『宇宙戦争/巡洋艦〈あやせ〉の戦い』第一部/開戦 (ver.深雪)

幸塚良寛

0.PROLOGUE

 あまねく人類が住まいし、群雄列強の割拠策動する〈ホロカ=ウェル〉銀河系。

 あまたの国々が勃興衰微し、幾多の勢力が興隆滅亡してきた広大けんらんたる星群。

 戦乱の絶えぬ星界の東方に大倭皇国連邦はあった。

 女皇を国家の元首にいただくちいさな星間国家である。

 そして、建国以来、二千数百余年の時をけみしてなお、自主自立のまま国家の独立を維持し続けている誇り高き国でもあった。

 時には、かかる火の粉を振り払うべく、諸外国との戦いに血を流し、種々の外圧に抗しては、会議の席で懸命の弁をふるった。

 大国に侮りを受けてへいどんされることなく、他国を自ら侵すこともなく――そうして二千数百余年を生き抜いてきた国なのだ。

 独自に星々の大海を渡る超光速航行技術を開発し、周辺の諸国と関係を結んで、小さいながらも一つの経済圏を代表する国。

 連綿と続く皇統は、記録されている限りにおいて最も旧く、上代に崩壊をした銀河帝国よりも以前に出自はさかのぼるとさえいう。

 単に、小なりという国勢を理由に国家の群の中に埋没し、列強諸国から軽視されうる程に、その存在は軽くはない国だった。

 そして、その首都星系から遠く、北辺に位置する辺境の地、〈幌筵ぱらむしる〉星系。

 人類が居住可能な惑星を二つ有するその星系の第三惑星、〈ほろしり〉。

 農水産物が主要産品の、治乱の激浪にまれることもたえてなかった幸運な地。

 その地にあって、一人の少女が旅立つところから、この物語ははじまる。

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