私はシュジンコウ
はるかぜ
プロローグ
国民シュジンコウ計画
「国民シュジンコウ計画が施行されて今日でちょうど10年が経とうとしています。」
2xxx年のいつもと変わらない朝、テレビの中のニュースキャスターがそう話している。
激動の平成、令和という時代を生き抜く人々の中で生まれた「病む」という言葉。
「テストやばすぎて病むわ」
「最近〇〇病んでるよね〜」
こんな会話が日本中に溢れかえっていたらしい。そして、このままではいけないと立ち上がった日本政府が作ったのがこの計画だ。これにより、10年前の今日から産まれた時に脳にICチップを埋め込むことが義務化された。最初は多くの反対意見もあったらしいが、技術の発展により体内にICチップを入れることが当たり前になったことで今では法律として受け入れられている。
では、なぜICチップを入れるのか?
それは、ICチップに自分の行動を記録させ、人生本を完成させるためらしい。1人1人が本の主人公なんだという思想を大切にするとともに、みんな自分に監視されているという意識を持たせることで平和を保とうということだと小6の時の精神の授業の先生が言っていたのを思い出した。
いや、物理的にシュジンコウにするんかい笑笑
これが当時の私の感想だ。
そんなことを思い出しながら、再び目を閉じた。典型的な二度寝のパターンだ。
「てん、早く起きなさい!高校初日から遅刻することになるよ。」
二度寝防止のためにかけておいた爆音のアラームといつの時代も変わらない母親の声が最悪のアンサンブルを奏でている。
「もう起きてるよ。」
そう言いながら体を起こした。部屋には新しい運動靴が入っていた箱や、新しい通学カバンの中にあった名前の分からない白いくしゃくしゃが一箇所にまとめてある。新学期のよくある光景だ。それに加えて、今日から新しい環境だと思うと胸のわくわくが止まらない。新品のシャキッとしたブレザーに手を通し、いつもの何十倍も軽い足取りで階段を降りていった。
「やっぱりブレザーはいいね、セーラー服より着やすいし。それにさ、なんか高校生って感じがするわ。」
胸のどきどきとともに独り言も止まらなくなる。
「早くしなさい。喋ってると電車におくれるよ!」
「分かってる。」
会話はいつもと変わらないが、洗面台の鏡の中の自分はいつもの数倍、いや数十倍輝いて見えた。いわゆる、ビジュがいいというやつだ。
「じゃあ、行ってきます。」
桜野てん、華のJK時代の幕開けだ!!
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