姉の高校の制服で卒業式

くわがた

第1話 家族との話

 小学校卒業を控えているとき、僕【佐藤さとう わたる】はお母さんに呼び出された。

 それは、卒業式のときの衣装の問題だった。

「渉の卒業式の時中学校の制服着てくれない?」

僕の通っている小学校の卒業式は中学校の制服でもスーツでも袴でもいい学校だった。

 しかし、うちは貧乏なのでスーツを買うお金や、はかまを借りるお金がない。そのため、親はやっとのことで買った中学校の制服を着させようとしていた。

 しかし、僕はその制服を卒業式に着ていくのは嫌だった。なぜなら、その制服は詰襟だったからだ。

 そのため、僕はどうにかできないかをお母さんにもう一度聞いてみることにした。

「お母さん、そこを何とかできない?」

「うちは今お金がないから無理」

僕はそう言われて「やっぱりか」と思った。

しかし、お母さんはとんでもないことを言い出した。

「もし詰襟が嫌だったら、美由紀みゆきから制服を借りるっていうのは?」

きっと、お母さんは本気で言ってはいないと思ったが、僕はその案を採用することにした。

ちなみに、美由紀は僕の姉だ。また、高校3年生である。そして、僕は姉の美由紀と仲がいい。そのため、事情を話せばきっと制服を貸してくれると思った。

 早速僕は姉の部屋に行った。

「美由紀、今度僕の卒業式の日に美由紀の制服貸してくれない?」

「いいけと、なんで借りるの?」

「実は卒業式の日にスーツとか買ってくれないから、その代わりに着たいな~と思って」

「それならいいと思うけど、サイズが合わないと元も子もないから、一回着てみたら?」

僕はそう姉に言われたので、一回着てみることにした。

「一回着てみる」

僕がそういうと姉は制服を準備してくれた。

 そして、僕はそれを自分の部屋に持って行って試着した。

 すると、サイズは少し大きめだったが、変に見えないくらいのサイズ感だった。

そして、見栄えも良かった。

ちなみに、この制服はブレザータイプだった。

 僕はそれを着たまま姉の部屋に行って、姉に僕が姉の制服を着た姿を見せた。

「どんな感じだと思う?」

僕が恐る恐る聞いてみると、美由紀は「渉めっちゃ似合ってるよ。もしかしたら私よりも似合ってるんじゃない」

「ありがとう」

「また卒業式になったら貸してあげるよ」

「ありがとう」

僕はそう言って自分の部屋に行って、姉の制服を脱いで、それを姉に返した。

 僕は卒業式の服装が詰襟だけは避けれると思うと嬉しかった。

 そして、あとは、卒業式を待つのみとなった。

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