『ワールド!ワード!ワー!』
福岡辰弥
プロローグ
「人間の本質とは何か!」
四月——新たなる生活が始まる入学式において、新入生たちが公式に聞いた、在校生による第一声だった。
「人間の本質——それはすなわち
つまりそれは、今年度の学園を代表する生徒による言葉だった。
双法院学園において、通常〝生徒会〟と呼ばれる集団は、正式名称を【
「
読島は
「一つは〝法律〟である!」
と、
「君たちがこの学園の生徒である理由は何だ? 何を持ってして、君たちはこの場に、この学園の生徒として立っている?
読島は突き上げた右手をゆっくりとおろし、次に開いた左手を上下に振りながら、「であれば、〝法律〟ではない〝言葉〟を何と呼ぶべきか? 法律と呼ぶほど誠実ではない言葉は? 完全なる
読島は左手を強く握りしめると、天高く突き上げる。
「すなわち〝
読島の発言に、新入生の空気が張り詰める。そう、そのために彼らはここにいるのだ。
「我々に〝法律〟を
読島の演説に、気の早い生徒たちからの感動に
新入生のほぼ全てが、この話の流れを知っている。
その
「人間として生きる上で、〝言葉〟を生活から切り離すことは不可能である。我々は対話する動物であり、
読島は講演台の中から一冊の本を取り出すと、その本を手に取り、
「少なくとも日本に生まれ、日本で育ち、義務教育を満足に受け——この学園に入学した諸君らには、日本語を理解する力がある。頭の出来が多少悪かろうが、運動能力が多少
新入生の中から
「教科書も日記も辞書も! 漫画も雑誌も新聞も! ネット記事もSNSもコメントも! 全てが〝言葉〟であり! 全てが〝小説〟である! 諸君らには今日から三年間、その貴重であり、同時に
「そして出来ることなら、
読島は掲げていた本を講演台に叩き付けると、羽ばたくように両手を広げて、マイクを介さず、肉声によって新入生に告げた。
「
新入生たちは熱狂し、
言葉によって。
物語によって。
小説によって。
「——以上を新入生歓迎の挨拶として代えさせていただく。【
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