第五十一話 ロリっ娘は最高だぜ!
「そういえばフェリールちゃん、ランクはCだったよね?」
私は改めて、この娘のステータスを確認する。
進化が難しいとされる女王種でありながら、既に進化済みとは。レベルも結構高いし、私の迷宮でちょっと戦えばすぐにランクBへ進化可能だ。
迷宮蜂の元女王ライオノーレがランクDであったことを考えると、フェリールちゃんは彼女よりも強い女王だったということになる。
この世界では、レベルよりもランクの方が重要なのだ。
Lv120のランクDは、Lv40のランクCに負ける。
いかに低レベルの段階で進化条件を満たせるかというのが最も重要なのだ。
そのためには、大主神アストラに認められるだけの功績を得なくてはいけない。
それは『冒険』と呼ばれるものだ。自分よりも遥かに強い敵に挑み、ステータス差がある中で勝利を掴む。
単純な数値上の有利不利を超えた強さを持つ者のみに、次のステップへ進む権利が与えられるんだ。
けどまあ、そんなことは今どうでもよくて。私が言いたいのは……!
「フェリールちゃん、ウチの迷宮にはいくつかルールがあってね。その中のひとつに、スキル『変身』を持つ者は、不都合がなければ人間の姿で生活しなくてはならない、というものがあるんだよ。げっへっへ」
「んな!? なんじゃとっ!」
ぐへへ。フェリールちゃんは驚いてる様子だけど、これは完全に私の趣味だ。迷宮の中がグロイ見た目の蜂ばっかりとか可愛くないし。
だったら美少女、美女、美男に囲まれて生活がしたい!
スキル『変身』を使えばみんなかわいくなれるんだから、その方が良いに決まってるでしょ!
「ということでフェリールちゃん、ちょっとお着換えしよっかぁ」
ねっとり。たぶん擬音にするならそれが一番合うだろう。
私は自分でもわかるくらい気持ち悪い表情を浮かべ、小さな蜂の姿であるフェリールちゃんに歩み寄る。
ぬふふ、彼女には期待しているのだ。女王種ってかわいい娘多いから。
あ、一番かわいいのは私だけどね!
「……ぬぬぬ。言いたいことは山ほどあるのじゃが、それがこの群れのルールだというのなら従わざるを得んな」
あら、意外と素直。あまりにも抵抗するようなら支配の力で無理やりぐへへ……。って考えてたんだかけどなぁ。
フェリールちゃんのじゃロリ女王様属性持ちなのに、この上ツンデレ属性まで詰め込むとか業が深すぎ……!?
「うんうん! そうだよ、ルールだからね! さあ早く早く!」
焦らすなフェリールちゃん、私は最近の激動で疲れているんだ! 早く癒してくれたまへ!
「せ、急かすでない、馬鹿者……!」
恥じ入るフェリールちゃんもかわいい! はよぉ、はよぉしてけれぇ!
思わず私の中の田舎モンおじさんが出てきちゃうくらいかわいい!
おかしいぞ。まだ彼女は甲殻類の操蜚蜂なのに!
「仕方ないのじゃ。『変身』」
ようやく『変身』を使ったフェリールちゃんは、瞬く間に変貌を遂げる。
一般的な蜂のフォルムは瞬時に巨大化し、人の形を形成していった。
……肉体年齢は12歳くらいかな? やっぱりロリっ娘だ。
けどその表情だけは、完全な女王そのもの。流石、私より支配者歴が長いだけある。
鋭い眼光がかっこいい。
しかしそれも、今は彼女の愛らしさを強調するギャップに過ぎなかった。
美しい鈍色の長髪を高めに結い、幼さの中に力強さを感じさせるポニーテール。引き込まれそうなほど透明な薄墨色の瞳。
そして極めつけは、白と灰色の入り混じった素敵なドレス。
露出度は低く、身体のラインも見えない。まさに幼女が着るためのドレス!
「……百点だ」
「ん、なんじゃ?」
「百点満点って言ったの! かわいすぎだよ、フェリールちゃん!」
こんな愛らしい生物を前にして、私の理性が正常に働くはずがない。
思わず抱き上げてしまっても仕方ないだろう。こんなにかわいいのがいけない。
(燕蜂より大きいから人間化したらもうちょいお姉さんになるかと思ったけど、なんであの娘たちより全然幼い見た目なんだろ? わかんないけど、かわいいからヨシ!)
抱き上げるとフェリールちゃんの柔らかい身体から花のような香りが漂ってくる。
食べちゃいたいほどいい匂いだ。あ、これは額面的な意味でね。花の蜜みたいな、おいしそうな匂い。
「な、なんじゃレジーナ! 急に抱き着きおって! ……って、意外に力強いのじゃ!」
「ふっふっふ、言ったでしょ? 私はこれでもランクA。ステータスだけは高いのさ! 全然戦えないけどね」
ふはは。完全に抱き上げてしまえば、地面に足を付けられないフェリールちゃんが私を引きはがせる道理はない。
レベル差もランク差もあるのだ。私の方がずっと強い……!
「ちょ、やめろ! 我輩のお腹に顔をうずめるでない!」
「え~だって、フェリールちゃんここからすっごいいい匂いするよ?」
「こ、怖いこと言うでない!? お主まさか、我輩を食べる気か……!?」
う~んフェリールちゃんがかわいくて仕方がない。
前までこういうポジションはサガーラちゃんだったけど、あの娘は私にまったく抵抗しないからなぁ。
ここまで抗ってくれる娘ってジュリーちゃん以来かも? あの娘も最近は結構言うこと聞いてくれるし。
「ま、マジでヤバいのじゃ! この女王狂っておる! お前たち、我輩を助けるのじゃ!」
フェリールちゃんはたまらず仲間たちに助けを求める。
約600匹。とてつもない数の操蜚蜂が、私に群がって来た。しかし……。
「フェリールちゃん、私に普通の蜂が勝てると思って? 知ってるでしょ、『Queen Bee』の強制力。この娘たちは本気で私に反抗することなんでできないんだよ」
一度私の支配にかかってしまえば、私に逆らえる蜂などいない。
事実、フェリールちゃんも蜂の姿に戻れば簡単に逃げられるのに、そうしていないんだ。
一度支配を受け入れれば、私に反抗することなどできないのだ……!
「も、もう終わりじゃ~! 我輩の蜂生ここで終わるのじゃ!」
「ってい!」
「ぐはっ!」
フェリールちゃんを抱き上げる私の後頭部に、素早く鋭い一撃が叩き込まれる。
凄まじい衝撃に、私は思わずフェリールちゃんを離してしまった。
(ちょ、邪魔すんなよ。誰だいったい……!?)
「しゃ、シャルル殿! 助かった!」
振り返ると、私に苛烈な手刀を食らわせたのは、この迷宮随一の実力を誇る男であった。
解放されたフェリールちゃんは、私から遠ざかるようにシャルルの後ろへ隠れる。
「新入りをいじめるのはそこまでにしておけ、レジーナ」
「……手よりも先に口を出してほしかったかな。私のキュートな後頭部にたんこぶでも出来たらどうしてくれる」
「お前があの程度でケガするわけない。痛くてってよりは、驚いて手を離しちまっただけだろ」
くそっ! 忘れていた!
そうだ。私の迷宮の中で、たった一人本気で私に反抗できる奴が存在する。
どういうわけか、シャルルにだけは私の支配が緩いんだよなぁ。私が無意識のうちに弱めちゃってるのか……?
当のシャルルは、どこか不機嫌そうだ。ちょっと怒ってるかも。
「あの……ごめん。ちょっと大人げなかった」
「そうだな。でもお前はガキっぽいところあるから大丈夫だぞ」
!? 今日のシャルル、なんか言葉が鋭いんだけど!?
これ、私が悪いわけじゃないよね!? なんでこんな荒い口調なん!?
「まあ良いさ。レジーナがかわいいものに目がないのは昔からだしな。それより、お前を呼びに来たんだ。大広間に行くぞ」
「? わかった」
シャルルの様子が若干変だけど、まあ機嫌の悪い日くらいあるか。
私とシャルルは蜂の姿に変身し、縦穴を通って最終階層へ向かう。
迷宮の一番奥。私の居室や大広間がある階層。
ゆくゆくは、私の子どもたちが守ることになる階層だ。そこにいたのは……。
デューン、クオンさん。そして見たことない長肢蜂のオスと、今日連れてきた操蜚蜂のオス?
むくつけき男たちが談笑しながら大広間で待っていた。
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