～SIDE　アストラ～

「やあアストラ、久しぶりだね」

「……パラレルか。こんな辺境の地になんの用じゃ？」

「嫌だなぁ、ここは私が創り出した世界だよ？　たまには、自分で足を運ぶこともあるだろう。私の送った子どもたちが、今どんな風に人生を謳歌しているか気になったのさ」

「ふん。少なくとも二人はお主に憎悪の念を滾らせておったよ。中には感謝している者もおったが、お主のやってることは善行でもなんでもない」

「ハハハ、私は異世界の大魔王パラレルだよ？　砂粒ひとつすら世界の差異とみなし、銀河を含む宇宙すべてを無限に生み出しあらゆる可能性を見出す存在。当然、どの生物が異世界に行ったか、という事象も調べないといけなくてね」

「……お主にとってすれば、この世界そのものすらも大きな実験装置でしかない、ということじゃな」

「その通りさ。創造神が生み出した原初の宇宙以外、すべての世界は私の実験装置に過ぎない。もちろんアストラ、君という存在も私の実験装置さ。本質的に、この世界に存在するあらゆる物質は私が創り出したものだ」

「わかっておるよ。じゃがな、お主が本当に期待していることもまた、ワシはわかっておる」

「……私を殺せる存在。その出現すらも、世界の可能性。無限に等しい時間、世界を創り出してもなお生まれていないその可能性」

「それに至れそうな存在を、ワシは一人知っておるよ。あやつはついに、時間だけでなく次元にも干渉できるほどの力を身に着けおった。少なくともワシの管理するこの世界において、あやつは何でもできる」

「ハハ、できるのならそう遠くないうちに。そう、１００億年以内くらいに私を殺せるだけの力を着けてほしいものだ。この世界の限界も突破して、私という固有軸を殺害できるくらいにね」

「あやつは何億年かかろうとも必ずお主を殺すぞ。あやつは自分の脳に呪いをかけておる。決してお主への憎悪を忘れないよう、死んでも消えない呪いをな」

「……彼は本当に、どの世界線でも私に敵対しているな。敵対していない世界線は圧倒的に少ないよ」

「あやつは本当に芯の通った男じゃからな。世界を跨いだくらいで、アレの憎悪は覆せん」

「まあ、構わないさ。この世界は比較的成功に近いようだし、私も頻繁に観測することにしようかな。それじゃあ、また一万年後くらいに会いに来るよ。それまで元気でね、アストラ」

「二度とこの世界に干渉するな、性悪魔王」

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