夢の終わりの絹の庭

暁きうり

第1話

牛飼いたちは牛を追い立てる。

新しく生まれた仔牛にははじめての母牛の乳。

石畳の坂の道を降り海を目指す。

草と、緑色の濃い低い木の前には絹とキラキラした石を折り込みながらおられた反物の海と、雲一つない青い空だった。

波の音が響き、遠くから牛の声がする。

乳白色の波の向こうから、自分を呼ぶ声がする。

やっとこの景色に辿りついたのだ。

自分はこの景色をみるために生きてきたのだと唐突に悟った。

波が呼んでいる。砂金を散りばめた輝きを放ちながら。


私は親とはぐれ、姉と彷徨っていた。まわりの人たちは誰も私たちのことをみていなかった。

認識していなかった。自分たちが死の影に捕まるのが怖くて。逃げるためには歩きを止めないことしかできなくて。

赤い炎を、死の風から逃げるためには今にもちりちりと肌をやく道をひたすら走ることしかできなかった。

隣を走る姉と一緒に。ただひとつ残った魂の柱を失わないために。


羊の毛から作られた糸を、様々な色の染め液につけて仕上げた毛糸でまた一つあなたの服を編む。

元気にしているか。お腹は空いていないか。あなたの進む道に笑顔のあなたに会えるか。

会えない寂しさをおさえながら、ただ幸せに祈り指を進める。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

夢の終わりの絹の庭 暁きうり @mgumgugohan

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る