第15話 購入
色々回り最後に奴隷館の前にやってきた。
(ああ、さすがに緊張するな。心臓がバクバクして無茶苦茶痛い)
ここに来るまでの間に何度も深呼吸をして自分を落ち着かせる。
そして少しの間打ち合わせをして門の中に入る。
奴隷が逃げ出さないためか、他の店と違い店構えがちょっと大きく、そして門と家の間には柵がある。
この世界での奴隷は全員、逃げ出さないように魔法が込められており、逃げ出すと死にはしないが、体に呪印のようなものが浮き出て一目瞭然になる。
ゆえに、もうまともな方法で街や村に立ち入ることができなくなり、裏稼業でしか生きられなくなる。
解除するには主人に頼むしかなく、言うまでもなくそれは、絶望的だ。
(まあ、それでも逃げる奴は逃げるがな)
やはり、商品が高いだけあって、武器屋とかよりも人がいない。
いないわけではないがやはり皆、身なりがいい。
冒険者と思われる人間ですら、街中によくいたモブ共とは違うと一目でわかる服装をしていた。
他は貴族か豪族だろう人たちが担当の人と話し、恐らく彼らの要求に合う奴隷を見定めている。
そうして他の人を眺めてると奥から身なりのいいひとがでてきて、
「これはこれは貴族様がた、ようこそ当店においでいただきました
さ、さ、どうぞこちらにお掛けになってくださいませ」
と、空いているソファーに連れられる。
俺は抱っこされメイドの膝の上に座らせられる。
そして奴隷商がチラッと俺を見て、値踏みした。
貴族であることは言うまでもないだろうからどれ位の格だろうか?という事だろう。
まあすぐに公爵家だとわかるだろうがな。
公爵領でこんな幼い男の子が店に来るなど他の領地の人間ならあり得ない。
「オッホン、では、早速ですが当店にはどの様な奴隷をお探しに来られたのでしょうか?」
と、メイドを見てそういう。
騎士は邪魔なので外で待機だ。
「はい。本日はレイン様の為の奴隷を買いに来ました。レイン様の専属の侍女見習いを付けさせようかと思いまして」
「左様ですか?」
例は少ないがあり得ない話では決してない。
事実、うちの城でも奴隷が何人かいる。
問題は、
「ひとつ質問をしてもよろしいでしょうか?」
「はい」
「見た所其れなりの格の貴族様とお見受けしますがそれ程のお家であれば他の男爵位などから三女などを貰い受け、お付けするのではないでしょうか?」
当然の疑問である。
もちろん来る前に話し合ってある。
「はい。実は私は平民出身でありまして侍女見習いが私より格上ですとまともな話し合いや教育ができないのではないか、という旦那様の意向でして。
ただそこらにいる平民出身者では信頼にかけますゆえ、ならば奴隷にしようかと思い、こちらに伺いました」
「なるほど……、ですが大変申し訳ないのですが貴族様に仕えられるほどの奴隷は当店にはちょっと……」
と少し口籠る。下手に適当な奴隷の押し売りをして悪評が出たら困るからだ。
「教育しますのでそこら辺はお気になさらず、ただそうですね、出来ればレイン様より少し年上がいいかですね。
五歳から八歳までの種族不問で全員呼んでくれませんか?」
「はい!種族不問ですね!畏まりました!少々お待ちください」
そして、扉の向こうに消えた瞬間に、俺は紅茶を飲む。
何も言ってないのになんか喉が渇いたからだ。
こういう場が既に緊張させる空気みたいなのがある。
やはり人を売り買いするからだろう。
それからしばらくして奴隷商人と十人くらいの子供が俺の前に並べられる。
「お待たせいたしました、ご要望に合う奴隷はこちらになります」
と並べられた子供達をのステータスを一人ずつ見ていく。
魔法才能持ちは二人でそれぞれ火のソロと土のソロだった。
スキル持ちは三人でそれぞれ鑑定とHP上昇率小とSTR上昇率中である。
レベルは全員どっこいどっこいで3から8までだ。
「スキル持ちと、魔法持ちはどの子ですか?」
と、一応聞き、当然同じ子供に神眼で見た内容通りの説明をされる。
(流石にこの風貌で誤魔化されはしないか。
貴族を騙したら後でうるさいからな)
「デュオやダブルはいないのですね?」
「はい、大変申し訳ないのですが、基本的にデュオやダブルの奴隷はまずその町の貴族様に紹介するのが決まりになっておりますゆえ、現在は残念ながらこの商館には一人もおりません」
とメイドに奴隷商が説明をする。
(まあ、そうなるだろうな)
実際に神眼で見てもいない。
デュオ以上は貴重な戦力となりうる可能性があるため、大抵の都市では、まずそこの城主に持っていくことが強制される。
破ると罰金が課されるため守っている。
「そうですか、わかりました。
では、魔法使いの子供のお値段をお聞きしてもよろしいでしょうか?」
「はい! では、まず火魔法を使うこちらの娘ですが、こちらはここに来て日が浅く、あまり教育が行き届いていないため金貨十枚でお譲りいたします。
土魔法の子は大変気立てもよく、また、魔法レベルもレベル3なためこちらは金貨四十枚となります」
なら火魔法持ち一択だな。
んな金ないし。
「ちなみに他の奴隷の値段をお聞きしてもよろしいでしょうか?」
そう聞くと奴隷商人は一度頷き値段を順番に言っていく。
スキルなしの男の子は銀貨八枚から十二枚
スキルなしの女の子は銀貨九枚から金貨一枚と銀貨八枚
HP上昇率小のスキル持ちは金貨一二枚
STR上昇率中のスキル持ちは金貨二五枚
鑑定持ちは金貨五十枚だった。
「鑑定持ちが高い理由は?」
「高くても売れるからですね。
鑑定は毒や状態異常などもわかりますから、需要はいくらでもありますゆえ、このお値段となっております」
と、予定にない事もきいてくれる。
無駄金は避けたいところを汲み取ってくれる。
(ふむふむ、まあいらんがな)
神眼あるし。
「そうですね……」
と言って俺の事を見てくる。
予め魔法才能持ちがいい事は伝えてある。
なので頷く。
「ええっと、レイン様、本日はいくら持ってきていらしたでしょうか?」
と、俺に問いかけてくる。
俺は無言で持っていた小銭入れみたいな財布を逆さにして、金貨五枚を出す。
「金貨五枚ですね。
これで火魔法才能持ちを何とかならないでしょうか?」
「金貨五枚ですか……。
そうですね……」
(すぐには断らないところは流石だな)
しばらく沈黙が流れる。
三歳ちょっと位の赤ん坊が奴隷を買いに来ているのだ。
これからまだまだ長い付き合いである。
身なりは明らかにいいし、後ろの侍女も明らかにただの侍女ではない。見た瞬間に精鋭とわかるクラスの騎士を四人も連れてきた事はさっき確認した。
間違いなく、かなりの身分の貴族の子だろう。
この赤ん坊に金貨5枚の融資は得か損かを頭の中で決めている。
そして、
「かしこまりました!
では、今回は特別に金貨5枚にてお譲りいたしましょう!」
「ありがとうございます」
こうして、俺は魔法才能持ちの奴隷を手に入れたのだった。
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