秋の盛衰
秋。
朝の空気は澄み切っていて、少しだけ冷たい。
心地よいその空気に触れていると、眠気でぼんやりとしている頭がすっきりとしていくようだった。
並木道を歩くと、鮮やかな落ち葉の海が広がっていた。
こんもりと積もった落ち葉はやわらかく、パッと蹴り上げて波しぶきを立てたくなった。
落ち葉の海の中を、思いっきり走りたい。
そんなことを考えながら、葉に彩られた道を静かに歩いていく。
次の日も、次の週も、落ち葉の海は残っていた。
最初のうちは鮮やかだったけれど、落ち葉はだんだんと色あせていく。
こんもりと積もってやわらかそうだった落ち葉。
人が通るたびに踏みつけられ、ぐしゃりぐしゃりと潰れてしまった。
雨が降ると、潰れた落ち葉が雨水に濡れて、そのまま地面にへばりつく。
無数の濡れた落ち葉が地面と一体化している様は、汚らしくて、嫌らしかった。
秋の日々が過ぎていく。
冷たい風が突き刺すように吹き抜ける。
陰気な朝は乾いた空気をまとい始めた。
濡れてぐしゃぐしゃだった落ち葉が、今度はパリパリとしなびていく。
しなびて、干からびて、脆くなっていく落ち葉。
色彩はもう、完全に失われている。
人が通ると、落ち葉は千切れてバラバラになってしまった。
そして、ふと気がつく。
ああ、そうか。去年の今頃も、同じ光景を見ていた。
季節の移り変わりに風情なんてない。
自然は苦しげに息を吐き、身悶えながら涙を流す。
そして秋が力尽きると、冬が生まれるのだ。
今年も、もうすぐ終わってしまう。
それをしみじみと実感した。
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