第14話 街を見に行く

 3歳になり歩けるようになりました。


 というわけで、外出をしてみようと思う。


 いや本当は半年位前から全然歩ける様になっていたのだが歩く練習とメイドがうるさかった為今日になった。

 お父様やお母様に確認すらしていない。


「お父様、街に行きたいのですが許可してもらえますか?」


「ふむ?う〜む、しかしな……。、

 よし! 騎士を十人程つけよう」


(んないるか!)


「いえ、二人くらいで結構ですよ。

 そんなたくさん引き連れたら逆に目立ちますゆえ」


「いや、しかしお前にもしものことがあれば」


「 大丈夫ですよ、お父様。

 僕の顔を知っている人間など殆どおりませんから。」


「いや、そういうことではないのだが……」


「?」


 しばらく考えてようやく何を心配しているのかがわかった。


(奴からの暗殺か)


 だが流石に早過ぎると思う。外に出たのがバレてもまだ大丈夫だろうと、俺は思う。


 お父様も同感らしく、


「うむ、では、侍女と騎士四名を連れて行くことを条件に許可しよう。

 それと侍女が行くなと言ったところには近づかないこと。

 周りの城壁の外に出ないことを約束しなさい」


「はい! わかりました! では行ってまいります」


「気をつけるように」


「ふぁ〜い」


 ガタッ


 ふざけた返事をしたら背中から椅子を慌てて引く音がした。


 というわけでお城のような家の門前に来ていた。

 しかも侍女一人とごっつい騎士のような格好をした兵隊四人と共にだ。つうか騎士だ。

 中身が実は女性、という事もなく普通に男の人族だった。


(ああ、やっぱり緊張するな……。

 俺の人生初のお外だからな〜、楽しみでもある。

 地図も当然頭に入ってる。どこに何屋があるかくらい記憶してるぜ!)


 そろそろ出発だ。


 ちなみに馬車での送迎は断固拒否してやった。

(いや、初めてのお外でそれはないだろう)


 言うなれば初めての京都旅行をタクシーで観光するようなものだ。

 いないとは言わないが、俺が知りたいのは街並みだ。

 本では分からない事がある。

 ゆっくりと自分の足で見て回ることに意味があると俺は思う。


 初めて外に出る時には言おうと思ってたことがある。

 別にただのカッコつけだ。

 景気付けだ。

 俺がやりたいのだ。

 前世で間違えて、失敗して、絶望して、諦めた人生を、またやり直すのだ。

 だからこう言いたい。


「さぁ、始めてみようか、僕の人生を」


 と精一杯の期待を込めてそう呟く。







 とりあえず街をぶらぶらしてみた。

 外からはほとんど見えなかったがやはり活気があっていい街だと思う。

 白を基調とした城がドーンと真ん中にあり、それを囲むように様々な色の屋根とレンガ造りの街並みがある。

(こういうのを見ると別の場所に転生したという気分がでてくるな〜)

 異世界に転生した気分にはならないがな。


 数多くの異種族がちらほらといる。

 一番多いのはやっぱり人で次に獣人族でその次がいわゆるドワーフである炭鉱人族だ。エルフは基本的に、自分の里からほとんど出てこないためやはりいなかった。


 すげーと最初のうちは興奮していたのだが、段々と視線が痛くなってきた。


「やはり目立つな……」


 騎士達が物々しい雰囲気で俺の周りを囲っているため、やはりどうしても目立ってしまうのだ。


 本当は一人で歩くつもりだったのだが、メイドが手を繋げとうるさいので、メイドが若干腰を低くしながら俺の横を歩いている。


 そんなこんなで武器屋に行ってみた。

「これはこれは貴族様の御子息様でございましょうか?

 よくぞ我が店にご来店になられました。

 本日はどの様な武器をお探しで?」


 とメイドを見ながら話す。

(ウッ……)

 突然話しかけられたから思わずびくついてしまった。


 六人の中で俺の服は絹製で高級品なため一眼でわかってしまう。

 まあそれだけじゃなくても騎士がいれば最低限貴族だろうと予想はつくが。

 俺はメイドの耳に口を当てゆっくりじっくり見たいので下がってもらう様に言う。


 ちょっと驚いていた様だが

 すぐに気を取り直して、

「畏まりました! では、何かご用があればお申し付けください」


 と言って下がる。


 俺の目当ては弓だ。

 やっぱり剣や槍でぶつかり合うのは遠慮させてもらいたい。

 ならは、弓か杖だ。

 杖は魔道具屋に売っているため弓だけを見に来た。

 まあ、知ってたけど当然魔弓みたいなのはない。

 お父様からお小遣いとして金貨五枚(節約すれば五人家族が二ヶ月は食べていける金額)もらっているので鉄の弓くらいなら買える。

 だが、それくらいのものなら当然城に常備してあるため買うわけがない。


「うん」


 と納得し、店を出る。


 次に魔道具屋に入る。(また店主らしき人が挨拶に以下略)

 今度は心の準備をしていたので大丈夫だったと一応言っておこう。

 問題ないったら問題ない。

 メイドの手をギュッと握っていたなんて事実はない。


 武器屋と違って地球にはないものなので心が躍る。


 特に神眼スキルで効果がわかるので値段との釣り合いが一目瞭然である。


 木の札に値段が書いてあるのだが、可変らしく書いては消すを繰り返したような跡があった。

 基本、HPを一瞬で治すポーション類はやはり高い。

 徐々に傷を治す傷薬類や薬草類の倍の値段になっている。

 そして杖だがこちらもやはり城に常備してあるので代用可能なものしかなかった。

 他にも、いろいろ見ていたのだが、やはりこれといったものがなかった。

 まあ、せいぜい店の奥に飾られていた、レベル9の光魔法の魔道書くらいだ。


 あれ欲しい。

 だが大金貨五百枚だ。

 買えるわけがない。

 いや、正確にはやろうと思えば買えないこともないが……。


 隣でメイドがこちらをガン見なためやめた。


 その後冒険者の集会所というかギルドに入ってみようとして止められた。

「ここは荒くれ者たちの集まりです。

 もしものことがありますので入るのをおやめ下さい」と、言われた。


(入ってどんな感じか見たかったのだが……)

 逆らってもいい事ないので、諦めた。


 次は、奴隷館である。

 最初は止められるかと思ったのだが、別に止められなかった。

 社会勉強の一環だろうか?


(やっベー、興奮してきたー!!)

 と、興奮しながら店の中に入っていった。





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