ゆるゆる円卓活動日記!
澄豚
第1話 過去の記憶
「今…何処に…」
自身に何があったのか、これまで何をしていたのか思い出せない。
そんなモヤっとした感情を抱きながら重い瞼を開ける。
そこには"彼に聖剣を返させた湖畔"と同じくらいの青い壁が広がっていた。
彼女はその景色に圧倒された。
この部屋が気になった彼女は起き上がる。
「起き上がる……ってなんで"私"は寝てたんだろ?」
ふかふかのシングルベッドの上で身体を起こした彼女は周囲を見渡した。
大きな窓からは眩しい太陽の光が、部屋の隅には木製のドアが1つ。他に机と椅子が置かれていた。
ベッドから降り、考え無しに机へと向かうと机上には"教科書とノート等の勉強道具"が散らかっていた。
「そっか、そういえば来週テストなんだっけ。勉強しなきゃ」
彼女は椅子に座り勉強を始めた。
右手にシャープペンシルを持ち、テスト範囲と睨めっこを始めた。
1時間が経過する頃、集中力が切れた彼女はスマホの"ラウンドテーブル"を使って友人に無料通話をかけた。
10秒ほどすると友人が電話を繋げた。
「やーやー!アスカ!学校がある訳でもないのに8時に電話かけてくるとか何かあったのかー?」
「朝から声がデカいわね。"崖家うる"さん?」
崖家うるはアスカの友人だ。
同い歳で中学の頃に出会ったのだ。
「なんでちょっとキレてるのさー!それで?朝からなんの用?」
崖家の声が大きくキレかかった頭に彼女の陽気な声が聴こえると自然と冷静になった。
そうして彼女に今朝見た夢を伝えた
「ふーん?夢の中でアーサー王伝説を見たんだぁ~!良かったじゃん」
「見たというより体験した…いや、体験していた様な感覚があったんだよ!いや、ホントに!」
「体験した…?何やってたの!?」
「気になる?気になる?」
「うわぁ~それウザイわー。でも私聞くよ」
何故か半笑いだったが聞いてくれると言うので夢について詳しく話した。
私は一国の王であった。
かの剣を引き抜きブリテン島を統一するに相応しい王として育てられ、数十年もの間ブリテンに安寧をもたらした。
私が王として即位してからは民たちは私のやり方に賛同してくれていた。
民の笑顔は自然なものだった。
作り物ではなく、本当の顔であった。
しかし安寧というものに退屈した者もいたようだった。
闘争に飢える漢達は剣を手に取り我が城へと乗り込んだ。
それが終わりへの門であった。
確か…1年がたったころだったか
ブリテンの王に属する派閥と叛逆の騎士を筆頭とする反乱軍との戦闘はさらに激化していた。
どれほど戦場を移し変えようとも叛逆の騎士は常に私の身を探していた。
それ程までに私が憎いのか…我が息子よ
私は…今だからこそ言えるのだが長い戦いの中で気が狂っていたのかもしれないな
身体は自然に最後の戦場へと赴いた。
少しばかり小高い荒廃しきった丘で私を護ってくれた騎士は討たれた。
そしてその丘に立っていたのは叛逆の騎士と呼ばれた我が息子であった。
「息子よ…何故だ、何故このブリテンを滅ぼさんとするのだ?平和に生きるに値しない、そんな国に私は作り上げてしまったのか」
「いいや、それは俺が叛逆する理由にはならない!」
「では何故なのだ!我が息子よ!」
私は強く言葉を発した。
それに息子はより強く反応した。
そして剣を抜き、獣のごとき唸り声を発しながら私の鎧ごと腹を貫いた。
私の腹から血が込み上げる感覚が襲い、吐血した。
「俺が叛逆する理由はここに1つ!アーサーを討ち、俺が真のブリテンを統べる王となることのみだ!」
「成程、モルガン…奴の仕業か。うぐっ…」
叛逆の騎士は剣をさらに奥へと刺した事で私は更に口から血を吐き出してしまった。
腹の傷からも血が流れ出している
あぁ、私は死ぬのだな…
意識が消えそうな頃に腹にあった剣は既に抜かれていた。
少しだけ息子の声が聴こえる
「俺こそが!次の時代の王となる者だ!俺の前にひれ伏せ!」
あぁ、なんと愚かなのだろう我が息子は
次第に地面の揺れが強くなるのを感じる。
なんだこの揺れは
地獄への入口が開いたのか…?
それなら…安心だ…
だが遠方から男達の叫び声が聴こえる。
「最後まで信頼してくださった我が王のためにこの命、叛逆の騎士を打ち倒すために使い果たそう!」
数十人程度だろうか
地面を鳴らして近づいてくる。
「な、何故だ!父上の戦力はもういなかったはず…どういう事だ…。…ッ!まさかこの状況を作り出すために自ら命を捨てに来たと言うのか!」
「少しばかり気づくのが遅かったな息子よ…私の……勝ちだ」
数十人程度だった戦力が倍増し彼らは叛逆の騎士を抑え、殺した。
あぁ、流石にもう意識は持たないか…
地獄でゆったりと時を待つとするか
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