第19話 時が経ち
それから2年が経った。
あれからわかった事はやっぱりレベル1とレベル3の魔法では、貰える経験値が違うという事だった。
それといくらやっても上がらなかった魔法レベルだが3から4にするには一度はレベル3の魔法を使う必要があるらしい。
夜中こっそりレベル3の水魔法であるヒールを使った瞬間にレベル4に上がっていたのでつい
「お!おおおぉぉ・・・」
と呟いてしまった。
あれからスクナはレベル10になり、火の魔法レベルも3になっていて、やはりと言うか俺より上がり方がかなり悪い。
スクナは文武両道になる様に“お母様と侍女”に育てられ、最近なんか俺の事を一歩引いた場所から見ていてすごい疎外感を感じるでそうろう。
本当に気づいたら調教されていた。
俺ってこんな鈍感だったっけ?って思ったくらいだ。
最初は「あれ?なんか違う様な?」
が段々と
「いやいやいや、なにその喋り方!?」
になり、最終的には、
「・・・誰?」になっていた。
何故誰って?
雰囲気が最初あった事のあるスクナとは全然違うのだ。
なんかピシッとしているのだ。
常に直立不動の姿勢で俺の一歩後ろにいる。
そして思った。
「やられた」
と。
もう無理だ。
彼女がどちらの側になっていようともう替えが利かない。
唯のレベル3の火魔法使い程度なら幾らでも換えがきく。
だが彼女は違う。
俺の為の教育を受けている。
早い話、俺の知らぬ間に前衛と後衛も出来るオールラウンダーになっていた。
そして俺とのコンビネーションも可能だ。
お父様やお母様にはあれから早いうちに弓に興味がある事をにおわせた。
故に弓と組む為の魔法訓練が施されている。
それだけではない。
彼女を見るとわかる。
使命感に燃えているのである。
遅まきながら神眼で覗いて見た。
なんとお母様が頭を下げているではないか!
と。
あれは反則だ。
例えば、学校ではいじめられて、そして家も追い出されたような人間がいたとしよう。
もし彼に(彼女に)某超大国の大統領がわざわざやって来て「君にしかできない仕事なんだ!!君だけが頼りなんだ!!!」
と真剣に頭を下げてまで頼まれたらどうだろう?
多分そいつは死地にも飛び込む。
途中からはめられている事に、騙されている事に気づいたとしてもだ。
もう後戻りは出来ないのだ。
そして俺は彼女を無下にはできない。
俺の初めての奴隷だ。愛着もある。
それに俺が勝手にいなくなった時、彼女がどうなるかを考えると諦めるしかない。
(こういう所は貴族だよなぁ・・・)
それに俺が気づいたのはだいぶ後だ。
あれから奴隷を3人買ったがどれも似た様な教育を受けているっぽい。
学習しないな〜と思われるかもしれないが、どうしようもないのだ。
「この公爵家の敷地に入り、そして暮らすならどの人間であれ最低限度の教育を施す必要があります」
と言われた。
どうしようもない。
養われている立場であれこれ文句を言うのは流石に気が引ける。
結果、ちょいちょい奴隷を取り上げられ、そして帰ってくるたびになんか顔付きが変わっていくのだ。
本当にこいつらになにをしたんだ?
頭を下げるとこまでは分かったが読唇術は持ってないので何の話をしているかがわからない。
俺は前に信用の問題についてあれこれ考えていたことがある。
だがこれはどうしようもない。
それとなく、
俺はお前たちの事信用出来ないな〜みたいな事をふんわりとした感じでいったら、
突然、最後に買ったアイナという8歳の水属性ソロ魔法師に「私の命を献上すれば、他の奴隷達は信用してくださいますでしょうか?」
って言われた。
8歳の少女に言われても少しも萌えない。
つい慌てて、「いやいやいやいや、待て待て待てって落ち着きなさいな、分かった!信用します!」といってしまった。
負けた。完敗だ。こいつらはマジだ。
という訳で、諦めた。
十全とはいかなくても十分信用に値すると判断した(させられた)。
(はあ〜・・・、
俺最近しょうがないとかどうしようもないとかばっか言ってんな・・・)
諦めた事をぐちぐち言っても仕方ないのだが、やはりと言うかなんというか諦めきれない複雑な気持ちだ。
それと、家族だがさらに四人増える予定だ
第1夫人が身籠り中、第2夫人がまた男の子、第3夫人がこちらもまた女の子、第4夫人は男の子を産んだ。
第2夫人の長男だが、2週間くらい前に俺に向かって
「おい、そこのお前!お前だよ、レイン!」
と言って来やがったから顔面に俺の必殺技ナックルファイヤー(唯の右ストレート)をぶつけてやったら泣いてどっか言った。
神眼で見たら第2夫人の所に行った後、一緒にお父様の所に行き、相手にされないのでお母様の所に行ったのでついて行って、ドアの隙間からのぞいていたら、
「貴方の教育が〜・・・」
「いえ私はレインを〜・・・
「いえならば格上の私の大事な長男を〜・・・」
「この家では第1夫人がである私の長男であるレインの方が〜・・・」
「いえ、公爵家である私と伯爵家である貴方では〜・・・」
「ここはオリオン公爵家で〜・・・」
というクソめんどくさい言い合いを続けている。
なんかお母様もそこだけは譲れないらしく熱く語っている。
仕方ないのでお父様を呼んできて止める。
簡単に言うと子供の喧嘩に口出すな!という結論になる。
結果、親の仇のように第2夫人が俺の事を見てくる。
いつか2人に対して俺のナックルファイヤーが唸る日が来るだろう。
今から憂鬱だ。
それからまた1年が経ち、俺は水魔法のレベルが8になった。
レベルは50ちょいになり、すでに一流の冒険者とほぼ互角に渡り合える(レベルだけは)までになった。
5歳になった俺はこの国では伝統である、他の子供との顔合わせをやる事になった。
いわゆる気に入った子に唾をつけておくとか、ここで初めて許嫁に会うとかである。
俺にもいるのだが、お父様に聞いたらニヤニヤして「まだ秘密だ!だが安心しろ!かなりの美女だ!ソフィーには負けるがな」
といっていた。
(いや美女はまだ予定だろ?)
と思ったので
「最後は不要ですね」
といってやった。
どう繋がる?ってどうも繋がらんさ、ただ何となくむかっ腹にきただけだ。
ガタッという音を背中に受けながら今日も俺の神速は冴え渡っている。
明日は俺の人生初の城壁外への外出である。
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