14:先輩の家に行くことになった


「ねー真田くん。最近勉強は順調なの? 大学受験もあるだろうし、勉強大変でしょ〜?」


 バイトをしている最中、唐突に先輩がそんなことを聞いてきた。世間話……ってことなんだろうけど、昨日あんなことがあったのにもう平然としている様子を見るに、あれぐらい先輩にとって大したことじゃなかったんだろう。


 こっちはもう先輩にカッコつけた羞恥心で全く眠れなかったのに……。やっぱり、俺はまだ先輩に男として見られていないんだろう。


 クッソ……でも、いつか絶対先輩に男として見てもらうからな!


「ま、まぁ勉強は大変ですけど……。正直、あんまり成績も良くないですし……」


 そう、俺は学校の成績があんまり良くない。普段からバイトに勤しみ、家ではゲームばかりしているから勉強なんてする時間なんてないんだ。学生の本分? ゲームとバイトに決まっているじゃないか。


「そっかーそれはまずいねぇ。成績下がり続けたらバイトだって続けられるかわかんないもんねー」


「そ、それは……」


 い、痛いところを突いてくるな先輩。実際、最近両親にも成績が上がらないのならバイトを抑えたらどうなんだって言われたし……。俺もちゃんと勉強に力を入れないといけないって思ってはいるけど……やる気がなぁ。数学とかどうしてやる必要があるんだろう。絶対将来使わないのに。


「あ、真田くん困ってるね。だったら真田くん、私が勉強教えてあげるよ!」


「せ、先輩が?」


 思ってもみなかった提案を先輩からされてしまった。それって先輩が家庭教師になってくれるようなものだよな。家庭教師……はっ! お、俺は何を考えているんだ。これはあくまで健全な先輩の提案だ、大人のマンガみたいな展開になるはずがない。


「そう! 私ね、一応偏差値62の女子大に通ってるからさ。それなりに勉強はできるんだー」


「ああ、そういえば言ってましたね。でも申し訳ないですよ、先輩にそんな苦労かけるのも……」


「大丈夫大丈夫! 真田くんだから教えてあげるの! だから明日さ、お互いバイト休みじゃん。真田くんの家で勉強会しようよー!」


「い、いや……うちはダメなんですよ」


「えーご両親がいるから? それならちゃんと菓子折り持って行くからさー、大丈夫だってー」


「それがですね……うち、留学生が今ホームステイしてて。そいつが結構うるさいので勉強会できる環境じゃないんですよ」


「へ、留学生? ……お、女?」


 先輩が呆気にとられたような表情をして、恐る恐る聞いてきた。そんなに驚くことかな? でも留学生がいるなんてこと先輩にいったことがなかったし、驚くのも無理はないのかな?


「ま、まぁ……イギリスから来た女性ですけど。か、彼女じゃないですから!」


 確かにあいつは可愛いし、学校でもモテモテらしいけど俺は……先輩が一番気になっているから好意を抱いたことはない。向こうも別に俺のことは大して気にしてないだろうし。あと性格がなかなかに厄介で、俺にとって奴は天敵みたいな存在だ。この前もゲームで負けた罰ゲームであいつの大好きなポテチ買わされたし……。

 

「…………(真田くんと同棲している奴がいるとかまじ最悪)」


「せ、先輩?」


 あれ? いま一瞬先輩から一瞬殺意みたいな波動が放たれていたような。そんなわけないか、俺も疲れちゃっているのかな?


「……ああ、ごめんごめん。うーん、確かに他の女がいると嫌だしねぇ。あ、そうだ……それなら、うちにきてよ!」


「……せ、先輩の家に!?」


 全く想像もしていなかった展開に驚いて、俺はつい大きな声で反応してしまう。い、いやだって……せ、先輩の家だぞ? あ、あのずっと気になっていた土屋先輩の家……そ、そんなの絶対行きたいに決まっているじゃないか! こんな本音は絶対先輩に直接言えないけど。


「そう! 私の家なら勉強できる環境があるからきっと大丈夫!」


「で、でも……」


「全然迷惑じゃないから! むしろ私は大歓迎だから! だから来て! 絶対損はさせないから!」


 お客さんがいない店内の中で、先輩は目をギラギラと輝かせながらお家に誘ってくれた。ここまで先輩が強く誘ってくれているのに断るのは失礼だし、俺だって先輩の家に行きたい! もうこれは断る理由なんて一つもないだろう。


「じゃ、じゃあ……お言葉に甘えて」


「やった! それじゃあ明日、朝に駅集合ね!」


 そんなわけで、俺はなぜか先輩の家で勉強会をすることになった。先輩の家に行ったら何か事件でも起きそうな予感を感じないでもないけど、それ以上に楽しみが勝る。ああ、今から楽しみだな!




「やった……さ、真田くんを家の中に連れ込める……も、もうこれは勝ち確だよね……やったあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ真田くんとえっちできるうううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううう!」


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