ」
ぼくは呆れ顔で言う。
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空は相変わらず曇っていたが、もう雨は降らなさそうだった。涼しくて自転車に乗るのにちょうどいいが、ちょっと風が湿っていて、やっぱり肌がベタベタするのだった。
ぼくらはまず
続いて、七尾市内の家電量販店に寄って人数分のレーザーポインターを買っておく。一番値段の安いものでも二千円くらいする。意外に高いんだな。これでもうヤスはもらったお金をほぼ使い切ってしまった。
「アイス……買えないね……」
肩を落としたシオリが見るからにがっかりした様子で言う。こいつ……やっぱアイス食べたかったのかよ……
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家に戻ると、とてもいい匂いが漂ってきた。
「あら、ちょうど良かった。お父さんも帰ってきたしぃンね、ちょっこし早いけど夕ご飯にしんけ? 今日はカキ
伯母さんがそう言うと、一気にぼくらのテンションが上がる。
「「「やったー!」」」
そう。みんな、カキが大好物なのだ。
食卓に並んでいるのは、カキフライにカキの卵とじ、カキの炊き込みご飯、そして、生ガキ……もう、口の中に
「さあさ、東京じゃこんなおいしいカキは食べられんやろ? たーんと食べまっしま!」
そう言って、伯母さんがぼくの皿に生ガキをよそってくれた。うおー! 身がでかくてぷりぷりしてて、めちゃ旨そうだ……
「はい! いただきまーす!」
早速ぼくはレモンを絞り、汁を垂らしたカキを一つ頬張る。
……うまい!
海のミルクとはよく言ったものだ。噛むとトロリと溢れだすカキの風味と香りに、一気に幸せな気分になってしまう。
「
「そうなんですか」
「穴水ってぇンね、あの『ボラ待ち櫓』があった辺りやよ」と、シオリ。
「へぇ! わりと近いんだね」
「そうや」と、伯父さん。「『能登はやさしや土までも』と言うてな、能登の豊かな森林資源から、雨に乗って川に流れ海に届く植物性プランクトンが、カキの餌になるんやな。ほやさけ、穴水のカキは天下一品やわいや! カズヒコも、冬休みにまた来たらいいがいや。今度は父さん母さんと一緒にな」
「そうですね。ぜひまた来ます!」
今回ぼくが両親と一緒じゃないのは、父さんが単身赴任で新潟にいて、母さんがその世話のためにそちらに行っているからだ。だけど秋に父さんが帰ってくるので、冬はたぶん家族一緒にここに来られるだろう。
「言ったな。カズ、言ったからには必ず来いよ!」
「ほうや。カズ兄、ウチ、楽しみに待っとっさけぇね!」
ヤスとシオリが嬉しそうに言う。ぼくはうなずいてみせる。
「ああ。これより美味しいカキが食べられるんだったら、絶対来るよ!」
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