第33話 【Vtop】新人加入【洗礼】一日目! その4
「公開質問たーーーーいむ!!!」
「こ、公開露出プレイ!?」
「公開しか合っとらん。座れ」
「公開露出……じゃなくて。公開質問タイムってなんだい! あきちゃん!」
「ほらもう! お前のせいで釣られてんじゃねえか!」
「羞恥露出プレイ……じゃなくて。公開質問タイムっていうのはね! ふゆちゃん!」
「わざとだろ!? その間違いはしないだろ!?」
そう言った瞬間。あきふゆコンビがさっとこちらに視線を移してきた。
「「じー」」
「……な、なんだ。うるさかったか? 全裸土下座した方が良いか?」
『ただのセクハラで草』
『もはや持ちネタとなった全裸土下座』
「ツッコミ待ちだったから良いんだけどー」
「見た目と声のギャップがもうやばいみたいな?」
「正直なんか新しい扉開きそうみたいな?」
「あと全裸土下座はちょっと見たいかな?」
「私も全裸土下座して焼印入れられたいかな?」
「今
いや、このド変態は構っても構わなくても勝手に興奮するので放っておこう。
「しかしなぁ……どうしろと」
「意外と性癖の扉を開けるのって簡単だよ。私がカイリによくやってるし」
「説得力の鬼か」
『カイリきゅん……拗らせてるもんな、絶対』
『俺もカイリきゅんで拗らせちゃったもんな……』
『あのボイスで扉開きました』
「私もカイリ君で空いちゃったからね。鼓膜」
「鼓膜破れてんじゃねえか。あとお前は元々拗らせてるだろ。ド変態」
「あっ……今扉開いた。女の子相手だと何も感じなかったはずなのに。男の子相手で開いたのもカイリ君で女の子で開いたのもカイリ君……」
もう無視しよう。それが良い。つか男だ俺は。
「うふふ。気になりますねぇ? 愛ちゃん?」
「はぁ!? なんでアタシが……」
「ぐふふ……カイリきゅんの女装。楽しみですな」
「男の娘かぁ……あんまり想像つかないね、私には」
「ま、愛ちゃんの方が愛ちゃん愛ちゃんしてるから。ね? 愛ちゃん?」
「意味わかんねえよ!」
向こうも向こうで楽しそうである。仲良き事は美しきかな(一部例外あり)
「と、とりあーえず! つまりはさっきの続きです!」
「まだ読んでない質問があったからね! 新人ちゃんへの質問多めだよ!」
「という事でカイリきゅん!」
「『身バレ対策とかどうしてますか? というかしてますか?』だって!【敵の敵は敵】さんから!」
「四面楚歌じゃねえか! というかやっぱ同類だろさっきのと!」
という事は置いといて。身バレ対策か……
「……そうは言っても、初配信で身バレしたんだよな。俺達。普段もこんなノリ……っと。これ言ったらまずいか」
「大丈夫じゃないかな。道端で下ネタを叫びながら女の子に首輪を付けるような人には誰も近寄らないと思うし」
「風評被害がとんでもねえな」
「あ、カイリ。ちょっとポーズ変えて。……うん、こんな感じね」
「首輪……四つん這いでカイリ君乗せなきゃ」
「絵面がとんでもねえよ」
『確かに近づけんやろなぁ……』
『SNSで晒されて炎上しそう』
何かしらの法に引っかかりそうだし、社会的にも死ぬな。……いつも通りか?
「ちょっと話が脱線しかかってるよカイリきゅん!」
「結局身バレ対策はどうやってるんだい!」
「身バレ対策……か。強いて言うなら……」
瑠花と目が合った。自然とお互いの声が重なる。
「「バレたら逃げる」」
『力技で草』
『えぇ……?』
なんとなく決めてたのだ。いざとなれば逃げるが勝ちであると。
「「えぇ……?」」
あきふゆコンビもドン引きである。しかし、これが一番確実なのだから仕方ない。
「さすがに……じゃない?」
まさかの桃華までドン引きである。
「バレたら楽しまないとでしょ……? 折角のチャンスなのに」
ドン引きである。
「……と、という事で! 身バレ対策は逃げるでした!」
いやこれ人から聞いたら頭おかしく思えるな。……まあ良いか。
「じゃあ次は……あ、またカイリ君だ」
「なになに……?【味方の敵は味方】さんから!」
「スパイかよ。いや待て。もしかしてさっきの敵の敵は敵ってお前の事か!?」
「『カイリきゅんがカイリきゅんでカイリきゅんしてます。カイリきゅんはカイリきゅんですか?』だって」
「『だって』じゃねえよ。質問の意図が不明だよ。俺は何を答えれば良いんだよ」
「そりゃカイリきゅんがカイリきゅんである理由だよ!」
「哲学か。答えられるか。次行け次」
「じゃあおふざけはこれくらいにして本当の質問を」
「最初から普通にやれ」
この司会、色々と遊びすぎである。……まぁ、だからこそ【Vtop】らしいというか。あれなのだが。
「『レーヴァテイン君に質問です! 北や東、西にいる他の四天王(笑)達と会ったことはありますか?』」
「かはっ……」
「あ、カイリ。ポーズ崩さないで」
「あい」
『オーバーキルに死体蹴りしてて草』
『こんな状況でも瑠花ちゃんの言う事聞くのなんか幼馴染っぽくて良いな……』
『幼馴染やぞ。幼馴染ママやぞ』
すんごいダメージを受けた。ふとした時に思い出して死にかけてしまう。
「……で。あー、北と東と西だよな。面識はないぞ」
「んー……私もないけど。友達の幼馴染が北の子なんだよね」
「え? なにそれ初耳」
「私も会った事とか話した事はないんだけどね。話はよく聞くよ。なんでも、全裸で襲いかかったり縄に縛り付けてるのにえっちな事してくれないとか」
「世界観間違えてない? なんだ。すっげえ親近感湧いてきた。いやそこまでされてないんだが」
「カイリ君も緊縛に興味あるの!?」
「ないから近寄るな四つん這うな」
隙あらば踏まれようとしてくる桃華。なんだよこの日本語。桃華に会わなければ一生使う機会なかったぞ。
『類は友を呼ばなかったか……』
『分からんぞ。厨二病のベクトルが違うのかもしれない。カイリ君は厨二病ノートが主だったけど、ジャックナイフって言うくらいだし自分の感性を尖ったものだと信じ込むタイプかもしれん。変人タイプとか』
『北の妹です。お兄ちゃんが血を吐いて倒れたので縛り付けてわんちゃん狙いながら看病してます』
出たな。自称ジャックナイフの妹。なんだよ。自称ジャックナイフの妹って。パワーワードの
ぐっ……落ち着け。俺。
「……あれ。そういえば北の人の妹が自分と同じぐらい頭おかしいって言ってた気がする。私の友達」
「自分の頭がおかしい事に気づいてるタイプの狂人か。……え? 今なんて言った? 本人説ある?」
「まあいっか。カイリ、袖の方ちょっと見せて」
しかし、瑠花はすぐ流し、俺の体勢を変えながら描き込んでいく。
「えーっと。じゃあ次行くよー!」
「次は麻子ちゃん!」
そうしてまた質問タイムが始まったのだった。
◆◆◆
「「そこまで!」」
あきふゆコンビが告げると同時に、瑠花がペンを置いた。
『こーれまたとんでもねえ出来だぞ』
『なんで初手からこのレベルの戦いが出来るんだよ』
『てかこれほんとにカイリきゅん??? 愛ちゃん
???』
コメントもざわざわとしている。こちらから向こうのイラストの確認はできないのだが、瑠花のものは見えている。
……相変わらず、とんでもない上手さだ。
「じゃあじゃあさっそく?」
「愛ちゃん率いる五人衆とカイリきゅん率いる混沌集団のご対面とします?」
「略し方に悪意を感じる」
まあそれは良いか。
仕切りであるカーテンのようなものにスタッフが手をかける。
「それでは!」
「お披露目だあああああああああ!」
シャアアアアアッ! とカーテンが開かれ。現れたのは――
豪華な装飾に包まれた、空色ドレスを着けた、美少女の姿であった。
その手にはステッキを持っていて、頭の上にはティアラがちょこんと載せられている。その髪は目を惹く青色で、腰まで伸びていた。
「ふ、ふっふっふ。魔法少女と清楚系お嬢様は両立するのですぞ。愛ちゃんは元々童顔なのもありましたがな。マスクで普段は隠れてますが。そこを上手く清楚系に持っていけた手腕……さすがは真紀ちゃんですな!」
「ふふん。メイクで人は変わるからね!」
「てめぇら……覚えておけよ」
キッとその目が四人を睨む。が、縄張りを主著する子猫のような愛らしさが勝ってしまう。
「でもそれはそれとしてさ……誰? そこの美少女」
「俺だが?」
「アッ……アッッッッッ!?」
「千紗ちゃん!?」
唐突に奇声をあげ始めるのが一人。どうしたかと思えば、瑠花がうんうんと頷いた。
「分かるよ。私も最初で狂わされたからね」
「アッッッッッ!? アッッッッッッッッッ!?」
「大丈夫!? 信頼してたボスに爆弾を仕込まれてる事が発覚した手下みたいな叫び声上げてるけど!?」
「カイリ。パターンCで」
「パターンCって……ああ」
そういえば、声のパターンを瑠花と遊びで作ってたな。
パターンCは……
「あー。あー。……こんな感じか? ……いや、こんな感じかな?」
『!?』
『!?』
『!?』
ほんのりハスキーがかった、高めの声。……正直、自分で聞く分には好きでない声。俺らしさがどうしても垣間見えてしまうから。
「それじゃあカイリ! 自己紹介!」
「……ああ」
一度、咳払いをして調声をする。うん、久々だけどいけるな。
「改めて。カイリ・ホワイトです。よろしくお願いします」
「アッッッッッッッッッッッッッッッッッ………………」
「千紗ちゃんが倒れた!?」
ついに気を失ってしまった。しかしそれは数秒の事で、すぐに戻ってきた。
「はっ……私は何を」
「あー……大丈夫?」
「アッッッッッッッッッ」
「いやこれもう俺……じゃない。私、喋らない方が良いね」
「か、カイリ君……踏んで」
「踏まないから」
桃華へそう言って、姿見を見る。
黒髪をツインテールにした、女性用の制服を着けた美少女の姿があった。
その顔に元の面影はない。なんなんだこの清楚系美少女は。いや、俺なんだが。
「……改めて見ても凄いよね、瑠花」
「ふふん! 練習の成果だね! これならこんな風にほっぺすりすりしても問題ないよね!」
「普段からしてくるでしょ」
「アッッッッックロカミユリッッッッッシヌッッッッ」
「千紗ちゃん!?」
なんか向こうも大変そうである。それと脚に頬を擦りつけてくるな、桃華。
だがまあ……分からんでもない。鏡を見るとすっごく微笑ましい光景が繰り広げられているのだ。
「……写真撮っていいかな? 瑠花」
「もう撮ってるよ」
「早いね。行動が」
『カメラはよ』
『SNSに上げてくれ。はよ』
『百合たすかる』
パシャパシャと写真を撮っている瑠花と共にポーズを決める。普段なら絶対しないが、今なら分かる。
TS美少女が真っ先に鏡で色々ポーズを取る気持ちが。
「……いやー。こりゃ驚いたね」
「うふふ……かわいらしいですわね。食べちゃいたい」
「えっ」
「ほんと可愛いよね……私なんかより全然」
「そ、そんな事はありませんぞ! 真緒ちゃんもすっごく可愛いですぞ!」
「……なんか、頭バグりそ」
「愛ちゃんもめちゃんこ可愛いですぞ?」
「うるさい!」
向こうも向こうでてんわやんわである。なんか天然お嬢様っぽい人が怖く見えたが。多分聞き間違いだろう。
「それと桃華。強硬手段に出ないで。土下座をして私の足を持ち上げて頭に置こうとしないで。絵面が大変な事になってるから」
「お、お姉様……」
「なんか新しい扉開いてない!?」
また桃華の業が増えてしまった。誰のせいだ。俺のせいだな。
「……だめだ。ちょっと思考を止めよう」
「良かったね桃華ちゃん。責任取ってペットにしてくれるってよ」
「あ、ありがとうございまひゅっっ!」
「言ってないけど?」
『あれ? チャンネル間違えた? カイリきゅんどこ?』
『目の前にいるぞ。カイリチャソが』
『実はカイリきゅんって多才なのでは? てかボイス販売はよ』
「あ、そうだ。カイリ、折角だし宣伝しよ。パターンDで」
「……本気?」
「いいよね、あきちゃん。ふゆちゃん」
「んー? いいんじゃないかな? あとあきちゃん。そろそろ戻ってきて」
「……」
「無理かー。あきちゃん百合厨だもんね」
さっきから反応がないと思っていたが。どうやら内園と同じように意識がどこかに行っていたらしい。
「あー……あー、こほん」
「!?」
「ボイス販売、来月ちゅーには発売出来まーす! おにーちゃんとおねーちゃん達、ちゃんと買ってくれるよね? 買ってよね! 買わないと嫌いになっちゃうからね! ……いやこれ恥ずかしいね!?」
「軽率に視聴者と私の情緒を壊しにかからないで欲しいですな!? 100万貢ぎますぞ!?」
「……おお。なんか今私にもぐっと来ちゃった」
「うふふ……」
『全財産ぶち込みます』
『カイリちゃんがデフォになってる……』
『一度で三度美味しいとかカイリきゅんチャソ最強かよ』
やはり格好から入らねば恥ずかしさが残ってしまう。……まあ、それは良いか。
「本編では私とカイリの百合音声とかもおまけで入れるからね」
「初耳なんだけど!?」
「今言ったもん」
「…………限度は守ってよ?」
『うーん甘い』
『瑠花ちゃんに甘いからカイリきゅんな事が分かる』
『百合助かる』
一度ため息を吐いて。そういえばまた声が消えたなとあきふゆコンビを見る。
「あきちゃーん? そろそろ戻ってきてー?」
「あっ……あっ……」
『情緒……壊れちゃったね』
『それでも俺は愛ちゃん推しだぞ』
『同じく』
なんやかんやで盛り上がってはいるものの、愛ちゃんこと月雪のレベルもめちゃくちゃ高い。
「えーい! もういいや! じゃあ早速審査に入ります! コメントの方でアンケート取るのでみんな答えてね! という事で十五分間親睦タイムいっくよー! ゲームの仕様上、あんまり絡みに行けなかったからね!」
ヤケになったようにふゆが言って、改めて五人と話す機会が訪れたのだった。
……長くなったものの、最初の洗礼が終わるまであと少しである。
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