第50話 土耳古石-3

「後ろに手、ついて・・・・・・そう・・・足は閉じるなよ」


向かい合わせで腰を抱えた智寿が、下から腰を打ち付けてくる。


柔らかくほどけた身体は素直に熟れて彼のことをちゃんと受け入れはしたけれど、色々とすでに限界だ。


ベッドの上では完全にされるがままの楓なので、快感を送り込まれて初めて今がどういう状況か理解できる。


さっきまで嬲られていた場所が解放されてほっとしたのもつかの間、別の角度から媚肉を探られて、新しい刺激に腰が戦慄く。


ちゃんと楓の反応を確かめながら微調整してくる彼の余裕が心底憎らしい。


「ん・・・・・・気持ちぃ・・・」


目を閉じて感じ入るように掠れた声を零した智寿が、ぐうっと腰を捻じ込んできた。


その声に反応してまた身体が熟れていく。


智寿は楓の声が可愛いと言うが、楓にとっても智寿の声は特別なのだ。


低くて滑らかな声で名前を呼ばれればドキドキするし、こんな風にベッドで抱き合いながら掠れた声を出されると、それだけでたまらなくなる。


柔らかい媚肉を擦り立ててそのさらに奥を欲しがる動きに、頭の中が真っ白になる。


神経を優しく嬲られて擽られるような快感は、ひっきりなしに楓を追い詰めてくる。


「ま・・・って・・・グリグリしないで・・・ぁ、や、っ」


腕で身体を支えていられなくなって、シーツの上に倒れ込みそうになった楓の手を掴んで引き寄せた智寿が、逃げるなと言わんばかりにまた最奥を抉って来た。


行き止まりを示すその場所で膨らんだ切っ先が淫らなキスを繰り返す。


「もう痛くないだろ?」


楓が慣れるまで、智寿が奥で腰を使うことはなかった。


年齢の事も考えて、子作りを始めるなら早い方がいい、と先輩社員たちからアドバイスを受けて、最初の夜以降、避妊をしていない。


出産に前向きな姿勢を示した楓に、智寿は嬉しそうに子供が出来たら在宅勤務出来るようにする、と請け負ってくれた。


いつか来る三人暮らしのために、その場所を彼に満たして貰うことは必須条件なのだけれど。


「だめ・・・だめ・・・イっちゃ・・・ぁ、あ・・・っん~~っ」


気持ちいい場所をぐにぐにと捏ねられて、離れることを許されないまま最後まで追い詰められる。


甘痒い心地よさが限界まで膨らんで、腰の奥がいっぱいになって、一気にはじけた。


ただでさえいっぱいいっぱいな隘路が戦慄いて、智寿を締め付けながら腰を震わせる。


体内に飲み込んだ異物の存在をまざまざと感じながら陶然と息を吐けば。


「ん・・・っ」


低く智寿が呻いて、楓の腰を抱え直して突き上げる動きを早くした。


「・・・・・・楓・・・・・・出したい・・・」


膨らんだ切っ先が、限界を伝えるように媚肉を擦り立ててくる。


溢れる蜜をかき混ぜる動きに、楓は揺さぶられながら頷き返した。


「ん・・・・・・奥に・・・・・・出し・・・て・・・」


智寿が、最初に楓の中で熱を吐き出した夜は、衝撃と熱さで頭の中が真っ白になった。


愛情を注がれることの意味をはっきりと自覚して、これが家族になる第一歩なのだと感動に浸ったものだ。


けれど、しんみり出来たのは最初の一回だけで、一度では収まらなかった智寿がそのまま楓を組み敷き続けて、あっという間に彼の熱に溺れる羽目になった。


子作りは楽ではないけれど、どうしようもないくらい気持ちいい。


肩に甘えた楓のつむじにキスを落として、智寿が柔らかい胸を揉みしだく。


ふにふにと指を沈めながら、悪戯な親指が凝った尖りを弾いてきた。


じんと痺れるような快感が走って、また隘路が戦慄く。


「んっ・・・ん」


「・・・・・・今夜も・・・ちゃんと飲み込んで」


「・・・・・・っ」


零さないでと言外に訴えられて、知らずに身体が力んでしまう。


吐息で笑った智寿が、引いた腰を強く打ち付けて、最奥で果てた。


震える屹立から溢れた熱が柔らかい媚肉を濡らして満たしていく。


「・・・・・・楓・・・締めすぎ・・・」


眉根を下げた智寿が、こめかみにキスを落として二度三度と腰を揺らした。


それから労わるようにおへその下を優しく撫でる。


「・・・・・・もう一回・・・」


目を細めて二度目をねだる彼の体力に、呆然としながら首を横に振る。


繁忙期には徹夜も増える智寿の体力は計り知れない。


開かせた足の隙間を確かめようとする彼を押しとどめて思い切り眉根を寄せた。


「・・・・・・まだ・・・だめ・・・・・・休ませて・・・今したら・・・・・・絶対寝ちゃう」


中途半端に智寿を放り出したくはないし、意識を飛ばした楓の介抱もさせたくはない。


寛大な夫は喜んで妻の面倒を見るのだろうが。


「・・・それは困るな」


落ち着かせるように息を吐いた智寿が、するりと隣に身を横たえた。


広げた腕に身体を預ければ、頬を寄せた彼が静かに笑った。


「やっと馴染んだな」

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