③女神を狩るものたち
モズク
■プロット
〇参考作品:
エルフを狩るものたち
(タイトルパロ元)
〇世界観:
・舞台は現代(2022年)から約800年後の地球。
・現代文明はすっかり滅び、本作の舞台となる元日本の町には“ヤノル”という長耳に1本の尻尾を生やした人型の種族が村を構えている。
・元の人類は800年前に起きた『全転生』によって、強制的に異世界へ転生させられてしまっている。
・まず転生とは地球から少人数の人類を女神が選びだし、異世界へ戦士として送り込むことである。
・1人の女神がその役を担っていたが、女神とはそもそも”銀河を成立させるための機械”であり無感情に役割を果たすだけの存在である。
・『全転生』はその女神に深刻なエラーが発生した結果、無差別に全人類を殺傷・適当な異世界へ転生させてしまった事である。
・『全転生』の過程で女神は自らの存在を無数に複製し、平和に暮らす人類の元へ舞い降り一方的な虐殺を開始したのだった。
・それから800年。地球人が居なくなった地上では、未だに地球人を転生させるために無数の女神が彷徨うようになった。
・ヤノルはそのエラーの一環で、逆に異世界から現実の地球に送り込まれてしまった民族である。
・彼らが地球にやってきたのは西暦2600年頃の事である。
・ヤノルの民族は元の異世界では繰り返し為政者に迫害される民族だったため、「女神は自分たちを救ってくれた」と考え信仰の対象としていた。
・しかし、とあるヤノルの民が偶然女神の死体を見つけて村に持ち帰った所、100年は豊かに暮らせるほどの恵みを得られた。
・「女神は危険だが、殺せば豊かになれる」そんな考えが蔓延するまでに時間はさほどかからず、信仰の薄い活きのいいヤノルの若者たちによってギルドが創られた。
・それがヤノルの“女神狩り”の始まりである。
・2750年頃から始まった女神狩りだがなかなか上手くいかず、ヒロインの両親も2812年の第3次女神狩りで命を落としている。
・本編では2822年の第4次女神狩りが描かれている。
〇主要キャラクター
■門馬友彦:主人公
・首元までボタンを留めた黒い学生服
・片目が隠れるほど長い前髪、後ろ髪も長いがヒモで結んでポニーテールのようにしている。黒髪。
・中肉中背、身長は151㎝と低め。
・全転生の2年前に転生させられ、それから17個の異世界を救ってきた。
・転生前はヒステリーな母の期待に無感情に応え続ける人生を送っていたが、事故で死に初めて女神と出会った時に『初恋』を経験。あまりの衝撃に母親の名前すら
忘れるほど女神の美しさと佇まいに心酔。自分の全てをかけて女神の命令に従うと決意した。
・今までは現代知識と元々高かった身体能力で世界を救ってきたが12個目の異世界(SF。攻殻機動隊のような世界)で力不足を感じ、全身の8割をサイボーグに改造している。
・ビジュアルは学生服を着た中学二年生だが、表情筋は動かず、声は喉付近の皮に包まれたスピーカーから話す。食事は普通に口から食べる。
・サイボーグになってからの好物は原油で、どんな食べ物にも原油をかけて食するために周りからはげんなりとした目で見られる。
・基本的には無口で無駄な事はしない性格だが、上記のような食事を堂々とする天然ボケな一面も。
・本編開始時は身体の故障により上手く戦えなかった。しかし先述の原油をたっぷり体内に入れ込む事で、サイボーグの肉体をフルに扱えるようになる。
・地球の娯楽物(小説や漫画、イラスト)が下手にのこっているせいでヤノルの民たたちは門馬を「ミサイル」や「レーザー」を放つサイボーグだと勘違いするが、実際の姿は『黒い金属の獣人(ライカンスロープ)』の姿をしており爪を使った徒手格闘と、対象の振動率を強制的に合致させ分子を分解させる牙等で泥臭く戦う。金属の尾が2本生える。その尻尾にも振動率を操作する特性がある。
・実は以前にヤノルの民たちの居る異世界を救っている。しかし地球に来ているヤノルの民にとってそれは50年以上前の出来事で、しかも門馬の直接の活躍を知る者は殆どいない。
・だがヒロイン・アルニカの母親だけはその姿を目撃していてアルニカに語り継いでいた事が物語の鍵になる。
台詞イメージ:
・(理解に苦しむが、ここが地球であると納得するしかないようだな……)
・「言語はラーニングした。文化もだ。さほど複雑なモノでもないので、僕ならすぐ馴染めそうだ」
・「最高に美味い原油だ。コクが効いていて……こんなに美味いものは久しぶりに飲んだ気がするよ」
・「ギオ魔粒子開放。バイオニックアーム、レッグを最大出力。目標、女神を語る不届き者。──では状況を開始する。」
■アルニカ:ヒロイン
・”ヤノルの民”の少女。他のヤノルと同じく、エルフのような長耳とふわふわの尻尾を持つ。
・桃色の髪でショートボブ、金色のカチューシャでトップをまとめている。年齢は15歳。
・おどおどとした性格で、どこか血色も悪そう。うっかり余計な事をしてはギルドで怒られて「びゃあ……」と何とも言えないうめきをよく漏らす。
・身長が176cmと高めで、自分より小さい門馬をちょっとかわいいと思っている。
・衣装はポンチョ型のヤノル民族衣装
・ヤノルの女神狩りギルド『フォリスカ』に所属し、記録係を担当。本人は女神についての情報をまとめたいが、もっぱら食べ物や武器の在庫等の管理をさせられている。
・門馬を森の中で発見し、ギルドへ連れてくる。
・6歳の頃に第4次女神狩りで両親を失っているが、彼らの死が女神についての見識を広げたことに感銘を受けており、自分も何かを残して死ねる人間になりたいと思った結果、女神の姿を描いて記録する事や情報をまとめる事に並々ならぬ執着心を抱いている。
・上記の性格が発展して、常に手帳とペンを片手にどうでもよいような事も手帳に記録するメモ魔な側面も。
台詞イメージ:
「も、もんまさんはどうしてそんなに目がキラキラしてるんです? どうして耳がそんな短いんです? あれれ、尻尾……尻尾がない。き、斬れちゃいました……?」
「神様は信じていません。でもお母さんは英雄には会った事があるって話してました。……そ、そっちは信じてたり、します」
「……その、ご飯に黒い……ガソリンでしたっけ……それかけたら本当に美味しいんですか? わ、私も挑戦してみます。こ、これも記録です」
「びゃああっ……まじゅい」
■女神:敵
・元々は地球人に能力を与え、異世界に送り込むシステム。
・とあるエラーによって自身の肉体を無数に複製、総動員で地上に降りて人類を虐殺する「全転生」を引き起こす。
・800年後の現在では「地球人を転生させる」という目的のみで活動しており、各地域の様々な場所を根城にして潜んでいる。
・長い年月を経て、それぞれの個体は色々な姿を獲得している。『フォリスカ』が長年かけて追っている女神は四足歩行の獣タイプで、首のないトカゲのような見た目をしている。首の断面にはかろうじて人型を保っている女神の胸から頭までが埋め込まれている。
・女神は普段は目で認識できず、女神側から接触されることで初めて女神を認識できる空間に行くことが出来る。
(要はなろう系でよくある”女神と会話し、チートを与えてもらう謎の空間”)
普通の獣と異なり、やや狩るまでの手順が複雑である。ざっと以下の通り。
1.地球人の匂いがするものを身に着け、女神の潜む地域へいく。
2.女神からの接触によって女神の管理する空間へ引きずり込まれる。(この際、周囲50mまで無差別に空間へ引きずり込むので仲間を連れていくことも可能)
3.女神と対面。既に言語機能は失われている個体が多いので、大抵は即戦闘となる。
4.弓矢や武器などの通常武器で動きを悪くする程度のダメージは与えられるが、どこかに埋め込まれた女神の肉体を引きずり出して心臓を破壊しなければ致命傷は与えられないので、ソレを狙う必要がある。
〇物語構成
プロローグ:
事故で命を落とした門馬。目覚めると神秘的な花畑が広がる空間。その中心に立つ女神から『異世界を救う』事を命じられる。娯楽も恋もない生涯を送っていた門馬にとって女神の美しさは衝撃的で、彼女のためなら何でもできると思い二つ返事で応じた。
一つの異世界を10年かけて救うと、再び女神の空間へ。同じく『異世界を救え』と命じられ、再び彼女に出会えるのならとまたも二つ返事で応じる。
そんな事を数百年繰り返し、あまつさえ11個目の異世界生活では力不足を感じ、自らの身体をサイボーグに改造してまでも女神の命令に従う門馬。
そして17個目の異世界を救ったのち、再び女神の空間へやってきた時に異変が起こる。
女神がどこにもいないのだ。それどころか空間の花々は枯れ果て、空にはガラスのひび割れのような歪みが生じている。
「これは一体なんだ」という叫びに応える者はなく、ドス黒い雨が降り注ぎ門馬の身体を溶かしていく。崩れていく身体に死を覚悟する門馬。やがて意識も失ってしまう。
彼が目を覚ますと、そこは森の中。また異世界に送られたのかと思い、改造された身体の機能を使ってどのような異世界なのかを把握しようとする。
しかし故障しているようで上手く機能しない。ボロボロの身体を引きずって周囲を探したところ、『落石注意』と書かれた錆びまみれの看板を見つける。
これは”日本語”だ。つまりここは──。
それに気づいた瞬間、茂みから声をかけられる。ピンク色の髪に、長い耳、二股のしっぽの少女がこちらを恐る恐る見つめている。
異世界人。だがどう考えてもここは日本のようでもある。困惑しながらも門馬は状況を把握するため、ヤノルの少女・アルニカとのコミュニケーションを試みる。
アルニカの話、ところどころに残る日本の文面の痕跡からここが300年後の地球で日本であることを認識する門馬。
これからどうしたものかと迷う門馬に対し、アルニカはギルドへと連れていくという。そこでなら門馬の欲しがる情報が得られるかもしれないと。
第1章
ギルド『フォリスカ』の集会場には『ギルド長』のコルマ、近隣の村の長であるイデリコという男たちが居た。他にも60名ほどの屈強な戦士たちが。
異様な空気の中、門馬の処遇については女神狩りを終えてからだとコルマに言われ、さらに衝撃を受ける門馬。
女神に対して心酔していた事もあり、「なんて罰当たりな事を」と激昂しそうにもなるが必死に感情を抑える。
聞けば女神とはこの地を荒らす存在で、しかし狩る事が出来れば生活を豊かにする事が出来るという。
今日は記念すべき4回目の女神狩りの日だという。
女神狩りとやらに参加すれば、女神と会えるかもしれない。自分の力を説明して狩りに参加しようとするが、この世界に来た時に負った損傷によって満足に立つことすらできない様子を見かねて断られてしまう。
空っぽのギルドでポツンと待つ門馬とアルニカ。実はアルニカも女神狩りに参加したいという本心を聞き「必ず役に立つので連れて行ってくれ」と頼みこむ。
アルニカも押しに弱く頷いてしまう。
女神の狩場は旧市街。元々はそれなりに栄えた町があったのだろう。しかし長い年月によって崩れた家屋、崩れかけのビル、そしてそのビルとビルの間をつなぐように木々の蔦が伸びていた。半分森化した都市といった様子。
おかげで門馬たちもバレずに現場へ忍び込めた。そして討伐隊による女神との会敵プロセスを経て、女神空間へ引きずり込まれる門馬たち。
どうも門馬の知っている女神空間とは異なり、ビルなどはそのままで空だけが黒い雲が凄まじい速さで流れていく場所。
討伐隊の目の前に女神が居た。首のない巨大な爬虫類のような出で立ちの化物。しかし首の断面には胸像のようになった女神が邪悪に埋め込まれている。
それを見た瞬間、門馬の中に再び怒りが生まれる。「あんな禍々しいものが僕の信じてきた女神であるはずがない」思わず飛び出そうだったが隣のアルニカが本に女神の絵を描いている事に気付き、勢いがそがれる。
彼女はこの状況の中で誰よりも冷静に女神を観察し、情報を手帳にまとめていた。それに関心する門馬だったが、彼女の悲鳴によって意識が戻る。
討伐隊が無残に蹴散らされている。弓や槍などで身体の表面に傷をつける事は出来ているようだが、とてもかないそうになかった。
涙を流すアルニカだがグッとこらえて、絵と女神の動きをメモする作業に戻り、女神の動きを詳細に記す。次はもっと被害が減るようにデータを残すのだと。
自分に出来ることを必死に行うアルニカの姿に心を動かされ、女神を狩ることを決意する。
「約束通り、役に立とう」
一時的に強制的に力を開放させ、凄まじい跳躍力でもって女神の元へ迫る門馬。
コルマが女神の手に薙ぎ払われるすんでのところで、世界観にそぐわない学生服の男・門馬が立ち塞がる。
女神の掌を片手で掴むと柔道の如く遠くのビルへ投げ飛ばした。
コルマに「自分がアレを倒す」と言い、他の討伐隊を避難させる。
ビルに身体をめり込ませる女神の元へ、跳躍して近づく門馬。しかし女神の背から伸びる無数の触手によって空中で身体を刺し貫かれてしまう。
だが門馬は痛みを感じる様子もなく「邪魔だ」と囁く。凄まじい速度で身体を回転させ、触手を引きちぎる。着地した門馬はそのままクラウチングスタートで女神の元へ飛び込む。そして爬虫類のボディから、女神の身体を強引に引きはがした。
勝利である。水を打った静寂の中、女神の身体をアルニカの元へ持っていく。
「スケッチならもっと近くで見た方がいい」
瞬間、討伐隊の面々が遅れて勝利を認識して歓声をあげる。
第2章
女神の肉体は村の「灯り」や、料理を作るための「火」、水場の浄化など生活に関する殆ど全てを可能にした。女神は実世界でいう電気の役割を果たすのである。
これでヤノルの民は再び100年の安寧が約束されたことに歓喜する。
門馬は今後について、女神の命令もない以上さらに女神の姿を騙る偽女神たちを狩り続けたいと願う。アルニカもそれに賛同するが、『フォリスカ』は半永久的に廃止されるとコルマから聞き驚く門馬たち。
もちろん更に狩って女神の肉体をストックできるとより良いが、そのためだけにこれ以上犠牲は出せないとのこと。
アルニカもその考え方には同意しているはずだが、どこかもやもや。
「どうしても続けたければ自分で女神を狩るギルドを作ればいい」と言われてしま
う。
門馬は一人でどうにかなると思い了承の旨を伝えようとしたところ倒れてしまう。
エネルギー切れだった。これでは女神を狩れないと悔む門馬に対してどうすればよいのか尋ねるアルニカ。
門馬の身体は少量の油によって動く事が出来る。それは町を豊かにする女神のエネルギーでも代用は負荷であった。
食事からとれる油で意識を保つことぐらいは可能であったが、戦う事は出来ない。出来れば原油が必要だという。せめてプラスチックを集めてくれれば精製することも可能なのだが…大量になければ意味がない、と門馬。
もう終わりか…そう思った時、アルニカを含めたギルドの面々は門馬のためにプラスチックを集める事を快諾する。
女神の脅威が去った旧市街地で、アルニカはギルドメンバーたちと「旧時代」の道具集め。地面を掘りまくりプラスチックに該当するものをみんなで集める。
門馬に対してはみんな感謝の心を持っていたので、嫌がる者もなく必死に集め回った。
アルニカも同じくペットボトルのキャップなど必死に集めてながらも、キラキラした目で旧市街の色々な物をメモしまくる。ビルの中にある地下駐車場へ入る。古代の遺跡かな?と思う彼女だったが、その最奥で元地球人の白骨死体を見つける。しかも母親と子どもの物らしい。
この人たちも女神に殺されてしまったのだろうか。遺体の殆どは年月によって風化されているが、時々こうして見つかる事がある。
自分も両親を殺された。この人たちも女神に殺されたのだろうか。やはりこの世界に救う女神は誰かが狩りつくさなければならない悪なのではないかと強く思うようになる。
門馬はベッドで寝かされていたが、その間ヤノルの子どもたちとお話。色んな異世界の話をするが子どもたちはホラ話として聞く。子どもたちから門馬がガソリンを飲むことを指して「サイボーグ?」と聞かれ、「似たようなものだ」と答える。
(ヤノルの人たちは残った地球文明の書籍や文化を見て、そのような単語を知っていたりする)
ギルドメンバーはプラスチックを集め終える。そして集めたプラスチックを超高熱で熱し、原油の精製に成功する。
木彫りのカップに入れたそれを飲ませると、たちまち門馬は元気を取り戻す。
これで騒げるな!とギルドメンバーたちは宴会を開始する。
門馬も食事にたっぷり原油をかけて食ったり、騒いだり、アルニカとの仲をはやし立てられたりとどんちゃん騒ぎ。こんなに楽しい夜は久々だ。
そんな風に騒ぐギルド集会場内に6人の客が。5人は全身を鎧に包んだ戦士(以後、鎧兵)。一人は金色の長いサイドテールの少女。人間ようだが、蛇のような鱗が顔についているので異世界人。
空気が凍る中、サイドテールの娘は『霹帝都市アラプテル』のキャラバンを名乗る。どうもこの辺りの女神を狩りに、ヤノルの住処を訪れたという。
ヤノルの民以外の異世界人。しかも女神を狩る事を生業にしているらしい存在に衝撃を受ける面々。
それを聞いたヤノルの村長は宴会をお開きにして、キャラバンたちは今晩だけの宿をあてがった。詳しい話は明日。先ほどとは打って変わって重々しい雰囲気であった。
第3章
翌朝。集会場に集められたキャラバンと門馬とアルニカ。
村長は彼・彼女たちにヤノルの民は他国との干渉を一切禁じている旨を話し始める。文化と生活を守るための処世術であった。(そのせいでいつまでも時代遅れな狩りであったのだろうと門馬はチクリと思う)
「女神はそこの門馬さんが狩り終えておる。せっかく来てもらったところ悪いがな。そしてヤノルの民族の掟は先ほど伝えたな。……村から出ていくようお願いする」
キャラバンとしてもヤノルの地域に居る女神を狩りに来ただけだったので、もとより長居する気はないと出ていく事にする。
門馬にとってこのキャラバンは渡りに船であった。彼女たちについていけば他の女神を狩る事が出来る。
”親愛なる女神を騙るあの存在は許しておけない。だから女神の偽物を狩りつくす”
キャラバンとしても女神を一人で倒せる戦力が手に入るのなら万々歳という様子。
アルニカに感謝を伝え、キャラバンに着いていこうとする門馬。するとアルニカも一緒に行くという。
彼女の脳裏には門馬が女神を狩った姿が焼き付いて離れない。自分がついていって出来ることなんて何もないかもしれないが、何とか役に立つと門馬にすがる。
彼女を危険な目にあわせてよいのかと迷う門馬だったが、ギルド長と村長からの後押しもあってアルニカを守り続ける事を約束する。
村長たちはアルニカにお守りとして門馬が狩った女神の一部の粉末が入った瓶を渡す。ヤノルの伝統的なお守りらしい。(元は女神は信仰対象だったので)
キャラバンたちとの旅が始まる。サイドテールの少女はレヴィアと名乗った。
『アラプテル』のキャラバンには、既に次の女神狩りのあてがあった。
ヤノルの村から20キロほど離れた場所に旧地球人が建造したトンネルがある。そこに次の狩るべき女神がいるという。
馬車で移動中、レヴィアとも馴染み始める門馬とアルニカ。レヴィアの連れていた5人の鎧男たちは相変わらず無口に、何も語らなかった。先鋭部隊だからこその寡黙さだと説明され、ひとまずは納得するのだった。
そしてついにトンネル入り口へたどり着くキャラバンたち。旧人類が山の中に作ったトンネルだ。経年劣化で文字もかすれ、ひび割れも目立つ。
レヴィアは女神を呼ぶため、旧世代の人間たちがつけている野球帽子をかぶり始める。かなりミスマッチングな恰好だが、平気な様子。
レヴィアと鎧たちはトンネルへと入っていく。そのあとをついていく門馬とアルニカ。
トンネルの中の暗闇にひびが入り、女神空間へ。
トンネル内にある旧世代の設備・ライトが全盛期のように復活していて一気に明るくなる。しかし足元には花が広がる。
トンネルの中央に人影が見える。あれが今回の偽女神か、と構える門馬だったがその姿をみてギョッとする。
それはまさに、門馬を異世界に送り続けた女神の姿そのものだったからだ。
思わず警戒心も解け、ふらふらと女神に近づく門馬。そんな門馬の周囲をいつの間にか囲んでいたレヴィアの鎧兵たち。
瞬間、身体中を鎧兵たちの剣で貫かれる門馬。よく見れば鎧たちの首元には赤い糸が生えていて、地面に繋がっている。鎧の中にちらりと見えたのは腐りかけの異世界人の死体。
そしてレヴィアも首元から赤い糸が伸びて、それは女神の心臓部に繋がっている。
「にげ……て」と血管が浮かび上がり苦し気な表情でそういうレヴィア。
どうやら女神に死体もレヴィアも操られているらしい。
レヴィアたちは確かに他の女神狩りの組織だったがトンネルの女神に敗北し、傀儡にさせられていたのだ。門馬たちをここに連れてくるための罠だったのである。
この女神もまた人類を転生させる事だけが目的である。何故門馬を連れてきたかと言えば、彼の旧人類の匂いがそうさせていたのだ。
それらの事実は苦しみ喘ぐレヴィアの口を通して語られる。今まではヤノルの村近くをテリトリーとしていた女神が邪魔でちょっかいをかけられなかったが、奴が狩られた事でトンネルの女神が影響を及ぼせるようになったのだという。
女神は他の女神が居る地域には干渉できない?と怯えながらも気づくアルニカ。
門馬はそのまま四肢を斬り壊され、胴体と首のみになる。最後は女神によって直接破壊されそうな所……勇気を出したアルニカが他の女神の粉末が入った瓶を女神にぶつける。
声にならない声を絶叫させる女神。苦しんでいるようだ。鎧兵やレヴィアも同様に苦しみアルニカを止めることが出来ない。
アルニカは無事に門馬を回収してトンネルから逃走する事に成功したのだった。
自分のせいで死ななくてよかったと、ほっとした顔を浮かべるレヴィアをトンネルの暗闇に残していくことに葛藤しながら…。
第4章
アルニカは失意の門馬を背負いながら、歩いてヤノルの村へ戻ろうとする。
とにかく彼に原油を飲ませる必要があると思ったからだ。
一週間が経ち、ようやくヤノルの村へ戻れたアルニカだが……やけに静かだ。
ひとっこ一人いない村の様子に、アルニカは一つの結果に気付く。
ヤノルが暮らす地域に巣くっていた女神を狩ったことで、別の女神がここにやってきたのではないのだろうか。或いはあのトンネルの女神が鎧兵か何かを送り込み、本能のまま殺戮を行ったのかもしれない。
旧都市の女神の存在が、幸か不幸か彼らを守っていたのだった。
涙をこらえながら集会場へいき、地下にある原油のつまったドラム缶に門馬をドラム風呂のように入れる。門馬の肉体は回復しているようだ。
しかし「もう戦えない」と弱気な門馬。自分は女神を信じて生きてきた。それ以外のすべてを捨ててきた。もう何を信じて生きていけばいいのか分からない。
それを聞いたアルニカは門馬を責めることもなくドラム缶の傍に座りこんで「じゃあ一緒ですね」とおだやかに語る。
アルニカもヤノルの民がいなくなってしまい、しかもその切っ掛けが自分にあるのかもしれない。今すぐにでも死んでしまいたいぐらい。
それでもアルニカはまだ諦めていない理由を話す。
それは第3次女神狩りで死んだ両親から聞いた「黒い獣人」のお話。まだアルニカ
の母が地球に来る前で、幼かった頃。ヤノルの民は獣人の帝国の奴隷だった。
しかしどこからともなく現れた黒い獣人によって救ってもらえた。ヤノルの民は獣人を恐れていたが、その黒い獣人だけは英雄として称えたのだ。
アルニカは女神を信じていないが、母から聞いた英雄の存在は信じている。そしてそれは助けを待っているだけじゃ来てくれない事も知っている。
英雄は英雄の元にしか集まらない。まずは自分が英雄となる覚悟を決めるんだ。
「驚いた」とつぶやく門馬はさらに言葉を続ける。「そうか。あの時の子か。ミレイナは無事だったんだな。救った世界の事なんて顧みることもなかったが……そうか……無事だったんだな……」
唐突に門馬から母の名前が聞けて驚くアルニカ。しかし地下に続く扉がガンガンと叩かれ我に返る。追っ手が来たのだ。急ぐように門馬は言葉を重ねる。
「君のためなら僕はもう少しだけ戦えるかもしれない。……信じる者の強い命令がなければ満足に戦えもしないほどに弱い僕だけど。でももし。本当に勝手な話で申し訳ないが、君を信じさせてくれるなら僕は本当の姿になって戦うことを誓う」
「し、信じてもられるよう頑張ります」
「なら僕の女神になって欲しい」
「はい。って、えぇ⁉ それって。あの、旧時代で言うところのプロ、プロポ」
「違うよ。僕は”女神”を名乗る対象の願いじゃないと聞けないんだ。だから女神を自称して命令を下せ」
「そ、それって相当”痛いやつ”みたいになるんじゃ……」
「イイから選べ! 痛いヤツにならずに死ぬか、なって僕を戦わせてくれるか!」
「分かりましたよ! だからその……私が門馬君の女神……です。だから、あいつらを……やっつけて」
扉が破られ、鎧兵たちがなだれ込んでくる。しかしそこには誰も居ない。
瞬間、部屋の中に居た鎧たちが一瞬でコマ切れに。部屋の隅に隠れていたアルニカの目に映る門馬の姿は全身が黒い金属のボディ、両手両腕は獣のような爪の長い手足。そして顔は赤い瞳を持つ黒い何かに獅子を模したヘルメットが被せられているよう。
「黒い……獣」
「話はあとだ」
二人が集会場を出ると村中に鎧兵たちが。
しかし焦ることはなく門馬は右手で思い切り地面を殴りつける。すると地面が波打ち、一斉に転倒する鎧兵。そのまま四足歩行の凄まじい俊足で崩れた姿勢の鎧兵たちに近づくと一体一体確実に右手の爪で破壊した。
第5章
門馬とアルニカに兵たちが迎撃されたことに気付く女神。
しかし鎧兵のストックはまだあるので、数で圧倒しようと画策。200機の鎧兵の軍団によって完全に殺してしまう気でいたが、トンネルに巨大な地震が発生。完全に崩れてしまう。
生き埋めにされるも力技で地中から這い出る女神。あたりを見回すと崩れたトンネルの入り口付近に立つ、門馬とメモ帳を片手にこちらを見つめるアルニカの姿が。
奇声をあげて、赤い糸を門馬にぶつけようとする女神。
「貴様の命令にはもう従わない。僕にはもっと信じれる女神がいるからな」
「恥ずかしいから本当にやめてください……やめて……」
赤い糸を伸ばして門馬を操作しようとする女神。しかし全て噛み千切られていく。門馬はもはや抵抗手段をもたない女神に近づき、渾身の右ストレートを決める。
エピローグ
あの女神に操られていたレヴィアの事を思い出す。あの子には悪いことをしたと悲し気なアルニカだったが、門馬が近くの地面に手を突っ込み引き上げると気を失っているレヴィアの姿が。
「スケッチなら、もっと近くの方がいい」
初めて女神を狩った時と同じ事を門馬が言うから思わず笑ってしまうアルニカ。意識が戻ったらキャラバンについて詳しく聞こう。
きっと今後の狩りに役立つだろうから。END
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