最後の夜は摩訶不思議

紫陽花の花びら

第1話

 今日ピアスを買った。

前から欲しかったものだ。

右に三つ左に二つ。

このピアスには不思議な力があるらしい。アハハ、まあね裏情報だから。

本当かどうかはやってみなきゃ

判らない。

成功してるとは書いてはあるけど。ネット情報だから~。

それに誰でもが買える訳じゃない。ってところもみそでしょう。売主が何に使うか聞くの。電話でね。

その理由によっては売ってくれない。私の理由はクリアしたから買えたんだけどね。

あ~ワクワクする。

何着ていこう……やっぱり赤ね。

あの人が好きだって言ってくれた

あのシャネルスーツ。


 いつものバーで待ち合わせ。

少し早かったかな。

興奮気味にお店の扉を開けると、

マスターが笑顔で迎えてくれた。

「久しぶり。元気?」

「はい! 元気です」

続いてあなたが入って来た。

「お待たせ」

「私も今来たとこ。今日は有難う」


私たちはたわいない話をしながら

そこそこ飲むと店を出た。


 私は甘えるように腕を絡ませて

「ねぇ~最後の夜なんだから……

いい? いいよね……」

涙ぐむ私に負けたあなたは、

「判ったよ。これでお終いだから。いいね」

「判ってる」


 いつものホテルへ。


 部屋に入るなり唇を貪られ、

ベッドに倒された。

「慌てないでっ、ゆっくり味わいたい」

あなたは苦笑い為ながらベッドに座り直すと、

「やっぱり似合うよ。その色。

ピアス新しい? それもいいな」

私は隣に座り、

「嬉しい……気づいてくれたの。うふふ、可愛いピアスでしょう?

触って見てよぉ。良いことあるんだって」

訝しげに見ていたあなたも、これで最後だと思う気持ちが心に隙を作る。


 両手で耳たぶを触ってくれる。


「ねえ、今ここに雪が降ってきたらどうする?」

「雪?なんだ?それ」

それでも暫く真剣に考えていた

あなたは、

「雪かぁ。良いね、おつだよ。

でも冷たくない雪お願いします」


「ああそうだねぇ~その手があるね」

私は目を閉じて呟く。

「冷たく無い雪。白い何か、マシュマロは好きでは無いので……他でお願いします。出来ればあれで。あなたはこのピアス触っていてね」


 突然照明が消えた。

と次の瞬間、ドッサリ、ドッサリドッサリと重たいものが私たちの上に降ってきた。

これでもかと降ってきた。

「重たい~苦しい~あっ~」

私だって苦しい……もうダメ。

あなたの声が、途切れ途切れに聞こえる!

「冷たいく無いって……で……」

あなたの手が急速に冷たくなる。

雪のように、氷のように。

  

 ああ~笑える。明日のニュースに出るかしら。

速報……

 ラブホテルで変死体! 

三十代男女が白い物体に押し潰され、窒息死した模様。

白い物体は、ポップコーンと断定された

あなたは私だけのもの。

幸せよ。

前に話してたよね。

ポップコーンを死ぬほど食べたい

それくらい好きだって。


だから私たちの最後は雪じゃなくてポップコーンが降り積もった。















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最後の夜は摩訶不思議 紫陽花の花びら @hina311311

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