第031話 一度あったことは二度あって当然
さらに次の日、三人はまた出かけて行った。
「よし、今日もやるか」
俺は最後にクラフターしての生産能力の検証をすることにした。
"収納"
まずは収納スキルから検証する。
小さなものを入れて全体の容量を把握した。入るサイズは物置くらいの容量だった。
小さいな……。
マジックバッグを持っている俺にとってはかなり容量が少ない。
ただ、鑑定による説明によれば、使い続けていくうちに容量も増えていくので、マジックバッグがある現状は問題ないだろう。
六つ分のステータスとエンジュの豪運のおかげだ。
“生産“
次に、頭の中で生産スキルを思い浮かべると、現在作れる道具の名前がリストになって頭の中に表示された。
その道具一つ一つに必要な素材が記載されていた。
「お、結構作れるアイテムあるじゃん」
宝箱に入っていた素材が結構あって、それによってそこそこな数のアイテムを作れるようになっていた。武器防具に留まらず、服や家具、薬、その種類は多岐にわたる。ランクが低いせいか、まだ高レベルのアイテムは作れないようだが、それはつまりランクが上がれば高レベルのアイテムを作り出せるということだ。
今からワクワクしてしまう。
「それじゃあ何か作ってみるか。とりあえずよく使いそうな回復ポーションにしよう」
作ってみないと何も分からないので、俺は素材を結構持っていて尚且つ普段よく使うであろうポーションで試しに生産してみることにした。
脳内でリストから下位回復ポーションを選択してスキルを実行する。
―ポンッ
ワインのコルクでも抜いたみたいな音と煙と共に俺の掌の上に試験管らしき入れ物に入ったポーションが姿を現した。
「一瞬かよ」
特に何をするでもなく、収納と自身のマジックバッグに素材さえあれば一瞬でアイテムを作ることができるとかヤバすぎる。念のため、他のアイテムも作成してみたら、どれもこれも素材があれば、即アイテムが作成されるとはいかなかった。
作成するアイテムの難易度によって数秒のものから、三十分ほどかかる物まであった。下位レベルのアイテムだと多少難しくても三十分以内に作れそうだ。簡単なものは魔力をほとんど使用せず、三十分かかった物は少し多めに魔力を使った。
どうやら生産は難易度によって作成時間と使用する魔力が変わるスキルのようだ。
ランクが上がれば下位レベルのアイテムの作成時間が下がったり、より高位なアイテムを作れるようになると考えると、今は宝箱の方がいいアイテムが取れそうだけど、ゆくゆくはこっちの方が重宝するようになるかもしれないな。
"修復"
次に試すのは修復。
武器や防具には耐久力がある。これはその耐久力を元に戻すスキルだ。ただ、この世界ではそれ以外の家具や服などにも耐久力が存在して、そっちも直すことが出来るチート能力だった。
今一番耐久力が減っているスチールソードを修復する。
ただ、何も使わずに修理することはできない。勿論素材が必要だ。スチールソードの場合は当然鋼が必要だ。
幸い宝箱から手に入れていたので実行可能だった。
俺はスキルを念じてスチールソードにスチールを重ね合わせると、光り輝き出し、素材が剣に吸い込まれていき、すぐに光が納まった。
手に入れたばかりの頃のようなピッカピカのスチールソードが存在を主張している。
「数十秒程度かつそこまで魔力を使用しない」
修復スキルに関しては、素材さえあれば数秒から数十秒程度で直してしまえるらしい。
そして最後に、
"強化"
これは様々なアイテムを強化するスキルだ。
なんのこっちゃと言われるかもしれないが、強化に成功すればアイテムに+〇という表記が追加され、使用しているアイテムの性能が向上する。強化の回数を重ねるほどに〇の中に入る数字が増えて性能が上がるが、その数字が増えるほどに強化の成功確率が減る。
ただ、成功すれば、というところがみそで、失敗すると元になった武器が消失すると共に強化に使用したアイテムも全て消える。
この強化の恐ろしいところは、ギャンブルに似た部分があり、成功してしまうと、次も行けるんじゃないかと思ってついつい挑戦してしまい、全てのアイテムを消失してしまうということだ。
これはMMORPGでよくあるシステムで、多くの人間が泣きをみたスキルと酷似しているのでとんでもなく有用ではあるが、非常に危険なスキルでもある。
「あぁ……」
現に俺も一応同じアイテムがある装備で試してみたけど、三度目、四度目と成功していくと、次成功したらもっと性能が上がるんだよな、とのめり込んでしまい、たった今五度目の強化に失敗したところだ。
この強化には強化石というのが必要になるのだが、そこまで多く手に入れてなかったのでその損失はちょっと痛い。
しかし止められない止まらないということで、何度も挑戦してしまった。
「あっ……」
ただ、気づけば俺はまた視界が歪み、立っていられなくなってその場に倒れた。
どうやらまたやってしまったらしい。
これは起きたら絶対二人にからかわれるな。
そんな思考と共に俺の意識は暗転した。
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