第043話 一件落着……然うは問屋が卸さない

 俺は優奈と加奈を助け出した結果、二人とパーティを組むことになった。その上、一緒に住むことに。爺ちゃんが「助けたら最後まで責任もて」と言っていたから仕方ないよな。


 言っておくが、相手からの要望だったんだから俺に下心なんてないぞ?ホントだぞ?アサシンガールズに出てくる二人のヒロインにそっくりだから眼福なだけなんだからな?


「これでよしっと」


 俺は誰ともなく言い訳をしながら、ゲス野郎たちを俺が生産した縄で縛って転がしておいた。


 この縄には実は秘密があって、俺が作っただけあって、覚醒者にも千切られる心配はない。


「それじゃあ行くか。外が大変なことになってんだよ」

「そうなの?」


 どうやら外の様子が全然分かっていないようだ。恐らく何か薬を飲まされて連れてこられて意識が朦朧としていたせいだろう。


「ああ。ここに向かおうとした時に今までのシャドウよりも手ごわい種類が現れてな。この建物に入ってくる時には校庭に入り込んでいて、届く範囲にいた奴らは倒したけど今はどうなっているか分からん」

「すぐ助けないと」

「ははっ。そうだな」


 俺の説明にすぐに助けるという選択肢が出る辺り、本当にいい娘達だなと思う。


 俺は思わず少し笑い声がこぼれてしまった。


「ん?何?」

「いや、なんでもない。急ごう」


 そんな俺の声が聞こえたらしく加奈が不思議そうに尋ねるが、俺は首を振って外に向かった。


「これは……」

「なんてことなの……」


 外ではギリギリの光景が広がっていた。


 多くの人間が体中に怪我を負い、満身創痍になりながらも必死に新しく現れたシャドウたちの相手をしている。


 どうにか線戦を維持できているのが不思議なくらいだ。このままじゃいつ崩れてしまってもおかしくない。というか、どこか一カ所でも破綻すればなし崩しに全てが終わりを迎えるはずだ。


「先に行く」

「あ、ちょっと――」


 俺はすぐに足に力を込めて危なさそうな所から切り裂いていく。


 俺の姿を見た人たちはお前は誰だって顔をしていたけど、そんなことに構っている暇はない。数分の間にその場にいたシャドウは全て排除した。


「ちょっと速すぎ」

「私達が手伝った意味もなかったみたいね」


 俺に出遅れた二人はほとんど何もすることもなく、その場のシャドウは俺が消滅させた。二人はほぼ独力で倒してしまった俺に不満顔だ。


 しかし、それには理由がある。


 勝手に鑑定するのも悪いと思ってしていなかったため、彼女たちがどの程度強くなっているか分かっていなかったので、できるだけ自分だけで対処することにしたからだ。


 助けたばかりなのにシャドウに殺されました、じゃ意味がない。


「皆無事みたいだから別にいいだろ?」

「まぁそうだけど」


 俺が宥めすかすと、ブスッとしながらも納得してくれた加奈。


「ありがとう。君のおかげで助かった」


 俺達の会話に割り込んでくる男性の声。その声は俺には聞きおぼえがない。


 振り向くと好々爺を体現したような白髭を蓄えた爺さんが立っていた。


「あ、理事長」

「理事長だって?それじゃあこの人が?」

「はい、ここでの最高責任者です」


 この人がここのトップか。


「いえ、自分はこの二人を助けに来ただけなので、そのついでです」

「結城君たちを?」


 俺は鎌をかけるつもりで二人のことを話すと、理事長は何も分かっていない風に不思議そうな表情を浮かべる。


 見た感じ嘘はついていなさそうだけど、相手は理事長。心の内ではどんなことを考えているか分からない。

 

「はい、この二人は、男達に強姦されそうになっていました。俺は加奈から連絡をもらったため駆け付けました。本当にギリギリでした」

「なんと!?それは本当かね!?」


 俺の説明に眼を見開いて信じられないとでも言いたげな表情で二人に問いかける。


「うん、そうだよ」

「はい、そいつの言う通りです」

「最近戦闘に出ている男達が横暴が振舞っていると聞いていたが、まさかそんなことをするなんて……」


 二人が肯定したことで、理事長は男達の横暴ついて話は聞いていたらしい。ただ、犯罪に関しては兎に角信じられない。そんな表情をしていた。


 自分が受け入れた避難民たちを悪し様に言われても中々受け入れにくいよな。


「彼らは今どこに?」

「保健室で縛って転がしてるよ」

「そうか。分かった。ありがとう」


 質問に答えたら、理事長は深々と俺に腰を折った。


「いや礼を言われるようなことじゃない。優奈と加奈に呼ばれたから助けに来ただけだ。二人は俺が連れていくことにした。これは俺の意志というより、二人の意志だ。勿論俺としてもあんな暴漢がのさばっている場所に二人を置いておきたくない」


 俺は頭を上げさせて二人の処遇を伝える。


「そうか……それは仕方がない。私の監督不行き届きだ。辛い記憶が残っている学校になんて居たくないだろう。それは私のほうで処理しておこう」


 内容を聞いた理事長は残念そうにしながらも後始末を引き受けてくれた。


「それと、あの暴漢たちの縄を解くなら慎重に時と場所を選ぶことをお勧めする。このまま解けば、結局この学校で一番力のもつアイツらが反省もせずに事に及ぶぞ」

「肝に銘じておこう」


 それと、一応あの糞野郎たちのことをしっかり言い含めておく。


 俺は言いたいことを言ってスッキリしたところで、二人を連れて学校から出ようとした。


「なっ!?」


 しかし、学校から出るという目的は叶わなかった。


 なぜなら空に超巨大な渦が浮かんでいたからだ。それは新種シャドウが現れた時よりも大きな渦。絶対にヤバい物を現れる前兆だった。


「あんたら急いで学校に入れ!!急げぇえええええ!!」


 俺は校庭で休んでいた奴らにすぐに学校内に避難するように呼び掛けた。

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