三章 イーシュ辺境伯編
第29話
三週間後ーーーー
「「「おはようございます、ヴィクトリア様」」」
「みんな、おはよう。今日も気持ちいい朝ね」
ヴィクトリアは額に浮かぶ汗を侍女達から布を受け取って額を拭った。
己を鍛える為、また体力向上と指の筋力アップに尽力していた。
「本日も城へ?」
「えぇ、勿論」
「ヴィクトリア様、たまにはオシャレも致しましょう?」
「私達、最近はドレスも着飾る機会が少なくて寂しいですわ」
「そう言わないで。あなた達のお陰で十分、見せつける事が出来ましたのよ?」
「ですが、折角の美貌をもっともっと見せびらかさなくちゃ勿体ないですよ!」
「そうですわ!」
「そうねぇ……そういえばもうすぐ王家主催の盛大なパーティーがあるでしょう?その時は思いっきりお願いね。そろそろお肌の手入れをしなくちゃいけないのだけれど……」
「まぁまぁ!それは腕がなりますわね」
「私たちにおまかせを!」
「ヴィクトリア様を一番に輝かせてみますわ!!!」
「うふふ……!心強いわ。みんなありがとう」
「ヴィクトリアお嬢様の為ですから」
今日もヴィクトリアの部屋の前では笑い声が響き渡っていた。
長いピンクゴールドの髪を邪魔にならないように高めの位置に一つに束ねて、今日も城へと向かう為の準備をしていた。
ここ最近、ヴィクトリアの周りでは様々な変化があった。
先ずはシュルベルツ国王が、色々な表情を見せてくれるようになった。
やはり会う回数が増える度に信頼度が増していく。
「ありがとう」と言う時の可愛らしい笑顔も、真剣に机に向き合う姿も、指示を出す時の雄々しい姿にも、ヴィクトリアの心臓は高鳴りっぱなしである。
ヴィクトリアが城に通っているのは、週に五日程だ。
残り二日は侍女達を連れて街に行って自由気ままに買い物をしたり、シュルベルツ国王達を誘惑する為に己を磨き、指を鍛えつつ、ゆったりとお茶を飲みながら皆で談笑する。
そして『可哀想なヴィクトリア』に届くお茶会やパーティーの招待状。
(わたくしを見世物にしようとするなんて……ウフフ)
ヴィクトリアは都合が合う時は、あえて呼ばれたお茶会やパーティーに参戦していた。
侍女達に頼んでヴィクトリアを魅力を最大限に引き立ててもらい、会場に乗り込んでは眩しい程の美貌を見せびらかしていた。
それには不幸に泣くヴィクトリアを見て嘲笑おうと思っていた令嬢達も驚いたようだ。
「本日はお招き頂きありがとうございます。ヴィクトリア・バリソワですわ!」
「……っ!」
「ウフフ、何か……わたくしに聞きたいことがありそうなお顔をしてますわね?」
「なっ、なにも!」
「あらあら…………そんなに怯えないで下さいませ」
「ひっ……!?」
「じっくり、たっぷり……教えてあげますわよ?」
こうして人の不幸を見て笑おうとしていた令嬢達を端から返り討ちにしていた。
ジェイコブと別れて、地位を奪われたとしても、こんなにも輝きを放っている。
婚約破棄されたヴィクトリアが不幸などではないと知らしめたのだ。
そして、さまざまな屋敷を巡る事により、そこで働いているイケおじを堪能していた。
ある時はずっと家に尽くして来た独身の執事。
土いじりをして素晴らしい庭を作り出している寡黙な庭師。
妻に先立たれた先代当主……。
ヴィクトリアは挨拶もそこそこに、おじ様達との会話を楽しみまくっていた。
ヴィクトリアのポリシーとして、アピールは必ず伴侶や恋人がいない事を確認してから行われる。
間違いが起こったり、勘違いをさせない事は大前提で、暗黙のルールは守り、綺麗に遊ぶことがヴィクトリアのマイルールである。
(し・あ・わ・せ……!)
様々なイケおじ達に出会えたお陰で、常に女性ホルモンが放出されっぱなしのヴィクトリアは誰もが押し黙るほどに美しくなり、お肌はプルプルの艶々である。
ヴィクトリアが幸せを満喫している事は、何も言わなくとも伝わるだろう。
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