龍太と虎五郎
アラガキ アラタ
第1話
龍太(りゅうた)の家と虎五郎(とらごろう)の家は隣同士。家の中から大声を出せば隣の家に聞こえるほど近い。幼なじみの龍太と虎五郎は、お互いの事を´´龍´´と´´虎´´の名で呼んでいる。中学生の龍と虎は帰宅部で、学校終わりは暇なのでいつも家の前にある猿の絵が描かれた通称´´サルベンチ´´に座って二人で話している。今日も二人はそこで喋っている。
虎五郎「あーそういやーさ、最近家にゴキブリよく出ない?」
龍太「え?全然見ないけど」
虎五郎「ウソッ!じゃあウチだけに集まってんのかなー。何か最近ゴキブリばっか出てくるから怖いんだよね。龍怖くない?」
龍太「虎んちに美味しいものが沢山あるからとか。でも今はゴキブリが出やすい季節かもね。俺もゴキブリ嫌だよ。いつも弟に退治させてるから」
虎五郎「兄貴の特権だー!、ウチもそう、姉ちゃんがゴキブリ見つけたらすぐ俺に指示出してさー。自分だけ安全な場所に逃げるんだよ。龍もやめた方がいいよー」
龍太「嫌なんだからしょうがないだろー」
虎五郎「それはこっちも一緒なんだって!、この間のゴキブリなんか、姉ちゃんの声に反応して飛んだんだぜ!?姉ちゃんそれ見て発狂しちゃってさー、もうゴキブリ退治どころじゃなかったよ」
龍太「ハハハッ!それでかー!、夜に急に隣からカン高い悲鳴が聞こえて、ウチの家族全員ビクッてなったの思い出した。でも、ウチの家族も虎んちの大声には慣れっこだから、全然気にせずにご飯食べてたけど(笑)」
虎五郎「なんだよそれ!助けに来てくれよ友達だろー」
龍太「ごめんごめん!、次から覗きに行くよ。、、ゴキブリねー」
龍太は虎五郎を悩ませるゴキブリについて、頭の中でポクポクと考えていた。
・・・
その翌日。龍太は家の冷蔵庫の扉を開けて、ゴキブリのエサになるような物を探していた。
龍太「あ、バナナ。と、ハチミツは。これだ」
龍太はその夜。ゴキブリを一網打尽するべく、誰にも被害がなさそうな場所である玄関に来ていた。下駄箱の横に置いてある脚立を使い、玄関を照らす吊り下げ型の照明に紐をくくりつけ。その先に二本のバナナにたっぷりとハチミツをかけた。
龍太「よし。準備完了。後は、明日の朝。この仕掛けに集まったゴキブリを虫取網で一気に捕まえる。これで虎もゴキブリに悩まされないだろ」
そう言って龍太は自分の部屋がある二階へと登って行った。
・・・
だが、誰もが寝静まる家の中。龍太の弟・健太(けんた)がトイレに行くために、一階へ降りると。
カサカサ、カサカサカサ、カサカサ。
階段そばの玄関口から何かが紙の上を歩くような音が聞こえる。健太が、ふと音のする方を見ると、玄関の照明がとんでもなく大きな黒いミラーボールになっていた。健太は寝ぼけ眼で訳がわからず。目をこすり、暗いのでもう少し近づいてみる。その黒いミラーボールは、カサカサと音をたてながら動く、無数に黒光るゴキブリだった。
バタンッ
健太は余りの数のゴキブリに驚き気絶する。健太が倒れた大きな音に気付き、両親が一階の寝室から出て来た。その両親の音に目が覚めた龍太も二階から降りてきた。だが、健太の元に家族全員が集まった時にはもうゴキブリの姿はなかった。
・・・
次の日。いつも通り、龍太と虎五郎はサルベンチに座り雑談していた。
虎五郎「あ、そう言えばさ!一日一回は見てたゴキブリが出なくなったんだよ!、すごい平和、安心して夜寝れてるよ」
龍太「そうか!それは良かったじゃん!」
龍太は、この間の仕掛けで数匹のゴキブリを捕獲することが出来ていた。龍太は内心、自分の作戦が見事成功したのだと満面の笑みで虎五郎の話を聞く。
龍太の母・信子(のぶこ)「キャァアァアァ!」
突然、龍太の家の中から母・信子の悲鳴が聞こえた。龍太は、母が小さな虫にでも驚いたんだろうと虎五郎に話しながら気にもしていなかった。
だが、実際には。母・信子が洗濯をしようと洗濯機のフタを開けた時。そこには、洗濯槽を埋め尽くす黒いゴキブリがカサカサと動いていた。
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