BL 敬語くん
おいも
第1話 告白
敬語くん。僕のあだ名だ。
今は高校2年生。周りの人とどう接したらいいのか分からない。どの距離感で話したらいいのか自分には分からない。距離感が分からなくて戸惑いながら人と関わっているうちに、敬語で話すことが定着してしまっていた。厳密にいえば、語尾に「です、ます」を付けているだけなのだが、気が付いた頃にはクラスの人には「敬語くん」と呼ばれていた。
最近、隣のクラスに気になる人がいる。僕より身長が少し高い男の人だ。彼は教室で楽しそうにクラスの男子と喋っている。初めて目にした時から、なぜだか分からないがとても魅力的に感じていた。教室が違う僕は、いつも教室の前を通る度にその人を目で追い、できるだけゆっくり通過した。たまに目が合うと、その人は少しだけ怖い顔をする。何もしていないのに。嫌われているのだろうか。もしくは以前に何か彼の気に障るようなことをしたのだろうか。しかし、気にしていても仕方がない。とにかく僕はその人と話してみたかった。
新学期が始まった4月、廊下を歩いていても窓の外には桜の木が見える。今日はぽかぽかしていて過ごしやすい陽気だ。心なしか気分も上がっていた。きっかけなんて突然だ。気が付いたときにはもう、隣の教室に足を踏み入れていた。今、彼は椅子に座っていて、誰とも話していない。チャンスだと思い、足早に彼の机の前に到着。
「あのっ・・・」
勢いで話しかけたはいいものの、肝心な話すことが思いつかない。でも何か話さなければ。と考えてるうちに、
「あんた、誰?」
と、いつもの怖い顔をしながら、でも少し優しい声で問いかけてくれた。初めて聞く声だったが、どこか落ち着く声だ。
「えっと、突然すみません。僕は隣のクラスの」
「あぁ、敬語くんって呼ばれてるんでしょ」
彼は言葉を遮るように、僕のあだ名を口にした。
「えっ、知ってるんですか?」
という僕の前のめりな問いかけに、
「まあ」
と目を逸らしながらも答えてくれた。認知されていただけなのに、すごくすごく嬉しくて、喜びが抑えられなかった。
「あっ、あの、いつも見てました!好きです!」
何を言っているのか、自分でもよくわからない。自分の発した言葉に自分でも驚き、心臓が破裂しそうなくらいドキドキしてしまっていた。周りにいたクラスメイトも、驚いた顔でこちらを見ているのを目の端で捉えていた。教室内が一瞬静かになったあと、ザワついた。彼も眉間にしわを寄せていた。時が止まった感覚だった。
「ごめん、ちょっとよくわからないけど、もう授業始まるよ」
彼のその言葉にハッとして、
「そ、そうですね」
と、よく分からない会話をし、僕は時計を確認して自分の教室に急いだ。
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