秋の風を感じた日
秋色
秋山更紗
更紗の班では、次の日曜日、亜美ちゃんの家でそのための話し合いをする。隣の班からお願いされ、話し合いは合同でやる事になった。自由研究の内容は別々だけど。場所を自分の家にする事については、亜美ちゃん自身が手を上げた。
学校ではいつも制服だから、私服でみんなと会うのは、恥ずかしがりの更紗にとって何だか照れくさい。しかも亜美ちゃんはお洒落な子だ。みんなと同じ制服を着ていてもそれはよく分かる。ポニーテールをいつもクルンとさせていて、細くて長い脚によく合う靴下も、鞄に付けている縫いぐるみのマスコットもとても可愛い。
クラスメート達は、「亜美ちゃんのパパは会社経営をしているんだって。それにママは元モデルだって」と噂していた。そんなお洒落なセレブな両親から生まれた子だから、やっぱり違うよね〜とため息をもらしていた。
そんなだから日曜日にみんなで集まるって時の洋服選びはハードルが高いのだ。
だけど……更紗の着る服は決まっていた。
毎年、更紗のおばあちゃんは、九月の更紗の誕生日に手編みのカーディガンやセーターをプレゼントしてくれる。そして秋の終わり、木枯らしが吹き始めると、その手編みのニットを初めて
土曜日、曇った空の下で冷たい風がヒュウヒュウと音を立て通りを吹き抜けていった。だから明日はおばあちゃんの編んだカーディガンを着て行こう、そう心に決めた。ミヤコワスレのように明るく深い紫色のカーディガンを。
日曜日の朝、昨日とはうってかわって青空が広がっていた。でも風は身を切るように冷たい。カーディガンは今日の天気にちょうど良かった。待ち合わせの九時の十分前に更紗は、亜美ちゃんの家の大きな門の前に着いていた。青い絵の具で塗りつぶしたような空を見上げる。と、突然、後ろから声をかけられ、飛び上がるほど驚いた。
「秋山、もう来てたのか」
それは斜め後ろの席の秀才、北村敦則だった。更紗達の班の班長。前の日の数学の宿題が分からなかった時、解き方を教えてもらった事がある。更紗は、ちょっと緊張した。でも内心うれしかった。
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