TRPGと戦闘の話

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TRPGと戦闘の話

 TRPGってのがあります。

 まあそれが何なのかは各自検索してもらうとして、Twitterで「TRPGと言うのは戦闘ルールばっかり充実してる偏りがないか」という意見がありました。

 これに関しては事実です。

 TRPGの元祖であるところのD&Dってゲームからして「怪物がうようよいる洞窟に突撃ブッコんで金目の物を攫って行こうぜ」というゲームなので、最初っから「RPGとはそういうもんだ」というイメージがユーザーの中に根付いている側面はあります。

 ただそれ以外にも理由はあります。

 TRPGと言うのは特殊な娯楽です。ユーザーがGMとPLに別れ、GMはシナリオを用意する必要性があります。

 既に完成品のシナリオが充実してればいいんですが、そうでなければGMが自作する必要が出てきます。最近だとGMとシナリオライターを別の存在だと考える向きもありますが、ともかく誰かが作らないとシナリオが存在せず、シナリオがないとセッションを始められないのはご理解いただけると思います。システムとGMの技量によって、シナリオ無くても始められるケースはありますが少数派です。

 シナリオと言うのはお話の骨子です。コイツを進めていけばお話を体験できるぜってのがTRPGの醍醐味です。(※異論はあります)

 さて、お話の骨子ということですが、ここでちょっと考えてみましょう。


 カクヨムに投降されてるお話で、敵を打ち倒さないお話って、少なくね?


 お話にはいろいろなジャンルがあります。剣と魔法のファンタジーはまあ皆さん浴びるほど見てると思いますが、他にもホラーやミステリ、サスペンス、ギャグや恋愛、純文学。まあ文学ジャンルは山ほどありますが、やっぱりバイオレンスが出てくるものが大手を締めています。エロスですか?ノクターンに行ってください。

 これはなぜか。一言で言うと「物語を書く側としては、敵を打ち倒せばとりあえず問題解決する話の方が書きやすい」という理由です。

 生前、小池一夫は言いました「主人公に謎を追わせれば物語になる」と。この「謎」というのは推理小説でよくある「殺人犯は誰だ?」というものから「彼女とデートするためには?」というものまであります。平たく言うと主人公が段階を踏んで解決すべき問題が「謎」です。

 で、この「謎」ですが、これを「悪意を持って襲い掛かってくる生き物とかその類」にすると話が凄い楽になります。ミステリだったら殺人犯を追う途中で出てくる妨害者を殴り倒して依頼者を吐かせたり、恋愛だったら彼女に絡むチンピラをどつくとかですね。

 これがミステリだったら証拠品から可能な犯行可能な人間を絞り込むとか、恋愛だったら彼女に好かれるために良い男になるために研究するぜとか、わりと「興味ない人間にとって読ませるのは難しい」とか「作者本人に解決策の前提知識がない」という状態になります。知識がなくても何とかなる人はいますが、そういうのは想像力のパラメーターがカンストしてるヤベー奴なので除外します。


 となると、どうしても問題解決は暴力にしたほうがお話つくりの難易度は低いことになります。

 順番が逆なんですね。「錠前に対する合鍵をどう作るか」よりも「同じ領域の物をぶつけ合って強い方の要求が通る」ほうが、話として作りやすいんです。グルメ漫画なんかにありがちですね。なんか料理勝負になる奴。アレも同じ理屈です。


 人間には「戦って勝つと問題が解決したと勘違いする」バグがあります。


 実際にはそんなことはありません。実際の戦争でも、古代から現代にいたるまで、戦争は終わった後の方がめんどくさい戦後処理が待っているものです。ですが、それでも人間は「勝ったら現在の抱えてる問題が終わる」と勘違いしてしまうバグがあるんです。つまり、「戦闘は簡単にお話を作る場合に関しては非常に有用」なのです。

 シナリオライターですらそれです。

 ではその場で即興で対応しなければならないプレイヤーは?


 戦闘以外の解決法をその場で思いつける人間なんて、そうそういません。


 そうです、これは人間の知能の限界の問題なんです。平凡な人間の発想と機転には限界があるから、なんです。そしてもっとも使う判定方法こそ最も詳細な判断基準が必要になり、戦闘ルールが最も詳細になるのです。


 つまり、「TRPGは戦闘ルールばっかり充実している」のではなく「素人でも書けるシナリオを考えていくと戦闘で決着をつけるのが無難であり、戦闘が多数派であればそれを無視できない」と言うことなのです。

 それでも納得できない人は多いかと思われますが、そういう見方があると考えていただければ幸いです。

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