第1幕

1.第一幕概要


1-1.出演者

(1)ナレーター(声のみ)

(2)インタビューワ(40歳、現代のテレビ局サラリーマン)

(3)メロス(25歳、古代ギリシアの羊飼い)

(3)ディオニス(40歳、古代ギリシアの国王)

1-2.演出時間:30分

1-3.あらすじ:インタビューワがメロスにインタビューする。

1-4.舞台設定

・時は現代。場所は放送局の一室(シンプルな部屋)。

・机を挟んでインタビューワとメロス、ディオニスが座っている。

・インタビューワは、スーツにネクタイの格好(現代的な服装)。

・メロスは、白い布を右肩を露出し体に巻きつけた格好。短い衣装。草履のような履物。(紀元前350年頃の古代ギリシャ、シラクサ辺り<イタリア・シチリア島南東部>の羊飼いの格好をイメージ)。大きなリュックを持っている。

・ディオニスは、服を着て、マントを付ける。長い衣装。頭には王冠。靴のような履物(紀元前350年頃の古代ギリシャ、シラクサ辺り<イタリア・シチリア島南東部>の王様(ディオニス二世)をイメージ)。

・大きなスクリーンには、「走れメロス」のタイトルが大きく映し出される。


2.シナリオ


(次の記述は、スクリーンに、聴衆に読めるように大きな文字で映し出し、ナレーターが読み上げる。文字が小さくなってしまう場合は、スクロールまたは、2ページ以上に分けて写すことも可。以下、この記述が出てきたときは同様の演出)


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メロスは激怒した。必ず、かの邪智暴虐の王を除かなければならぬと決意した。

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インタビューワ「メロスさん、国王ディオニスさん、よろしくお願いします。」


メロス・ディオニス「よろしくお願いします。」


インタビューワ「メロスさんは、王様の邪智暴虐ぶりに、さぞお怒りになられたことでしょう?」


メロス「あの夜は、王のせいで、市全体がやけに寂しくひっそりとして、俺はだんだん不安になってきた。」


ディオニス「邪知暴虐とは、「悪知恵が働き、人々を苦しめる乱暴者」という意味だ。メロスも国民も完全にわしのことを誤解しておる。」


メロス「俺は、妹の結婚式の品々を買いに一日中走ってシラクスまで来たのに、夜になって店が閉まっていた。だから頭にきた。」


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「王様は、人を殺します。」

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インタビューワ「王様は、人を殺したというのは、本当なんですか?」


ディオニス「全くの嘘だ。わしを貶めて失脚させようと企んでいる者のデマに違いない。」


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「はい、はじめは王様の妹婿さまを。それから、御自身のお世嗣(よつぎ)を。それから、妹さまを。それから、妹さまの御子さまを。それから、皇后さまを。それから、賢臣のアレキス様を。

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インタビューワ「近親の人をみんな殺したというのは、本当なんですか?」


ディオニス「わしの世継ぎとなる一人息子がまさか殺されようとは思わなかった。皇后は殺されたという噂が流れているが、元気で暮らしておる。わしは誰一人殺していないし、殺せと言う命令も出していない。それなのにわしが殺したという噂が流れて、国民の支持率が低下して困っておる。」


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「このごろは、臣下の心をも、お疑いになり、少しく派手な暮しをしている者には、人質ひとりずつ差し出すことを命じて居ります。御命令を拒めば十字架にかけられて、殺されます。きょうは、六人殺されました。」

聞いて、メロスは激怒した。「呆れた王だ。生かして置けぬ。」

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インタビューワ「メロスさんは、王様が人を殺していると聞いて、激怒された?」


メロス「俺は、店さえ開いてればよかったんだ。王様が人を殺していることなんて興味はない。俺は政治は知らないし。ただ、王様のせいで店が閉まっているらしい。だから、王様に『とにかく、店を開けさせろ』と文句を言いたかったんだ。爺さんは、王様は今日は6人殺したと言ってたけど、本当の事は俺にはわからない。殺されたやつが大罪を犯したかもしれないし、一方的に老さんの話を聞いて判断するなんてフェアじゃない。そもそも、王様が人を殺したことなんて、どうでもいい。問題は、店が開いてないことだ。」


インタビューワ「『あきれた王だ。生かして置けぬ』と言うくらい、王の暴虐な行為に怒っていたのではないですか?」


メロス「俺、『生かして置けぬ』なんて言った? 覚えてないけど、『そんなやつ死ねばいい』と陰口を叩いたのを、太宰さんが脚色したんじゃないかな。死ねばいいと口に出しても、まさか本当に殺しはしない。それこそ暴虐だ。王様を殺してでも、早く店を開けさせたいという気持ちはあったけど、まさか本当に殺そうなんて、これっぽっちも思っていない。」


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メロスは、単純な男であった。買い物を、背負ったままで、のそのそ王城にはいって行った。

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インタビューワ「買い物を背負ったまま、ということは、お店は開いていて、結婚式のための買い物は済まされたということではないですか?」


メロス「その前の『メロスは、単純な男であった』というのが気にいらないな。太宰さんの脚色だと思うけど、なんか、俺が間抜けな男に書かれちゃってんだよな。今度会ったら、書き換えてもらおう。そう、結婚式の買い物は終わていた。そのために、朝早くから急いで駆けてきたんだから。夜の店が閉まっていたんだ。俺は、ひさしぶりにセリヌンティウスとビールを飲むために、馴染みの店に行こうと思って、それだけを楽しみに、朝からウキウキしていたんだ。結婚式の買い物のついでに馴染みの店に行くつもりだったわけじゃないよ。久しぶりに、馴染みの店に行くついでに、結婚式用の買い物を一切済ませようと思ったんだ。でも、その肝心の馴染みの店が開いてない。だから、文句を言いに、お城に行ったんだ。」


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調べられて、メロスの懐中からは短剣が出て来たので、騒ぎが大きくなってしまった。メロスは、王の前に引き出された。

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インタビューワ「メロスさんがお城に行ったら、短剣が見つかり、王の前に引き出されれましたね」


メロス「俺は、直接、王様と話がしたかったんだ。馴染みの店を開けさせろと。あの爺さんに、『短剣をしのばせておけば、王様と直接話ができるかも知れない』って入れ知恵されて、爺さんから短剣を借りて、俺は単純だからその通りにやった。そしたら、まんまと策にはまってやんの。(語るように)『王様は、単純な男であった。』」


ディオニス「最初メロスを見た時、大きなリュックを背負っていて、登山者が迷って城に辿り着いたのかと思った。何でも結婚式の余興に必要なものを買いにきたとか。調べると「私が主役です」と書かれたタスキや、ビンゴゲームセットとか、学生服とセーラー服が出てきた。その中にリンゴと剣があったから、リンゴを頭に乗せて剣を投げ刺すゲームを結婚式の余興でやるのか? 『この短刀で何の余興をするつもりであったか、言え』、と問い詰めた。」


・ディオニスは、メロスのリュックを取り、中から、タスキ(「私が主役です」と書かれている)、ビンゴゲームセット、学生服とセーラー服、リンゴ、短剣を取り出す。


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「この短刀で何をするつもりであったか。言え!」暴君ディオニスは静かに、けれども威厳を以て問いつめた。

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インタビューワ「何の余興をするつもりであったか、と聞いたんですか?」


ディオニス「そうじゃ。頭に乗せたリンゴを剣で射止める余興をするなら、見たいと思ったのだ。」


・ディオニスは、メロスの頭の上にリンゴを置いて、そこに剣を投げる真似をする。


ディオニス「『ウィリアム・テル』はシラーの名作だ。」


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「市を暴君の手から救うのだ。」とメロスは悪びれずに答えた。

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インタビューワ「『何の余興に使うのか』と聞いたら、『市を暴君から救うのだ』というのがメロスさんの答えですか?」


・メロスはディオニスから短剣をとる。


メロス「俺が王様に放った第一声がこれ、『市を暴君の手から救うのだ!』 相手に『うん』と言わせるには、最初に笑わせるか、ビビらせるからのどちらかだ。俺は、道々、何て言おうか考えた。王様とかけて、正方形と説く、その心は、『シッカ〜ク』とか、王様とかけて、祭りの金魚と説く。その心は『神(紙)に見はなされて、すくわれない』とかね。でも面白くなくて、やめたんだ。で、思わず出た言葉が『市を暴君の手から救うのだ』」


・メロスは、ディオニスの首に短剣をあてる。


ディオニス「メロスは『馴染みの店を開けるように命令を出せ!』と脅してきた。わしのせいで、店が閉まってると思いこんでるようであった」


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「おまえがか?」王は、憫笑した。「仕方の無いやつじゃ。おまえには、わしの孤独がわからぬ。」

「言うな!」とメロスは、いきり立って反駁した。

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インタビューワ「そのあと、なぜか言い争いになってますね」


・メロスは、短剣を王様の首にあて、当時の状況を再現する。


メロス「『馴染みの店を開ける命令を出せ』俺はこう言った」


ディオニス「わしは店が閉まってることなど知らん」


メロス「ビールを飲むことだけが楽しみだったのに、それが飲めない俺の孤独な気持ちがわかるか」


ディオニス(憐れむように笑いながら)「お前がか? 仕方のないやつじゃ。お前には、息子を殺された、わしの孤独がわからぬ」


メロス「言うな。両親も妻も子供もいない俺の方が孤独だ」


ディオニス「国民の支持率が低下しているわしの方が孤独だ」


メロス「馴染みの店でビールが飲めないなら、死んでやる。俺を磔にしろ」


ディオニス「『ああ、してやる。お前だって、いまに、磔になってから、泣いて詫びたって聞かぬぞ』と、どっちが孤独かという口喧嘩になってしまったのじゃ」


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「おまえだって、いまに、磔になってから、泣いて詫びたって聞かぬぞ。」

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インタビューワ「メロスさんに、こう言ってる場面ですね。」


ディオニス「売り言葉に買い言葉ってやつだな」


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「ただ、私に情をかけたいつもりなら、処刑までに三日間の日限を与えて下さい。たった一人の妹に、亭主を持たせてやりたいのです。三日のうちに、私は村で結婚式を挙げさせ、必ず、ここへ帰って来ます。」

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インタビューワ「三日のうちに結婚式をあげてまた戻ってくるという約束をされました。メロスさんは短剣が見つかって、処刑されることになったんですね?」


メロス「さあ? 王様は俺の処刑なんて考えてなかったんじゃないかな。でも俺が『処刑までに三日間ほしい』と早とちりして、勝手に自分で処刑されると決めちゃったのかも。あの失言さえなければ…。俺は単純だなあ。」


ディオニス「ただの口喧嘩なのに、処刑と言われて、ビックリした。いくらなんでも処刑は止めようよ、人を殺すの嫌いだもん、祟られたらやだもん、殺傷沙汰になったら、ますますわしの支持率が下がっちゃうもん、そう思ったのだ。三日間の猶予を与えるから、その間にメロスが小鳥のように逃げてくれれば追わないぞ、という気持ちだった。」


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「逃がした小鳥が帰って来るというのか。」

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インタビューワ「その気持ちがこのことばですね?」


ディオニス「そう。逃げていいんだよ、と言ったつもりなのだ。それなのに、メロスは、単純なのか、人の話を理解しないで、変な方に自分で話をもっていってしまう。」


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「そんなに私を信じられないならば、よろしい、この市にセリヌンティウスという石工がいます。私の無二の友人だ。あれを、人質としてここに置いて行こう。私が逃げてしまって、三日目の日暮まで、ここに帰って来なかったら、あの友人を絞め殺して下さい。たのむ、そうして下さい。」

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インタビューワ「メロスさんは、自らセリヌンティウスさんという竹馬の友を人質に差し出そうと言ってますね。」


メロス「竹馬の友ではなく、馬鹿な友だ。いつか、絞め殺そうと思っていた。俺の代わりに死ねるなら、本望だ。」


ディオニス「メロスは、さっさと城から出て、逃げてくれればよかったのだ。それなのに、メロスは『代わりにセリヌンティウスを人質に置いていく』と、言いおった。わしが、『代わりに人質をおいて行け』と言って、『仕方ない。セリヌンティウスという友を置いていく』と言うならわかるが、わしは人質を要求していない。なんで、セリヌンティウスを人質にすると言ったメロスは、あんなにうれしそうだったのだろう? 『帰って来なかったら、あの友人を絞め殺して下さい。たのむ、そうして下さい』と言ったときのメロスの目は、はじめから『俺は帰ってこないからセリヌンティウスを殺してね』と言ってるみたいだった」


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それを聞いて王は、残虐な気持で、そっと北叟笑んだ。生意気なことを言うわい。どうせ帰って来ないにきまっている。この嘘つきに騙された振りして、放してやるのも面白い。そうして身代りの男を、三日目に殺してやるのも気味がいい。

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インタビューワ「でも、王様は『三日目に殺してやるのも気味がいい』、とおっしゃられてますね?」


ディオニス「この発言は誤りだ。嘘だ。さっきも言ったが、わしは人を殺すなんていやだし、血を見るのも嫌いだ。これは、わしの言葉ではない。おそらく太宰さんの創作だろう。もっと正確に『三日目に殺してやるのも気味がいい、と王は思ったのかも知れない』とでも太宰さんは書いてくれればいいのに、いかにも、私が言ったかのような書き方をして、印象操作をしてレッテルを貼るのはホント、やめてほしい。だから、国民もわしのことを誤解して、どんどん支持率が下がるんだ」

 

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「願いを、聞いた。その身代りを呼ぶがよい。三日目には日没までに帰って来い。おくれたら、その身代りを、きっと殺すぞ。ちょっとおくれて来るがいい。おまえの罪は、永遠にゆるしてやろうぞ。」

「なに、何をおっしゃる。」

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インタビューワ「王様との交渉は成立して、三日間の期限をもらいましたが、この時のメロスさんの気持ちはいかがしたか?」


メロス「俺が一番動揺したところだ。『何をおっしゃる』ではなく、『なに、何をおっしゃる』というところにそれが表れてる。でも、これ、本当は、「な、な、な、何? な、何とおっしゃいました?」と言った。それくらい動揺した。俺は、三日間で、結婚式をあげて妹と婿と3人で、羊をつれて国外逃亡しようと考えた。ところが、セリヌンティウスを人質に置いて、日没までに帰って来なければ、俺は無罪になると聞いて、聞き間違いかと思った。帰って来なくて無罪になるなら、誰が戻ろう。その、心の動揺がこの、『なに、何をおっしゃる』というところだ。セリヌンティウスには、最近ずっと居留守をつかわれて、二年も会っていない。だから、また居留守を使われて、来ないかもしれないという不安はあった。逆の立場で頼まれたら、俺は絶対に人質にならない。前に一緒にビールを飲んだ時に、あいつに飲み代を貸したままだから、俺は一計を案じ、手紙に『借金をチャラにするから、すぐに城に来てくれ』と書いて、王様の使いに持たせた。何も知らぬは、セリヌンティウスばかりなり」


ディオニス「メロスは、城で暴れて、セリヌンティウスを人質にして、王様の命令によってセリヌンティウス殺すという、巧妙な殺人計画か? メロスの一人芝居か? と思ったが、あとで聞くと、メロスは、いろんな人に迷惑をかけている単純な男だった」


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竹馬の友、セリヌンティウスは、深夜、王城に召された。

暴君ディオニスの面前で、佳き友と佳き友は、二年ぶりで相逢うた。メロスは、友に一切の事情を語った。セリヌンティウスは無言で首肯き、メロスをひしと抱きしめた。

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インタビューワ「メロスさんは、セリヌンティウスさんと久しぶりにあって嬉しかったのではないですか?」


メロス「俺はセリヌンティウスを見て、満面の笑みだった。のこのこ来たな、と思った。セリヌンティウスも満面の笑みだった。手紙を読んで、借金がチャラになると思ったのだろう。俺は、一切の事情を話した。あのバカは、今さら文句を言っても事態は変わらないと悟ったのか、意気消沈し、完全に諦めていた。セリヌンティウスは蒼白になり、無言でうなだれ、ひざから崩れ落ち気を失っていた。俺はなんとか支えていた。それがこの、『セリヌンティウスは無言で首肯き、メロスをひしと抱きしめた』という場面だな。あいつが俺を抱き締めているんじゃなく、俺が気を失ったあいつを支えているんだ、倒れないように。」


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メロスは、すぐに出発した。初夏、満天の星である。

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インタビューワ「そして、すぐにメロスさんは出発していますね」


ディオニス「やっと、メロスがいなくなって、ホットした。セリヌンティウスはいい奴だった。人質になるとも知らず騙されて、城に来るくらいだから、心根が優しいのだろう。食事しながら酒を飲んで話もはずんだ」


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祝宴に列席していた村人たちは、何か不吉なものを感じたが、それでも、めいめい気持を引きたて、狭い家の中で、むんむん蒸し暑いのも怺え、陽気に歌をうたい、手を拍った。メロスも、満面に喜色を湛え、しばらくは、王とのあの約束をさえ忘れていた。祝宴は、夜に入っていよいよ乱れ華やかになり、人々は、外の豪雨を全く気にしなくなった。

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インタビューワ「結婚の祝宴は盛り上がったようですね」


・メロスは、「私が主役です」と書かれたタスキをつける。


メロス「結婚式は厳粛かつ甘美な雰囲気の中で、華やかに執り行われた。」


・メロスは、ディオニスの手を取り、短剣を手に一緒にリンゴをカットするまね(ケーキ入刀のまね)。


メロス「この頃、外は雨で、遅れちゃいそうな、予感がしていた。宴会がはじまるとビールを飲み過ぎて、しばらくは、王様とのあの約束さえ忘れていた。そもそも、俺は、最初からうまいビールが飲みたくて、シクラスまで行ったんだ。そのビールが止まらなくなって、約束も記憶もすっかりとんでしまった。」


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さて、メロスは、ぶるんと両腕を大きく振って、雨中、矢の如く走り出た。

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インタビューワ「メロスさんは、三日間で結婚式をあげ、急いで城に戻ろうとしますね。途中、期限に遅れまいと必死に走っておられます」


メロス「それはそれは、必死に走った。寝坊したから、最初は必死に走って、残り距離を計算して、大丈夫、もう間に合うかなと思って鼻歌まじりに歩いて、よくよく考えたら意外と時間がないことに気がついた。俺は算数もわからない」


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ぜいぜい荒い呼吸をしながら峠をのぼり、のぼり切って、ほっとした時、突然、目の前に一隊の山賊が躍り出た。

「待て。」

「何をするのだ。私は陽の沈まぬうちに王城へ行かなければならぬ。放せ。」

「どっこい放さぬ。持ちもの全部を置いて行け。」

「私にはいのちの他には何も無い。その、たった一つの命も、これから王にくれてやるのだ。」

「その、いのちが欲しいのだ。」

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インタビューワ「途中で新たな問題が起こります。メロスさんは山賊に襲われます。手に汗にぎる場面です」


メロス「これ、嘘。実は、この部分は作り話だ。途中で試練に会う場面を入れたいと言われて、シラーさんと太宰さんと3人で相談して作ったのがこの話。結婚式をあげて帰ってきただけだと、話が盛り上がらないから、時間がなくなってハラハラする場面を入れたいと言われた。それで、途中で山賊に襲われたことになった。俺の案じゃないよ。シラーさんだったかな? あと、橋が流されて、濁流の川を泳いで渡る場面、あれも嘘。」


インタビューワ「さまざまな困難に立ち向かって友のために必死に走ろうとする姿は、人生の困難に立ち向かって進むメロスさんの生き様そのものをあらわしているようで、感動したのですが、作り話でしたか…」


メロス「そう? こんなんで感動した? こんなんで? 困難と「こんなん」を掛けたおやじギャグ。スルーしないで、笑ってよ」


インタビューワ「(作り笑いで)あはは…。でも、なんとか、期限までに戻ってきた。メロスさんは、自分が処刑されるというのに、よく戻ってきましたね…」


メロス「これ、言っていいのかな…? 時効だと思って言うけど、俺は、一旦城を出た後、いい事を思いついたと、城に戻って、再び王様に会ったんだ。そこで、王様にこんな提案をした」


インタビューワ「どんな?」


メロス「俺が3日後、城に戻ったら、王様は『おまえらの仲間の一人にしてほしい』と言って、さくらで用意した聴衆に、『王様万歳』と言わせろ。そうすれば、王様の信頼は回復され、きっと国民の支持率もあがると。」


・ディオニスは、大きくうなずく。


インタビューワ「メロスさんが提案した?」


メロス「そう。この話をしたら、王様は戯曲の主演に選ばれたかのように、目をかがやかせた」


・メロスは、「私が主役です」と書かれたタスキをディオニスにつける。


インタビューワ「そんな話が、はじめからできていたんですか?」


メロス「何が孤独かという話で盛り上がった時に、王様は、国民の支持率が下がっていることを随分気にしていた。だから、こういうストーリーにすれば、国民の信頼は回復して、支持率が上がるんじゃないかと提案した」


ディオニス「メロスとは話がついていた。最後に、国民とみんなで「王様万歳」と唱和する戯曲のシナリオができていたのだ。そのためのサクラも何人も用意して、練習もした。」


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私は、信頼に報いなければならぬ。いまはただその一事だ。走れ! メロス。

私は信頼されている。私は信頼されている。

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インタビューワ「この場面は、セリヌンティウスさんの信頼に応えようと、必死に走った場面じゃなかったんですか?」


メロス「信頼されている、というのは、俺が王様との約束を守ることを、王様は信じているという意味だ。俺と王様との約束は、セリヌンティウスも知らない。時間までに戻りさえすれば、俺も王様もセリヌンティウスも国民もハッピーになれる。だから何としても王様の信頼に応えようと思った」


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「フィロストラトスでございます。貴方のお友達セリヌンティウス様の弟子でございます。」その若い石工も、メロスの後について走りながら叫んだ。「もう、駄目でございます。むだでございます。走るのは、やめて下さい。もう、あの方をお助けになることは出来ません。」

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インタビューワ「刑場に辿り着く前にフィロストラトスさんに会いましたね?」


メロス「フィロストラトスはセリヌンティウスの弟子で、石工だった。師匠のセリヌンティウスが死ねば、財産も数々の作品も自分のものにして、富と名声を得ようと企んでいたのだろう。フィロストラトスは師匠が殺されることを望んでいた。だから、何としても、俺が期限までに帰るのを止めようと必死だった。まだ日が沈むまでには時間があるのに、『走るのはやめてください』、『自分の命が大事です』と言ってた。普通、弟子なら師匠のために『なんとしても時間までに戻ってください』って言うはずなのに、なんとか私を諦めさせようと必死だった。『無駄です、走るのはやめてください』とも言ってた。『今はご自分の命が大事です』というのもおかしい。つい、セリヌンティウスを殺したいという本音が出たのだろう。でも自らは手をくだせない小心者なんだ。なんでも、常日頃の厳しい師匠の指導に恨みも抱いていたとか。このこともあって今はもう、フィロストラトスは破門にしたと、セリヌンティウスは言っていた」


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まだ陽は沈まぬ。最後の死力を尽して、メロスは走った。

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インタビューワ「三日目の夕方、日が沈んでゆくのにメロスさんがなかなか現れず、王様は気が気じゃなかったのではないですか?」


ディオニス「メロスは、戯曲のシナリオ通り演じてくれると疑ってなかったのに、まもなく日が沈むという時間になってもメロスは戻って来なかった」


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「待て。その人を殺してはならぬ。メロスが帰って来た。約束のとおり、いま、帰って来た。」と大声で刑場の群衆にむかって叫んだつもりであったが、喉がつぶれて嗄れた声が幽かに出たばかり、群衆は、ひとりとして彼の到着に気がつかない。

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インタビューワ「メロスさんは、ようやくお城にたどり着いた時、誰もきづいてくれませんでした。この時の心境はいかがでしたか?」


メロス「フィロストラトスのせいだ」


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「それだから、走るのだ。信じられているから走るのだ。間に合う、間に合わぬは問題でないのだ。人の命も問題でないのだ。私は、なんだか、もっと恐ろしく大きいものの為に走っているのだ。ついて来い! フィロストラトス。」

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メロス「このセリフを全力疾走をしながら、隣の人に聞こえる大声で叫んでみろ。もうその後は声が出なくなる」


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「私だ、刑吏! 殺されるのは、私だ。メロスだ。彼を人質にした私は、ここにいる!」

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インタビューワ「メロスさんが戻ったことに気づいて、王様はどう思われましたか?」


ディオニス「ようやくメロスが戻ってきて、ほっとした。これからが戯曲の一番盛り上がる場面なのだから」


・ディオニスは、「私が主役です」というタスキがよく見えるように示す。


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「私を殴れ。ちから一ぱいに頬を殴れ。私は、途中で一度、悪い夢を見た。君が若し私を殴ってくれなかったら、私は君と抱擁する資格さえ無いのだ。殴れ。」

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インタビューワ「ようやく、城に戻ると、メロスさんは、セリヌンティウスさんにこう言いましたね?」


メロス「王様は事情を承知しているが、事情を知らないセリヌンティウスは自分が殺されると思って、3日間ドキドキしながら待っていたことだろう。セリヌンティウスにも事情を話してから結婚式に行くべきだったかと、反省している、ふりをしている場面だ。『私を殴れ。ちからいっぱい頬を殴れ』と言われたら、『お前を殴ることなどできようはずがあろうか。私の命を救うために、君は自分が磔になるとわかっていながら帰ってきたのだから』、と言うだろう、普通は。なのに、あのバカ、ちから一ぱい殴ってきた。今度は、セリヌンティウスを人質に残して絶対、俺は帰ってこないぞ」


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「メロス、私を殴れ。同じくらい音高く私の頬を殴れ。私はこの三日の間、たった一度だけ、ちらと君を疑った。生れて、はじめて君を疑った。君が私を殴ってくれなければ、私は君と抱擁できない。」

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インタビューワ「それに対し、セリヌンティウスさんも、このように、私を殴れと言い返しましね。これを聞いた時は、どう思いました?」


メロス「完全に勘違いしているとあきれた。昔から、ちょっとボケた奴だったし、事情を知らないとはいえ、俺と王様は笑いをこらえるのに必死だった。」


・ディオニスは、笑顔を手で隠す様子をする。


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メロスは腕に唸りをつけてセリヌンティウスの頬を殴った。

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インタビューワ「でも、セリヌンティウスさんを殴った。しかも、だましておきながら、腕に唸りをつけて殴ったってことですね?」


メロス「セリヌンティウスに殴られたのが痛かったから、目には目をだ。一番大事なことは、俺と王様が考えた戯曲が成功することで、最後に国民が万歳してくれることが重要なんだ。そのための演出と思えば、本望だ。当初のシナリオにはないアドリブだがな。『貸した飲み代がチャラになってしまったじゃないか』と、怒りをこめてあのバカを殴った」


・メロスは、ゆっくりディオニスを殴るまねをする。


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「ありがとう、友よ。」二人同時に言い、ひしと抱き合い、それから嬉し泣きにおいおい声を放って泣いた

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インタビューワ「二人で抱き合っている場面ですね」


メロス「『ありがとう、友よ』と言ったのは俺だけで、二人同時に言ったというのは誤りだ。私のグーパンチが相当、痛かったのだろう。セリヌンティウスはおいおい声を放ったあと、またもフラフラ気を失った。なんとか倒れないように俺は、セリヌンティウスを必死に抱き支えた。ひしと抱き合っているのではない。」


・ディオニスは、気を失って倒れているまねをして、それをメロスが支えている。


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どうか、わしをも仲間に入れてくれまいか。どうか、わしの願いを聞き入れて、おまえらの仲間の一人にしてほしい。」

 どっと群衆の間に、歓声が起った。

「万歳、王様万歳。」

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インタビューワ「最後は、シナリオ通りの結末になったということですね」


ディオニス「みんな、シナリオ通り、見事に戯曲を演じ切ってくれた。国民に万歳と言わすためにサクラを5人ほど用意した。広場の中央に1人、東西南北の端に1人づつの合計5人。最初に中央の一人が万歳と言って、次に順番に万歳と言うように、タイミングを合わせるのに、ずいぶん練習したのだ。わしも自分で万歳と手をあげれば、それに従わぬ国民はいないだろうと計算していた。」


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ひとりの少女が、緋のマントをメロスに捧げた。メロスは、まごついた。佳き友は、気をきかせて教えてやった。

「メロス、君は、まっぱだかじゃないか。早くそのマントを着るがいい。この可愛い娘さんは、メロスの裸体を、皆に見られるのが、たまらなく口惜しいのだ。」

勇者は、ひどく赤面した。

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インタビューワ「その後、こんな場面がありますね。そもそも、なぜ、まっぱだかなんですか」


・メロスは、上着を脱いで、パンツ1枚で横になる。セリフに合わせて、実演。


メロス「帰り道が暑くて、服を脱いで昼寝した。いかん、時間を忘れて寝過ごしたかと、あわてて駆けだしたら、服も忘れた。だから、城に着いた時にはほぼ全裸だった。帰ってきたと叫んでも、最初は、誰一人気がつかなかった。俺は、声が出なくて、気づいてもらうために、最後の一枚を脱いだんだ。すると、『なんだ』、『変な奴がいるぞ』、『こんなとこで何て格好をしてるんだ?』、『メロスじゃないか?』、『メロスだって?』、『メロスだ』、『おおメロスだ』、『メロスがきたぞ』、とようやく気づいてもらえて、ホットした」


・メロスは、セリフに合わせて、パンツを脱ぐ格好をするが、脱がない。


インタビューワ「可愛い娘にマントを渡されましたが、その時の気持ちはいかがでしたか」


・ディオニスは、メロスにマントを渡し、メロスはつける。メロスのパンツ姿は見えたまま。


メロス「本当に可愛い娘だった。メロスだけに、もうメロメロっす。…スルーしないで、笑ってよ」


インタビューワ「(頬をひきつらせながら)あはは…。最後は、赤面する場面で終わってますね」


メロス「まっぱだかで、へとへとで心も体もしおだれていたのが、可愛い娘に気づいたとたん、急に元気になっちゃって、それがチョー恥ずかしくて、お尻と前をあわてて手で隠しながら、赤面した」


・メロスは、恥ずかしそうに、両手で、お尻と前を隠す格好をする。


ディオニス「わしは、舞台の幕を下ろして、舞台の裏でメロスと握手した。その後も、ずっと万歳、万歳と続くから、一度、幕をあげて、アンコールに応えようかと思ったが、国民は戯曲と知らないから、それはしなかった」


・メロスとディオニスは、握手したあと抱擁する。


インタビューワ「最後に、今日のインタビューを受けていただいた感想をお聞かせください」


ディオニス「わしが悪い国王じゃないと伝えられて、国民の支持率は上がったかな? 僕は暴君ではないと、国民は信じてくれたかな? いま、おやじギャグに気づいてくれた? 僕と暴君。スルーしないで笑わないと、磔にするぞ。これは冗談だが」

メロス「ずっと、言いたくて、うずうずしていたことを言えてよかった。メロスのような正義感を持ち、友情に厚く勇敢な男に憧れていた日本の皆さんが、この事実を知って、メロスだけに、メロス・ロスにならなきゃいいけれど…。スルーしないで、笑ってよ…。」


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