26:デート?開始!


 先輩とカタリナに連れられるがまま歩いてしばらくすると、行ったことのなかった公園にたどり着いた。確かここは秋頃に紅葉が綺麗なことで有名なところだったよな? 


「お昼まで紅葉見て時間潰そうと思ったの! ここの紅葉、本当に綺麗だから真田くんにも見せてあげたかったし」


「そうだったんですか。カタリナもここでいい?」


「ああ、構わない。日本の紅葉は綺麗だって評判だからな。それに、そんな綺麗なところでヨシトとイチャラブするのも悪くない」


「あ、あはは……そ、そうだな」


 彼女のフリを忠実にカタリナはこなしてくれるけど、俺の方が全然慣れない。女性経験がないことがやっぱりあだになっているんだろうけど、絶対先輩にはボロが出ないように頑張らないと。


「よーし、それじゃあお散歩開始だよ!」


 それから俺たちは道沿いに公園を歩いて行った。その間もずっと俺は二人に手を繋がれたままで、すれ違った人から「あんな奴がなんで美人と手を繋いんだよ、しかも二人に」「クッソ羨ましい……」「前世でどんな徳を積んできたんだ!?」なんて驚かれたりしてた。


 でも、はたから見れば確かに羨ましい状況だよな。俺も他人だったら少し嫉妬してしまったと思う。……ただ、今の俺にこの状況をとことん堪能するだけの余裕はなかったけど。


「あ! すごい綺麗ですね!」


 しばらく歩いていると、紅葉が並んでいる道に来た。木々がトンネルのように道を覆って、落ちてくる紅色の葉っぱが地面に鮮やかなカーペットを創出している。それを初めて見た俺とカタリナは、目を輝かせて景色に見とれてしまう。


「これはなかなかいいな。ヨシト、写真を撮るから荷物持っとけ」


「あ、ああ」


 よほどカタリナは気に入ったのか、俺に荷物を預けてあっちこっちで紅葉の写真を撮り始めた。ん、なんかこいつの荷物やけに重いような……気のせいか?


「さーなーだーくーん!」


「うわっ、先輩!? い、いきなりほっぺたを突かないでください!」


「いやー、紅葉に夢中で私のこと忘れてないかなーって心配でさ。それでどう? これ気に入ってくれた?」


「はい! 先輩とここに来れてよかったです」


「そっかーそう言ってくれると私も嬉しいよ。ところでさ、真田くん」


「ん?」


「えーっとね……(チャンス! 彼女がいなくなったところを突いて、ここで私が真田くんと仲良くお話ししてればきっと真田くんは私の方がいいって気づくはず! そして隙があればこの前のようにキスを……ぐへ、グヘヘへへ)」


「あれ、先輩どうしたんですか?」


「あ、えっと……(な、なんでいつもみたいに喋れなくなっちゃったの私!? 彼女がいるから緊張しちゃったの? そ、そんなんじゃ真田くんはいつまでたっても私に振り向いてくれない! 勇気を出して私、絶対、絶対真田くんと付き合いたいんでしょ!)」


「あ、先輩の頭に落ち葉が。今取りますね」


 ひらひらと先輩の頭に紅葉が乗ってきたので、俺はそれをヒョイっととる。それにしても先輩、本当に美人だよなぁ……。平然を装っても、先輩と近くにいるだけでドキドキが止まらないや。


「あ……ありがとう」


「どういたしまして……ん?」


「いい写真を撮れたなぁ。彼女がいる前で美人な先輩とイチャイチャする彼氏。うん、これは脅迫のネタに使えそうだ」


「おいカタリナ!」


 どうやらさっきの場面をカタリナに撮られたらしく、にやぁっといやらしい笑みを浮かべていた。クッソ……警戒してればよかった。あの写真を何に使う気なんだあいつは。


「さて、そろそろ私は腹が減った。ご飯にしよう」


「あ、もうそんな時間か。……その前にトイレ行ってきてもいいか?」


「オッケーだよ、真田くん。行ってらっしゃーい」


 そんなわけで俺は一旦一人でトイレに向かった。その最中カタリナが変なことしなければいいんだけど……。




「……ね、ねぇカタリナさん」


「ん? どうした先輩さん」


「さっきの写真、一万円で売ってくれる?」


「wow……もちろんオッケーだ」

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