カレーうどんが食べたい
川崎そう
つゆのとろみは若干シャバめくらいが好き
カレーうどんが食べたい
そう思ったのは古文の授業、江戸時代の短歌という内容で「実は外国から来た江戸時代の料理」という話からである。
天ぷらはポルトガル料理から着想を得たとの記述を見、天ぷら→天ぷらうどん→うどん→多国籍合体料理→カレーうどん。と思い付いたからである。まぁ正直寒いし食べたかっただけである。
カレーは美味しい。
当たり前の様にライスに掛けるも良し。
パン生地に包んで揚げればカリカリカレーパン。
トッピングだって多種多様。
粘度ドロドロからシャバシャバ、何より辛さも千差万別。人の数だけカスタム出来る懐の広さがある。
中でもカレーうどんは唯一無二だ。そのかけうどんのダシ、昆布や鰹節、醤油といった和の旨味と、スパイスが融合した絶対的な味わいは、ライスで食べるのとは別の存在へとカレーを変化させる。カレーであり、カレーでない誰かなのだ。
早速頂こう。先ずは和風レンゲでお出汁を一口だ。この楕円形の掬いに直角に棒が付いた和風レンゲ(自称)、一見すると啜りにくそうだが、ゆっくり飲むのには向いている。まさしくとろみでアツアツなカレーうどんには持ってこいである。
して口に含めばファーストインプレッションは意外にも鰹節や昆布の出汁の旨味だ。しかしこれこそしっかりと出汁を取った証。そこに追い掛ける様にカレースパイスの刺激が来る。ターメリックやガラムマサラの辛味が、穏やかな和風出汁と合わさり、その辛味の中の旨味だけを届けてくれるのだ。
とはいえそこはスパイス。喉を通れば瞬く間に身体を温め始める。さぁ麺が食道を通る準備は万端だ。
しかしここで気を付けるはカレーうどん最大の敵、汁ハネである。割り箸をスッと麺に差し込んだら、ゆっくりと持ち上げる。
その時にカレーつゆがたっぷり絡んだ麺を視覚で楽しめば、もどかしさは微塵も感じない。
そのままフー、フーと息を吹き掛け冷まし、後は真っ直ぐに、垂直に口に含んで啜るだけだ。
つゆが飛ばない様にゆっくりと、しかし麺のコシ一口一口をしっかり噛み締めるのだ。
モチッとした歯応え。讃岐うどんらしい弾力と嚙み応え。そして咀嚼すると口内に溢れる小麦粉の香り、甘みを味わいながら、絡んだカレーの辛さが鼻から突き抜ける。
辛い。けど旨味がたっぷり。そして麺も美味しい。
さぁ具を楽しもう。先ずは玉ねぎだ。甘みが辛さによって一層引き立てられた玉ねぎは、カレーライス以上にクタクタにしなっている気がして、麺のお供に一緒に啜れる。
長ネギ。カレーうどんならではの具。中心部の粘度ある甘みがバランス役になれば、外側の辛味が別ベクトルでカレーと共に押し寄せるアタッカーにもなる。
ニンジン。甘みの絶対守護領域。うどんならではの短冊切りの歯触りが良い。
そして牛肉。今回は牛肉でお願いしたい。豚肉の脂の甘みも勿論捨てがたいが、牛肉の肉肉しい赤身の旨味が、一種のブイヨンとなってダシに溶け出す。辛さとあっさりさの融合したカレーダシに、重厚なコクが+されるのだ。
ピロピロとした切り落としの歯応えが良い。牛丼合い掛けカレーが牛丼屋に存在する答え合わせの様だ。
さぁ一通り全て味わい終えた。
後はラストスパート。
もう汁の境界線はグッと下がった。温度も幾らか落ち着いたならば、とろみが無くなる前に一気に啜ろう。カレーの辛さと、うどんの歯応えを、ペースアップして楽しむ。
グルテンとカプサイシンがハーモニーを奏でながら、身体に染み渡る感覚が堪らない。
熱い。暑い。だがもう、私のこの、国籍も汁ハネも超越した、カレーうどんを啜る手は止まりはしないのだ。
牛肉、玉ねぎ、ニンジン、長ネギ。掻き込む様に丼を持ち、最後に短いうどんを口に放り、そのコシを楽しみーーー。
麺が啜り終えた。後はこの残ったカレーつゆに…。
「半ライスを…!コレは…」
「ハイハイ皆ちゃんと並びなー!昼休み終わっちゃうよ!」
大行列…先に…買っておけば良かった…画龍点晴を…欠くッ!
終わり
カレーうどんが食べたい 川崎そう @kawasaki0510
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