第四十八話 精神攻撃と支配!
クオンさんに持ち上げられ激しく抵抗する
しかし彼女のランクはC。戦闘経験の少ないあの女王では、たとえレベルで上回っていようともクオンさんの拘束から逃れることなどできはしない。
(やっぱり女王種ってランク上げるのが大変なんだなぁ。レベル的にはランクBに進化しててもおかしくないのに。そう考えると、ホントに『アストラの承認』があって良かったよ)
ぶっちゃけ、私の実力はその大部分が『アストラの承認』のおかげである。
数多くのスキルを獲得したのも、短期間でランクAまで上り詰めたのも、すべてはこのスキルあってこそだ。
もし私に『アストラの承認』がなければ、支配される側だったのは私の方だろう。
(ホント、大主神アストラには感謝しないとね。私の何を認めてこのスキルをくれたのかはわからないけど。一回直接会ってお礼とかした方がいいのかな?)
大主神アストラは結構頻繁に人里を訪れているらしいし、お茶菓子のひとつでも持っていくべきだろうか。
シャルルによると、お茶が大好きな老婆って話だったよね。
「って、そんなことはどうでもいいか。今は操蜚蜂の女王さんだよね」
私はぺしぺしと自分の頬を叩き、クオンさんが摘まんでいる女王蜂の下へ歩いていく。
ふむ、見る感じちょっと大きいくらいで、操蜚蜂の働き蜂と大差ないね。
女王特有の匂いもしないし。
シャノールさんはもっと色気たっぷりな感じだったけど、この娘はそうでもなさそう。
視覚や嗅覚じゃなく、スキルで支配を実行できるからかな?
「えっと、君が操蜚蜂の女王でいいんだよね。一応聞いておくけど、これから女王蜂になる予定の娘さんとかでは……?」
「侮るなッ! 我輩はまごうことなき、この巣の女王である! 貴様、我輩にこのような無礼を働きおって……許さんぞッ!」
あら、なんともかわいらしい。
小さな身体をくねくねさせながら何とか逃れようとするその姿。危機的状況であるにもかかわらず衰えない不遜な態度。そして若干高音の念話。
(……いや、女王なのにロリ……メスガキ属性って、ちょっとキャラ盛りすぎじゃない? ロリババア?)
なんだこのかわいい生物は。迷宮蜂よりも一回り小さいからか? めっちゃ愛らしく見える。
「なんじゃ貴様! 同胞を殺めた罪、操蜚蜂の女王フェリールが裁いてくれるわ!」
へぇ、フェリールちゃんって言うんだ。かわいい名前だねぇ。
なんか語感が私と似てるし、おそろっちだ! いや、シャノールさんの方が似てるか?
「まあなんでもいいや。フェリールちゃん、私は君たちと仲良くしたいんだよ。ホラ見て。ゴキブリはめっちゃ殺してるけど、操蜚蜂は殺してないでしょ?」
私が指をさすと、そこにはシャルルに群がる操蜚蜂がいた。
しかしそれに対して、シャルルは反撃と言った反撃をしていない。
ただそこに突っ立って、無数の蜂が繰り出す攻撃を一手に引き受けていた。
「私の迷宮で働いてほしいんだよね。だからまだ殺してない。でも私の支配を受け入れないって言うなら、一番最初に殺すのは……。ごめんね、フェリールちゃんになっちゃうかな」
こういう知能が高いタイプの蜂は、女王を失うと途端に瓦解する。
だから支配を強制するのなら、まずは女王を殺すべきなのだ。
それがわかっているから、クオンさんも女王蜂だけをこうして拘束したし、シャルルは大げさに働き蜂を引き付けた。
私としては誰も殺さないならそれに超したことはないんだけど、手段のひとつとして女王蜂を殺すというのは持っている。
働き蜂数十匹を殺すのと女王蜂を一匹殺すの。支配に必要な降伏のレベルとしてはほぼ同等なんだよね。
だったら、女王一人の犠牲で済む方がまだマシ。そう考えるのは、たぶん自然なことだと思う。
「貴様ら……どこまで我輩と我輩の娘たちを愚弄すれば気が済むのだ! 支配者である我輩が、貴様ら引きこもりの迷宮蜂に降伏せよと? 冗談も大概にせい! 穴倉から出て気が大きくなってるようじゃな。調子に乗るでないぞ、この田舎モンが!」
……私の気苦労もよそに、操蜚蜂の女王フェリールは抵抗をやめようとはしない。
ひゃ~困った。フェリールちゃんが支配を受け入れるって一言いえば誰も殺さずに済むんだけど。
まあそうだよね。知らん奴にいきなりこんなこと言われて、はいわかりましたなんて言う方がおかしいか。
(……そう考えると、一発で私の支配を受け入れた燕蜂とか
甲碧蜂はともかく、賢いイメージのあった燕蜂も実は案外……。
いや、やめとこう。実際あの娘たちが私より頭いいのは知ってるし。
しょうがないか。この手は使いたくなかったんだけど……。
「ごめんね、フェリールちゃんが強情だから。……『Queen Bee』!」
私は抵抗するフェリールちゃんに手をかざし、スキル『Queen Bee』を発動する。
『Queen Bee』は支配系統のスキルでも最上位のスキルだ。
蜂にしか通用しないという限定的な効果ではあるが、ランクAになりだいぶ強化されたこのスキルの前では、いかに精神力の高い種族と言えど屈服させてしまうだろう。
「ぬ……貴様この力……!」
それは当然、支配を主とした生物である操蜚蜂も例外ではない。
先ほどまで暴れ回っていたフェリールちゃんも、私がスキルを発動させた途端大人しくなっている。
(……けど、本当に操蜚蜂ってのはすごいな。高レベルでもランクC。そんな木っ端女王が、私の支配に耐えてる)
確かに大人しくなったフェリールちゃんだけど、完全に支配できたわけじゃない。事実、彼女の二人称が変わっていないのだ。
正直さっきの威力なら、もはや私のことを『ご主人様』と呼称して差し支えないほどの支配だったはず。それを耐え切ったのだから、彼女の精神力は相当高いことになる。
「シャルル、やっぱりこの娘殺すのは反対かな。たぶん、ランクAになったら化けるよ。少なくとも精神力は私を上回る。ってか、スキルなしじゃ私の方が弱い」
この操蜚蜂って種族、ゴキブリを支配できるって力を目的に征服しに来たけど、どうやらもっとすごい力を持ってたみたいだ。
精神攻撃に対してここまで耐性のある蜂は珍しい。そういうのは人間の得意とするところだ。
事実、未だ第四階層には私以外立ち入れない。あそこは世界樹の精神攻撃が強くて、私の支配が弱まった状態だと普通に自滅しちゃうレベルなのだ。
もちろん私の支配の方が精神攻撃としての威力は上だけど、万が一ということがある。
だけどこの娘たちなら、もはや素の状態であの精神攻撃を耐えられるかもしれない。
「ふふふ、迷宮蜂の女王よ。どうやら我輩を支配しきれぬようだな! どうだ諦めよ。見たところ貴様らは我が配下を攻撃できぬようだし、今のが貴様の切り札と見た!」
「ああごめん、切り札は別。でも驚いたよ、まさか戦闘じゃなく精神攻撃でこれを使う羽目になるなんて」
もちろん戦闘の切り札も用意して来たけど、これは精神攻撃にも併用できるのだ。
私は懐から、一本の杖を取り出す。
杖と言っても、亀〇人が持ってるようなでかい奴じゃない。ハリー〇ポッターが持ってるような指揮棒みたいな奴。
「き、貴様。それはなんじゃ……?」
流石のフェリールちゃんもこれを警戒しているのか、私の支配を跳ね除けつつこの杖を注視する。
「ああ、これは世界樹の枝を切り出した奴。その名もアクシャヤヴァタ=タクト! 略してアタタ!」
超かっこいいこの杖は、なんということでしょう。世界樹の持つ魔法を引き出すことができるのです!
これも全部『世界樹の支配者』とヒカル君のおかげ。植物魔法が得意な彼が、これを作ってくれたんだよね。
流石に『サテライトキャノン』みたいな世界樹そのものの魔力を源として発動する魔法は使えないけど、雷撃とか枯死とかの魔法は使える。
そしてもちろん……。
「この杖なら、精神攻撃系の魔法も使えるんだよね。さてフェリールちゃん、私の支配を遮りながら世界樹の精神攻撃を防ぎきれるかな……?」
「ま、まさか貴様……!」
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