俺はフトシ。デキるオタクだ。

 もうすぐ三学期も終わる。

 学年末テスト? そんなのは余裕だ。

 だって百点満点なんて、取る必要はないんだから。

 俺はいつも参考書は後ろから読むようにしてる。だって結局、受験で必要になる部分はそういうトコだろ? 

 んで、わからなければ、その部分の基礎を見直す。それだけで、ある程度の点数は取れる。

 だから好きなことに没頭できる、熱中できるのさ。

 俺は今日も、好きなアニメの議論に花を咲かす。


 俺の名前はほそふとし。通称フトシ。

 職業ジョブは【学生】。

 称号は【知的なオタク】だ——。


「フトシくん、ちょっとその考えには無理があるのでは?」

 そう言って俺の推論にケチをつけるのはあきやましん。俺のオタク仲間で、オタクじゃなくても仲間だ。俺はこいつを認めている。

 こいつと出会ったのはこのくら高校に入学してからである。当初は俺達の話を傍聴してニコニコしてるだけの奴だったのだが、最近では自分の意見も通そうとしてくる。知見を広げる事にアグレッシブなのだ。

 だから——面白い……!

「ほほう? では真也、キミの意見を聞こうではないか。

「フトシ氏、またその笑い方が出てますゾ? 

 かどわきみちが口を挟んだ。

「ミチル、そういうキミは、話し方が変ではないか? イマドキのオタクは、もっと普通にしなくては。まぁ、キミのその『絶滅危惧種なオタクっぷり』、嫌いではないがな? ぶふぉふぉ!」

「……僕の話、進めても良いかな? というかフトシくんだって最初はそういう言葉遣い——」

「そう真也。俺は【言葉使い】なのだ」

「ス○ンド使い、みたいに言われても」

「ふむ、感心だ。昔の漫画にまでその視野を広げるか。だが真也、その言葉を出したからには、わかっているのだろう? 後には引けぬと。さあ、キミがではない事を証明してみせよ」

「いや、今『ノコギリ男』の話をしてたんじゃなかったっけ?」

 うわ。俺とした事が。

 議論の筋道をたがえてしまった。

 まぁそういうところが俺の魅力さ。

「コココココ、真也氏。そもそもあの作品は考察など無意味ですゾ?『そういうモノなのだ』と受け入れて視聴しなければ」

 ミチル、こいつの笑い方も中々特殊だ。

 俺の事は言えない。

 むしろ俺の笑い方は、ワイルドでチャーミング——そんな属性を。立派な萌え要素なのだ。

「ええ……? じゃあさっきのフトシくんのスピーチ、意味無くならない?」

いのだ真也よ。状況とは常に進展し、転回するものなのだから。俺の考察は後でも良い。別の機会にじっくりとこうではないか」

「僕も喋りたかったのに……。でも良いか。フトシくん達と『ギギ談義』するのも楽しそう」

 ちなみに「ギギ」とは「ギギの愉快な探検」の略である。第一部の主人公「ギリー•ギルバート」の名前にちなんだタイトルだ。

「ふふ、わかっているな? ならば、進めようではないか——」


 今日も俺達の、議論は続く——————。


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