第4話

「……」


「……?」


 今日は文化祭。あかりのクラスの出し物は喫茶店。


 あかりが店の宣伝をしていると、廊下の窓から遠い方向を見ている少女がいた。


「……ぁ」


 少女はあかりに気づきそちらを見たが、興味がないのかまた遠くを見つめる。


「うーん……あ、思い出した!見たことある!一年生の……誰だっけ」


 あかりはこの少女を以前見たことがある。どこで見たまでは覚えてないらしいが。


「……愚兄がすみません。あんなヤツのせいで先輩は。」


「……?」


 愚兄という言葉から、兄がいたことがわかる。


 帰宅部だったあかりは先輩に知人は全くと言っていいほどいないので、同じ学年……同じクラスだったということは容易に想像できた。


「あー!もしかして嘉村くんの妹!?」


「はい、嘉村かむら 華蓮かれんです」


「いやぁ、去年はお兄さんに色々と……」


 と、言いかけた時にあかりは止まる。委員長は彼等がやっていたことを『いじめ』だと言っていた。そして、彼女は愚兄だと言っていた。


(この話はしないほうがいいよね……)


 実際、この子に出会ったのはいじめをしていた子の親が来たときにたまたま目にしただけだったはずだ。そんなこと思い出させたくもない。


「えーっと、そういえば私達の喫茶店はもう行った?」


「え、あ、いやまだ……」


「じゃあ、是非来てね!いや、今から連行します!」


「はえっ、ちょ!」


 頬を赤らめて抱きかかえられる華蓮は、申し訳なさそうな、罪悪感があふれる顔をしていた。


「あの……ほんとにすみません」


「なにが?あ、まだ行ってなかったこと?」


「いえ、愚兄のせいで楽しかったはずの一年生の生活が……」


「ん?あー、別に良いよ。委員長や芽依花さんにも出会えたし、私自身はつらい思いはしてなかったしねー。


 あ、でもでもうちの親と委員長たちはプンプンしてたなぁ……やっぱり私って気にしなさすぎ?


 ここまでくれば逆に才能なのでは……?」


「で、でも……」


「いい?嘉村さん。貴女のお兄さんは、貴女ではないの。だから貴女が謝る必要も無いし、そんな顔もしないでほしい。


 それと、もしよければ私と友達になって欲しいな。後輩ほしかったんだ〜!」


「ほ、穂慈綴さん……」


「穂慈綴"せ、ん、ぱ、い!"」


「ほ、穂慈綴先輩!」


「そう!」


 華蓮はキリッと表情を変え、何故か敬礼ポーズで言う。


「今日から友達として、よろしくお願いします!」


「はいっ!」


 つられて敬礼ポーズをとったあかりは、元気よく返事したのだった。


――――――――――――――――――――――

登場人物紹介


名前 嘉村かむら 華蓮かれん

所属 1年4組8番

血液型 AB

備考  昨年あかりと同じクラスだった男子の妹。常に気が抜けていて、掴みどころがない。


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ポジティブは世界を繋ぐ! 十七夜 蒼 @SPUR514

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